20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第122回   第百二十一話 決着と異変

最下層で遂に始まったエミリアとゾークの一騎打ち。二人は初っ端から全力でぶつかり、レベル・3まで発動した。どちらが勝つにせよ、お互いに無傷では済まないのは明白だ。

「フッ!」

ゾークはデザートイーグルをエミリアに向かって発砲。銃口から弾丸が吐き出されエミリアに向かって飛んでいく。しかし、エミリアは慌てずに大剣で一つずつ弾丸を弾き落としていった。

「やはり銃は効かんか」

ゾークは銃器が通用しないことをすぐに理解したのかデザートイーグルを捨てた。それを見たエミリアは大剣を構えたまま言った。

「そんなにアッサリと納得していいの?もしかしたら銃が効く時があるかもしれないのに」
「こう見えても私は飲み込みが速いほうでね、一度使って通用しなかった手段は使わない事にしているのだ」
「私だったら一度効かなかった位でその方法を使わないと決めないけど?」
「それは君の考え方だ、私と君は違う」
「そうね・・・・」

少し悲しそうな声を出すエミリアは少し俯いてゾークを視界から外した。その直後、ゾークは竜翼を広げて一気にエミリアに向かって飛んだ。

「隙ありだぞ、エミリア!」

ゾークは勢い良く大剣を振り下ろしエミリアに斬りかかった。だがエミリアはほんの少しだけ体を反らし斬撃を回避した。大剣の刃はエミリアの体のすぐそばを通り過ぎた、その差は僅か3mm、まさにギリギリだった。

「隙があるのはそっちよ!」

ゾークの真下から勢い良く大剣を振り上げるエミリア。しかしゾークはクルッとバク転をする様に身を反らしてその攻撃を回避し、すぐにエミリアから距離を離した。

「危ない危ない」
「残念」
「そう悔しがることはないだろ」
「いいえ、違うわ」
「ん?」
「残念なのは貴方の方よ」
「?」

エミリアの言っていることが理解できずに目を細くしてジッと見るゾーク。

「もし、さっき私から離れる時にデザートイーグルを撃たれていたら私は弾を塞ぐこともかわすこともできなかった」
「・・・・・・」
「貴方が銃を捨ててくれたおかげで私は助かったの」

エミリアはさり気なくゾークの失敗のことを説明して大剣を構え直した。

「フッ、成る程、君の言うことも一理あったという訳か」

ゾークは自分の失敗を気にもせずに同じ様に大剣を構え直す。そしてゾークの大剣が徐々に紫の光を纏いだした。

「さっきのは私に対する親切心か?それとも挑発か?」
「両方よ」

そう言った瞬間、エミリアの大剣も黄色く光りだした。どうやらお互い再び技をぶつけ合うつもりの様だ。

「今度は契約魔法の時のようにはいかんぞ!」
「望むところよ!」

二人はほぼ同時に大剣をゆっくり上げて攻撃の態勢に入った。そして次の瞬間、二人は勢い良く大剣を相手目掛けて振り下ろした。

「デュラハンロード!!」
「光ノ滅剣(ひかりのめっけん)!!」

ゾークの刀身から紫色の光が、エミリアの刀身からは黄色い光がそれぞれい一直線に放たれ、二つの光はぶつかり爆発した。その時生まれた爆風と衝撃波が部屋に広がる。そして再び機材やコンピュータを破壊していく。だが、エミリアとゾークはやはり無事だった。

「ムッ!また止められたか」

空中で体勢を崩さないように力を入れるゾーク。煙と爆炎が消えた時、エミリアの姿が消えていた。

「ん、何処に行った?」

ゾークが辺りを見回すが何処にもエミリアはいない。すると、頭上から小さな音が聞こえ、上を見ると部屋の一番上の高さまで飛び、白い翼を大きく広げて自分を見下ろしているのエミリアが見えた。


「天神流星斬(てんしんりゅうせいざん)!!」

エミリアがもの凄い速さで何度も大剣を振った。すると、無数の斬撃が刀身から放たれゾークに向かっていく。ゾークは回避行動を取らずに左手を斬撃の方へ向けて契約魔法の演唱を始めた。

「深淵の精霊、全てを引きずり込む魔壁と化せ!ダークオーラ!!」

演唱を終えたゾークの左手の前に大きな黒い壁が現れた。エミリアの斬撃は引き寄せられるように黒い壁に吸い込まれて消えた。

「防御魔法・・・・」
「これは闇の中に全てを引きずる込む魔壁、さっきの様な攻撃ならこれでも防げる」
「それなら、これはどう?」

エミリアはゾークに向かって飛んで行き一気に距離を詰め、大剣を両手で握る。すると大剣の刀身に青白い電流が纏いだした。

「雷鳴斬(らいめいざん)!!」

電流の纏った大剣でゾークに斬撃を放つエミリア。ゾークはその攻撃を自分の大剣で受け止める。だが電流の纏ったエミリアの大剣は威力がさっきまでとは明らかに違っていた。ゾークの大剣はエミリアの大剣に押されて徐々にゾークに近づいていく。

「クッ!止められんか!」

ゾークが悟った瞬間、ゾークは大きく飛ばされ床に叩き付けられるように落下した。

「貴方と私の剣の間には私が作り出した電流が挟まれている、接触しているならまだ止められたかもしれないけど、電流を挟んで隙間がある場合はその電流を操っている私の方が有利よ」

