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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第121回   第百二十話 運命に終止符を! エミリアVSゾーク!

ブリッジを制圧したマサシ達。だが、そこにゾークの姿は無かった。それを知った直後にエミリアも姿を消してしまう。その時二人は核の保管場所である最下層にいたのだ。

「これで私達の関係も終わるのだな」
「ええ、そうよ」

エミリアとゾークはお互いに自分の大剣の柄を強く握り構え始めた。

「ゾーク一つ訊いていもいいかしら?」
「何だ?」
「貴方、どうやってブリッジからこの最下層まで来たの?ブリッジの外には私の部下達が待機していた、貴方がブリッジの外に出れば部下達もそれに気付いて私の所に連絡を入れてくるはず。でも私とマサシ達がブリッジのカードキーを取りに行っている間に連絡は入ってこなかった、つまり貴方はブリッジから外には出ていないということ。私達がブリッジにたどり着く前に最下層に行ったとも考えたけど、そうだとしたら管制室を制圧したユウタとレイナが貴方に気づいて連絡をしてくるはず。でもそれもなかった、どうやってここに来たの?」

エミリアが細かく自分の推理を説明しながらゾークに尋ねると、ゾークは大剣を構えたまま答えた。

「なに、簡単な事だ。ブリッジには最下層まで続く小さな隠しエレベーターがあるのだ、それを使ってここに来た。只それだけのことだ」
「成る程」

エミリアは金色の長い髪を靡(なび)かせ静かな声で納得した。

「それで、どうするつもりなのだ?」
「どうするって?」

ゾークの顔をジッと見ながら訊き返すエミリア。すでに二人は自分の大剣を構えて何時でも戦える状態に入っていた。

「ここで私を殺すのか、それとも混沌の楔を行うのかという事だ」
「・・・・・・」

エミリアは表情を変えずに黙り込む。その時、彼女の無線機から発信音が聞こえてきた。エミリアは大剣を構えたまま、視線を変える事なく無線機を取りスイッチを入れて自分の顔に近づける。

「私よ」
「エミリア様!」

無線からマサシの声が聞こえ、エミリアは冷静に応答した。

「マサシ、どうしたの?」

普段敬語を使うエミリアだが、今の彼女はいつもと雰囲気が違っていた。

「どちらにいらっしゃるのですか!?突然居なくなって・・・・」
「今最下層にいるわ」
「最下層?」
「ええ」
「そ、そうですか。でもいつの間に・・・・あっ!それから、たった今ブリッジを制圧したのですが、ゾークの姿が見当たりません!」
「ゾークならここにいるわ」
「え?ここって、最下層ですか?」
「ええ、しかも私の目の前に」
「ええっ!!?」

無線機からマサシの驚きの声が聞こえてきたが、エミリアは表情を変えずにゆっくりと口を開いた。

「マサシ、貴方達はそのままブリッジに残ってベンヌを着陸できる所まで移動させて。その後はそのまま待機」
「エミリア様はどうなさるのですか?」
「私はここでゾークと戦うわ」
「ええ!ゾークと!?」
「戦うが終わったらまた連絡するわ」
「そ、そんな、お一人では危険です。俺達が今そっちに・・・・」
「ダメッ!!」
「・・・・ッ!!」

