エミリアがゾークに勝利し核発射も止めた。これでヘルデストロイヤーとの戦いも終わる、と思った直後、マサシとジゼルの夢に出てきたディアボロスが現れマサシを襲った。
「なっ?」
突然の出来事に状況を把握できないマサシ。目の前にいたジゼルも驚き表情が固まった。
「ありがとう、マサシ、ジゼル。おかげで全ての準備が整った」
ディアボロスは勢い良くマサシの体を貫いている何かを引く抜いた。ディアボロスの手にはマサシの腰に納めてあるはずの黒龍刀が握られていた。そしてマサシは膝をついてゆっくりと前に倒れる。
「マサシ!!」
咄嗟に倒れるマサシを受け止めるジゼル。ジゼルの声に気付き周りにいたコンタ達も二人のほうを向いた。
「どうした!?」
ユウタが大声を出しながら駆け寄ろうとした、しかし視界に飛び込んできたもう一人のマサシの姿を見て驚き足を止めた。
「な、何だ・・・・?」 「マサシが、二人・・・・?」
ユウタに続いてコンタも驚きながら声を出した。周りにいたシオンとレイナ、そしてネリネや傭兵達も驚いている。
「おっと、いかんいかん。また記憶を戻すのを忘れるところだった」
ディアボロスは驚くユウタ達を気にせず指を鳴らした。すると、マサシとジゼルの頭の中に虚無宇宙(ゼロスペース)での記憶が全て戻った。そして、しばらくしてジゼルがディアボロスの顔を見て彼を睨みつける。
「ディアボロス、アンタ・・・・」 「思い出したか?ジゼル」 「ええ、全部思いだしたわ」
記憶を取り戻し会話を進めるジゼルとディアボロス。そしてジゼルは顔を動かさずにコンタを呼んだ。
「コンタ!マサシの傷の治療を!」 「え?う、うん!分かった!」
コンタはジゼルの下に駆け寄りマサシの傷を見た。
「傷が深い、早くハートレスキュアを!」 「お願い・・・・」
ジゼルはゆっくりとマサシを床に寝かせるとコンタは急いで魔法の演唱を始める。そのすぐ後に他の神竜隊のメンバーもマサシとジゼルの下に駆け寄った。
「コンタ、マサシは大丈夫なの?」
シオンがマサシの身を心配しコンタに尋ねる。だがコンタは少し力の入った声で喋った。
「話しかけないでください!今回はちょっと集中力が要ります!」 「ゴ、ゴメン・・・・」
驚いて謝るシオン。今度はレイナがSAAを構えてジゼルに尋ねた。
「ジゼル、コイツは一体何だ?どうしてマサシと同じ姿をしている・・・・?」 「・・・・・・」
しばらく目を閉じて黙っているジゼルはゆっくりと目を開き喋りだした。
「・・・・ディアボロス」 「ディアボロス?・・・・どっかで聞いたことあるような」
聞いたことのある名を聞いて首を傾げるシオン。再びジゼルが静かに口を開く。
「マサシ契約相手よ」 「何だって!いや、確かにマサシの契約相手の魔物はディアボロスだが・・・・でもどうして」 「それは俺の口から話すよ」
突然聞こえてきた声、聞こえてきたほうを見るとコンタの治療を終えたマサシがゆっくりと立ち上がった。
「マサシ!大丈夫なの?」 「ああ、なんとかな・・・・」
起き上がろうとするマサシの腕を取り立ち上がらせるジゼル。マサシの近くでは汗をかいて座り込んでいるコンタがいる。
「コンタ、大丈夫?」 「ええ、ちょっと力を使いすぎました」
契約者の力を使いすぎ疲労を見せるコンタの肩にそっと手を置くシオン。ゆっくりとコンタを立たせるシオンを見てユウタがマサシに尋ねた。
「マサシ、説明してくれないか?何でお前の契約相手が・・・・?」 「・・・・・・コイツは俺が契約を交わした時に俺の中に宿ったんだ。契約者が魔物と契約を交わす時に契約者の心に闇があるとき契約相手の魔物の意識は契約者に宿るみたいなんだ」 「闇?」 「俺は契約を交わす直前に両親を殺された、そして自分の意思とは関係無く契約を交わしてしまった。それが原因らしい・・・・」 「そんな事があるのか?俺達はそんな事聞いたこと無いぞ?」
聞いたことの無い契約者の秘密、それを聞いたユウタはマサシに尋ねるが、マサシの変わりにディアボロスが答えた。