空中から落下したゾークを見下ろして独り言を言うエミリア。落下した場所からは灰色の煙が上がっており、その中から何かが飛び出した。竜翼を広げ、大剣を持ったゾークだ。体のあちこちに掠り傷ができていた。

「これは効いた。だが、いつまでそんな態度が取れるかな?」
「貴方が倒れるまでよ!」
「それは、無理だ」

そう言った瞬間ゾークはエミリアの視界から消え彼女の背後に回った。

「は、速い!」
「フン・・・・」

ゾークはエミリアの背後を狙って大剣を振り下ろした。エミリアは振り返りながら大剣を大きく横に振りゾークの攻撃を弾いた。

「間に合った!」
「甘いぞ」

ゾークは大剣を弾かれた直後に彼女の腹部に蹴りを入れた。

「グハッ!」

力に押されて飛ばされたエミリアは5mほど先で体勢を立て直し、再びゾークに向かって飛んで行き、斜め切りを放った。ゾークはその攻撃を大剣で止め、二つの大剣がぶつかり火花を散らした。

「どうした、私を倒すまで余裕の態度を取っているのではないのか?」
「まだ十分余裕よ」

会話を終えた二人は再び大剣で攻撃と防御を交互に行い隙を窺いながら空中で戦いを再開した。





同時刻、格納庫を制圧に向かったコンタとシオンはレイナから連絡を受けてブリッジへ向かっていた。ハヤテとの戦いで意識を失ったコンタは意識を取り戻し、シオンと共に廊下を走っていた。

「コンタ、体は大丈夫?」
「ハイ、大丈夫です。ハートレスキュアで大きな傷は治りましたし」
「そう、よかった」

走りながらコンタの心配をするシオン。二人はブリッジのある階層へ向かうために階段へ向かっていた。そして廊下を通過し階段に差し掛かろうとした、その時。

「うっ!!」
「な、何この臭い!?」

階段の一歩前で二人は鼻を押さえて顔を歪めた。とてつもない悪臭が漂い、コンタとシオンはゆっくりと階段を覗いた。階段は薄暗くなっている、そして階段のあちこちにヘルデストロイヤーの傭兵の死体が転がっていた。しかもその死体には濃緑色の液体が付着していたのだ。

「な、何なんですか、これ・・・・」
「鼻が曲がりそう・・・・」

二人が一歩ずつ死体に近づいていく。死体を良く見ると、どの死体も苦しそうに顔を歪めて死んでいた。

「何でしょうか、この液体は・・・・」
「・・・・ッ!待って!!」
「!?」

濃緑色の液体に触れようとしたコンタを止めるシオン。彼女はバックパックから細長い機械を取り出した。形はスタンガンによく似ている。

「シオンねえさん、それは?」
「毒物探知機よ。サヤカってたまに毒薬を使ってくる時があったから念のために持ってきたの」
「毒物・・・・つまり、シオン姉さんはこの液体が毒だと?」
「多分ね。とにかく調べてみるわ」

シオンは探知機のスイッチを入れてゆっくりと液体に近づけた。毒が先端に触れるとメーターの針が一気に上がった。

「ウ、ウソ、針が一気に・・・・」
「どうしたんですか?」
「やっぱりこれは毒よ。しかもかなり殺傷力の高い猛毒・・・・」

しばらくすると、探知機からプスプスと煙が上がりだし、やがて探知機のメーターのレンズが割れて機能が停止した。

「ワァ!びっくりした」
「毒が強すぎて探知しきれずに壊れちゃったわ」
「壊れる位ヤバイ毒なんですか?」
「ええ、でも一体誰がこんな猛毒を・・・・」
「ヘルデストロイヤーの傭兵達が毒にやられてるという事は、少なくとも奴等の味方ではありませんね」
「そうね。でも、ライトシンフォニアの中にもこんな危険な毒を使う傭兵はいないわ」
「じゃあ誰が・・・・」

コンタとシオンは毒を使った人物が誰なのかその場で考え込んだ。だが全く分からない。

「・・・・コンタ、考えるのは後にしましょう。今はブリッジにいるマサシ達と合流しましょう」
「おっと、そうでしたね。ユウタとレイナもブリッジに向かってるみたいですし、急ぎましょう!」
「ええ!」

二人は毒に気をつけながら階段を駆け上がりブリッジへ向かっていった。だが、この時はまだ誰も気付いていない、このベンヌの中で恐ろしい事が起きようとしている事を・・・・。





一方、最下層ではエミリアとゾークが空中でお互いをジッと見ていた。二人とも表情こそ変わってはいないが、疲労が溜まっているようだ。

「次の一撃で決着がつきそうね」
「そうだな、お互いそろそろ限界のようだしな」
「あら、私はまだ大丈夫よ」
「フッ、見え過ぎたウソはよせ」

ゾークの言うとおりエミリアはこれ以上戦いを続けることはできない程疲れが出てきたいる。しかし、それはゾークも同じだった。

「次で、最後よ」
「ああ」

二人は大剣を構えて全速力で相手に向かって飛んで行く。そして二人は自分達の大剣を大きく振った。その直後、部屋の中は紫と黄色の光で満たされた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 185