今まで聞いた事のないエミリアの力の入った声に驚きマサシは黙り込んだ。そして再び静かな声でエミリアは話し出す。

「これは私とゾークの問題であり、運命でもあるの。だからお願い、手を出さないで・・・・」
「で、ですが・・・・」
「大丈夫よ」

静かな声から、少しだけ温もりのある声でエミリアは話し続ける。

「必ず戻るわ、だから貴方達は今自分達にできる事をやって」
「エミリア様・・・・」
「ね?」
「・・・・・・」

しばらくして無線機からマサシの声が聞こえてきた。

「分かりました。エミリア様、お気をつけて」
「ええ、ありがとう」
「それでは、御武運を・・・・」

無線機の切れる音がして、エミリアは無線機を戻して構え直した。

「さっきの言葉、アイツ等を巻き込まない為か?それとも君自身の為か?」
「両方よ」
「そうか、やはり自分の運命は自分の力で終わらせたいのだな」
「・・・・・・」

ゾークの他人事のような言い方をただ黙って聞いているエミリアはゆっくりと目を閉じて口を開く。

「話すのはここまでにしましょうか?」
「・・・・フッ、そうだな」

その言葉を最後に二人は口を閉じ自分の大剣を構える。しばらくお互いの顔を見る二人、そしてエミリアが目を開いた瞬間に床を蹴り一気に距離を距離を詰めた。

「フッ!」
「ハッ!」

エミリアとゾークの大剣の刃が触れ合い火花を散らす。そのすぐ後に大きく跳び再び距離を作り、間合いを空けた二人は再び急接近してお互いに攻撃と防御を交互にもの凄い速さで行う。

「前に戦った時にも思ったが、腕を上げたなエミリア」
「私は今日まで貴方と戦う為に腕を鍛えてきたのよ。絶対に負ける訳にはいかないの」
「そうか、なら私を倒してさっさと混沌の楔を行うんだな」
「言われなくてもそのつもりよ!」

戦いながら会話をするエミリアとゾーク。そして二人は瞬時に後ろに跳んで距離を作るとすぐに契約魔法の演唱を始めた。

「闇を消し去る聖なる爆炎!エクスプロージョン!!」
「雷雲よ刃となれ!サンダーソード!!」

エミリアは手を上げて頭上に大きな白い火球を作り、ゾークも手を上げて頭上に紫電の剣を生み出した。そして二人は演唱を終えてすぐに火球と剣を相手に向かって投げつける。そしてぶつかった瞬間に大爆発を起こした。

「ううっ!」
「クッ!」

お互いに爆発の衝撃と爆風に耐えながら下半身に力を入れる。しかし、二人の周りにある機材やコンピュータなどが爆発に巻き込まれ小さな爆発を起こし使えなくなった。だがゾークの背後にある核発射の制御装置だけは無事だった。

「フッ、魔力も上がっているか・・・・」

ゾークは爆発で起きた煙をジッと見ながら呟く。すると彼の視界に煙の中から白い翼を広げて自分に向かって来るエミリアが飛び込んできた。

「ハアーッ!」
「・・・・ッ!」

次の瞬間ゾークの背中から甲冑に穴を開け灰色の竜翼を現れる。彼は竜翼を広げて大きく飛び上がった。エミリアもゾークを追うように高度を上げた。ゾークは追って来るエミリアを目だけを動かして確認するとエミリアが立っていた方角へ飛んで行き、空中で方向転換しエミリアの方を向いて止まる。自分の方を向いたゾークを見てエミリアも空中で止まった。

「どうしたの?逃げてばかりで反撃してこないじゃない」

エミリアが挑発するようにゾークに言い放つとゾークは仮面に手を付けゆっくりと仮面を外して素顔を見せる。エミリアと同じ金髪で同じ若さを持つ顔だ。

「戦うには仮面は邪魔だ。それに、戦うには障害物の無い空中のほうがやりやすい」
「本気で戦う為に空中戦に持ち込んだって訳ね」
「そのとおりだ」

小さく笑いながらゾークは仮面から手を離す。仮面は金属音をたてて床に落ちる。そして今度は西洋甲冑の止め金に手を伸ばし甲冑を全て外していく。甲冑は一つずつ床に落ちていき、甲冑の下から黒いタクティカルスーツを身に纏ったゾークの体が姿を現す。

「甲冑を全て捨てさせてもらった、これで体がだいぶ軽くなる。更にコレだ、解放!レベル・3!!」

レベル・3を発動しゾークの体に灰色の光のラインが浮かび上がった。

「それなら私もレベル・3を使わせてもらうわ。解放!レベル・3!!」

エミリアもレベル・3を発動させ、体に薄い黄色のラインが浮かび上がった。これで二人ともレベル・3、さっきまでとは比べ物にならないほどの戦いになるだろう。

「さあ、ここからが本番だ」

ゾークは竜翼を広げてもの凄い勢いでエミリアに向かって飛んで行き斜め斬りで攻撃してきた。エミリアはその斬撃を軽く受け流し、そのすぐ後に大剣で突きを放つ。だがゾークは身を反らしてその突きを回避、そしてがら空きのエミリアの脇腹に蹴りを入れた。