「当然だな、コイツとジゼルにこの事を教えたのは俺だ。そしてこの事はエミリアやゾークも知らない」 「何だと?」
ディアボロスの方を向いてユウタは低い声で聞き返した。
「俺が二人に会ったのはコイツ等がパラメドラに向かう輸送機の中で眠っている間だ」 「何だって!?そんな事二人からは聞いていないぞ!」 「当然だな、記憶を封印しておいたんだからな」 「封印・・・・だと?」 「ああ、この時のために俺達に関する記憶を全て封印した」 「そんな事が・・・・・・ん?俺達?」
ディアボロスの「俺達」という言葉を聞いて聞き返すユウタ。すると彼等の背後から声が聞こえてきた。
「あたしとディアボロスの事よ」 「「「!!?」」」
突然聞こえてきた声に振り返るマサシ達。そこにはジゼルと同じ顔を持ち銀色の髪を持つ少女、ルシフェルだ。
「なっ!?今度はジゼルと同じ姿をした奴が・・・・!」
突然現れたルシフェルに驚いて声を上げるネリネ。ちなみにマサシとジゼル以外の隊員は全員驚いていた。
「ディアボロス、こっちは終わったわよ」 「そうか」
そう言って周りを見回すディアボロス。それにつられてマサシ達も周りを見回す、その瞬間神竜隊は驚いた、ライトシンフォニアの傭兵、ヘルデストロイヤーのオペレーター全員が死んでいた。
「な!ど、どうなってるんだ!いつの間に傭兵達が・・・・」 「あたしが消したのよ、貴方達ディアボロスと会話をしている間にね」 「消したって・・・・」
傭兵が死んでいることに驚くユウタに続いて、妹と同じ顔で冷徹な事を発言するルシフェルを見て一歩下がるネリネ。
「彼女はルシフェル、俺の伴侶だ」 「ルシフェル・・・・。ジゼル、この女は何だ、どうしてお前と同じ顔を?」
レイナがジゼルに尋ねると、ジゼルが静かに答える。
「彼女はあたしが聖天使人の力に目覚めた時にあたしの中に生まれたの、そしてその時ディアボロスと出会った・・・・」
ディアボロスとルシフェルの関係を聞き更に驚くマサシとジゼル以外の神竜隊の隊員。そんな時マサシがディアボロスの方を向いて口を開いた。
「話を変えるが、どうしてお前がここに居る?お前達は夢の中で俺とジゼルの心と一体化してるはず。どうして現実世界に来れるんだ?」 「力が溜まったからさ」 「力?」 「俺とルシフェルの力の源はお前とジゼルの相手を想う気持ちだと言ったのを覚えているか?お前達はお互いを強く想い、俺達も更に強い力を得た、現実世界に来られる程のな」 「・・・・・・」
マサシとディアボロスの会話をジゼルがマサシの隣で、コンタ達は二人の後ろで黙って話しを聞いていた。
「俺とルシフェルはお前達と完全に分離した。今後は例えお前とジゼルが死んでも俺達が死ぬ事は無い、俺達は自由になった。つまり、お前達はもう用済みだ」 「「「!!」」」
ディアボロスの言葉を聞いていたマサシ達は驚く。そして彼等は確信した、自分達を殺すつもりだと。
「散々人を利用するだけ利用しておいて必要なくなったら消すってか。だが、俺達も簡単にはやられないぜ!」
マサシは残った白龍刀を抜き、両手で持ってディアボロスを睨みながら構える。ディアボロスは構えることなく黒龍刀を握った手をダランと下ろしてニッと笑いながらマサシを見ている。
(何もしない?あの野郎、完全にナメてるな)
マサシは心の中で自分を馬鹿にする様に笑うディアボロスに改めて怒りを覚え、勢い良く床を蹴ってディアボロスに向かって跳んだ。だが、ここでマサシは全く予想もしていない事態にさしかかった。
「え?」
声を出した瞬間、マサシはディアボロスの1m手前で止まったのだ。マサシとディアボロスとの距離は約3m、いつものマサシならディアボロスの目の前まで跳べる距離のはず。
「お、おいマサシ、何やってるんだ!こんな時にふざけてる場合じゃないだろう!」 「え、いや、俺は・・・・」