「ウッ!!」

エミリアは蹴りを受けながらも体制を崩さずに右手で大剣を握ったまま空いてい左手でゾークの足を掴み勢いよくゾークを壁に向かって投げ飛ばしゾークはそのまま壁に激突した。

「グオッ!」

体に伝わる衝撃に声を上げるゾーク。だがダメージはほとんど受けていない様だ。壁を両足で蹴り大きく跳んだ後に再び竜翼を広げてエミリアと同じ高さまで高度を上げた。

「やるじゃないか」
「そう言う貴方もね」

簡単な会話を終えた後二人はまたもの凄い勢いで急接近し自分達の大剣を交える。そして再び距離を取り、飛び回りながら隙を窺い、再び攻撃を仕掛ける。それを何度も繰り返し長期戦に持ち込んでいった。





その頃、ゴードン、リーズとの戦いに勝利したユウタとレイナは廊下を走っていた。

「レイナ、傷はどうだ?」
「大丈夫だ、弾丸も体内から取り除いた。すぐに痛みはひく」

レイナの傷を心配しながら走るユウタとSAAを握りながら走るレイナ。二人はマサシ達に核の情報を話したすぐ後に管制室を出てブリッジに向かっていた。

「それよりも、一体どうなっているんだ?」
「・・・・さっきの傭兵達の事か?」
「ああ・・・・」
「私にも分からん・・・・」

走りながら何かを気にする二人。実は二人が今いる廊下を通る前に、彼等はとんでもない物を目にしていたのだ。管制室の前、ここまで通ってきた別の廊下、そのあちこちにヘルデストロイヤーの傭兵達の死体が転がっていたのだ。しかもその傭兵達は全て刃物で斬り殺されていたのだ。その光景を見た時、ユウタは勿論いつも冷静なレイナまでも驚いていた。

「あれは恐らく私達を倒す為に送り込まれた敵の増援だろう」
「何時まで立ったも増援が来ないわけだ、何しろ皆死んでたんだからな・・・・」
「ああ、だが一体誰が・・・・。あの死体の山からして只者ではない事は確かだ」
「刃物で斬られてたんだから、エミリア様かマサシなんじゃないのか?」
「それはありえない、私達が管制室に居たとき二人はすでにブリッジに向かっていたのだ。それに二人はあそこまで酷(むご)いやり方は絶対にしない」
「確かに、じゃあ俺達以外にヘルデストロイヤーに敵対する奴がこのベンヌに居るってことか?」
「可能性はある。とにかくソイツ敵であるか味方であるかどうか分からない以上、警戒は怠るな」
「分かってる」

ユウタとレイナはヘルデストロイヤーを襲った謎の人物の存在を警戒しながらブリッジに向かって進んでいく。





同時刻、ユウタとレイナが進んでいる方角と正反対の方角にある廊下。そこにもヘルデストロイヤーの傭兵の死体が幾つも転がっていた。しかも全員に切傷があり、死んでからそれ程時間は経過していない。つまり死んですぐの死体ばかりだったのだ。

「ハァハァ!く、来るなぁ!!」

一人のヘルデストロイヤーの傭兵、その手には血塗れのMP5が握られていた。そして彼の周りには仲間の死体が転がっている。一歩ずつ傭兵に近づいて行く一人の男、なんとそれは鬼の仮面を付けた侍、魔人タツノスケだった。彼の握られている日本刀にはべったりと血が纏わりついたいた。

「う、うわぁーーーー!!」

怯えながらMP5の銃口をタツノスケに向けて引き金を引く傭兵。だが弾は全てタツノスケの刀に弾き落とされてしまった。やがて弾切れになり、傭兵はMP5を落し背を向けて逃げようとする。だが次の瞬間、タツノスケは傭兵の前に立っており、傭兵の腰から下と腰から上が離れていたのだ。傭兵は悲鳴を上げる間も無くその場に倒れた。

「斬り捨て御免・・・・」

そう言いタツノスケは刀を鞘に納め、その場から立ち去った。


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