いつもの様にふざけてるのかと思いマサシを説教するユウタ。だが、マサシは明らかに取り乱していた。ふざけてはいない、確かに自分は全力で跳んだはずだったのだ。
「敵を目の前にして隙を作るなんて、まだまだだな!」 「!!」
自分に向かって跳んでくるディアボロスに気付いたマサシは咄嗟に構えなおした。
「フッ!」
勢い良く黒龍刀を横に振って攻撃してきたディアボロス。マサシは白龍刀を縦にしてディアボロスの横切りを塞いだ。だが、再び予想していなかった事が起きたのだ。ディアボロスの攻撃が予想以上に重かったのだ。マサシはその重さに耐えられずにもの凄い勢いで飛ばされ、ブリッジのコンピュータに叩きつけられた。
「グワアア!!」
またしても予想外の事が起きた、いつも以上に強い痛みを感じたのだ。マサシはその痛みに驚きながらゆっくりとうつ伏せに倒れた。
「マサシ!!」
ジゼルはマサシの下へ駆け寄ろうとしたが、マサシとジゼルの間に道を阻む様にルシフェルが割り込んできた。
「そこを退きなさい!!」
ジゼルはルシフェルをメタトロンの短い部分で攻撃する。だが、その攻撃はルシフェルに間単に止められてしまった。しかも左手で普通に。
「ええっ!?」 「ウフフ、残念でした♪」
笑いながらルシフェルは空いている右手でジゼルの顔の側面に平手打ちを放つ。ジゼルはそのまま飛ばされてブリッジの壁に叩きつけられた。
「がはっ!!」
ジゼルもマサシと同じ様に何が起きたのか理解できずにそのまま倒れた。その二人の姿を見ていたユウタ達も驚いていた。
「ウ、ウソだろ・・・・?マサシとジゼルがこんなにアッサリ・・・・・・」 「い、いくらなんでも強すぎる・・・・・・」
ディアボロスとルシフェルの力に驚くユウタとコンタ。それに続いてシオンとレイナ、そしてネリネも口を開く。
「コ、コイツ等、もしかしてエミリア様やゾーク並に強いんじゃない・・・・・・?」 「だが、例えそうだとしても立った一度の攻撃であの二人が動けなくなる程のダメージを受けるはずも無い・・・・・・」 「そ、そうよ。ジゼルには聖天使人の力もあるし、マサシだって契約者だから・・・・・・」
力の差に驚く神竜隊の隊員達。すると突然ディアボロスとルシフェルが笑い出した。
「フフフフフフ」 「ウフフフフフ」 「何がおかしい!」
突然笑い出す二人に叫ぶユウタ。すると、ルシフェルは笑いながらディアボロスの隣まで跳びユウタ達の方を向いた。
「フフフ、いやいや。まだ気付いていないお前等を見ていて、ついつい笑っちまった」 「ウフフ、そうね。おかしすぎて、ね」 「「「?」」」
全く言っている意味が分からない神竜隊。するとディアボロスはニヤリと笑いながら口を開いた。
「教えてやろう。・・・・と、その前に。金山、お前達契約者はどうやって力を得る?」 「・・・・・・?魔封石に封印されている魔物と契約を交わして力を得るんだろ」
訳も分からず質問に答えるユウタ。
「そうだ、マサシは俺と契約を交わして俺から力を授かったという事になる」 「・・・・それがどうした?」 「つまり、マサシに力を与えていた俺がマサシと完全に分離したという事は俺とマサシとの繋がりは無くなったという事だ」
ディアボロスに話を警戒しながら黙って聞く神竜隊。そしてディアボロスは止めを刺すかの様に言い放った。
「要するに、契約が無かった事になり、マサシは契約者の力を全て失ったって事だ」 「「「!!!!」」」
ディアボロスの言葉に神竜隊は全員が固まった。そしてそれに追い討ちをかける様にルシフェルも口を開いた。
「そしてあたしもジゼルと分離した時、聖天使人の全ての力を頂いたわ」 「「「!!!!」」」
遂に現実世界にまで足を踏み入れたディアボロスとルシフェル。更に二人はマサシとジゼルから契約者と聖天使人の力を全て奪ってしまった。そしてこの後、とんでもない修羅場が神竜隊を襲う!!
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