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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第120回   第百十九話 ブリッジ制圧と核発射
激闘の末、Urs(ウルス)に勝利したマサシとジゼル。しかし今回は予想以上に苦戦したのかジゼルは戦いが終わった後に床に座り込んでいた。

「フゥ、流石に今回は疲れたね・・・・」
「ああ、アイツもかなりパワーアップしていたからな」

マサシは機能を停止して動かなくなったUrsの周りを見回っていた。そしてUrsの近くに青いカード状の物が落ちているのに気付きそれを拾う。

「あったぞ、カードキーだ」

カードキーを拾い座り込んでいるジゼルの下へ歩いていく。

「それがカードキー?」
「ああ、これで二枚のカードキーは揃った。ブリッジには入れるぞ」
「これであとはゾークを止めるだけだね」
「奴は強い、多分アイツを止められるのはエミリア様だけだろうな」
「うん、でも・・・・」

突然俯いて黙り込むジゼル。そんな彼女を見てマサシは膝をつき視線をジゼルと同じ高さまで下ろした。

「どうした?」
「エミリア様、ゾークを止めたらどうするのかな?」
「ん?」
「やっぱり、混沌の楔をやるのかな?」
「・・・・多分な」
「混沌の楔をしたらエミリア様とゾークはやっぱり・・・・」
「・・・・・・」

混沌の楔の後の事を想像してマサシも同じように俯いた。呪いで混沌の楔を行うまで死ぬ事を許されないエミリアとゾーク。混沌の楔を行えば二人は呪いから解放されて死ぬ事が許される、長い間その苦しみに耐えながら生きてきた二人だ、当然自ら命を絶つだろう。

「・・・・マサシはどう思う?」
「・・・・・・」

しばらく黙っていたマサシは顔を上げて悲しそうな顔をするジゼルを見て口を開く。

「あの人は今日まで苦しい思いをしてきたんだ。愛する人に剣を向け、周りの人が死んでいく中、自分だけが歳を取らずに生き続ける。ようやくその苦しみから解放されるんだ、俺はただ見ている事しかできないさ」
「でも、エミリア様は貴方の・・・・」
「ああ、俺の、いや、俺達神竜隊の育ての親でもある人だ。でもきっとコンタ達も俺と同じ考えだと思う」
「あたしもそれは分かってるつもりなんだけど・・・・」

少しの間しか一緒にいなかったが彼女の優しさや温もりを知り、悲しさと寂しさを感じるジゼルはすぐには納得できないのだろう。マサシは優しく彼女の肩に手を置いて口を開いた。

「ジゼル、その話はこの戦いが終わってからだ。今は一刻も早くブリッジを制圧しないといけない」
「・・・・うん、そうだね。行こう、早く皆と合流しないと!」

マサシとジゼルは立ち上がり、エミリア達と合流するために第二訓練所を後にした。そして二人はブリッジの入口があるエントランスへ戻った。二人を見た傭兵達は一斉に集まってきた。

「秋円大尉、アルフォント少尉、ご無事でしたか!」
「ああ、カードキーも手に入った」
「そうですか」
「それで、エミリア様とネリネは?」
「お二人はまだ戻っておりません。そろそろ・・・・」

マサシと傭兵が会話をしていると、エミリアとネリネも戻って来た。

「エミリア様!」
「姉さん!」

二人が無事に戻ってきたのを見てマサシとジゼルは二人の下へ駆け寄る。それに続いて傭兵達も二人の所へ走った。

「マサシ、ジゼル、二人とも無事でしたか」
「ハイ」
「姉さん、大丈夫?体中傷だらけだけど・・・・」
「それは貴方も一緒でしょ?」
「アハハハ、そうだね」
「フフフフ」

四人は無事に再会できた事を喜んで笑いあった。だが、喜ぶのはまだ早い、彼等にはまだやる事が残っている。

「カードキーは手に入ったのですね?」
「ハイ、これです」

マサシは手に入れた青いカードキーをエミリアに見せ、エミリアも赤いカードキーをマサシ達に見せた。

「これでブリッジに入れるね?」
「ああ、早くゾークを止めないとな」

マサシとジゼルが話していると、何処からか無線機の発信音が聞こえてきた。マサシ達が周りを見回していると、エミリアが自分の無線機を取りスイッチを入れた。

「私です」
「エミリア様」
「レイナ?」

無線機から聞こえてきたのはレイナの声だった。

「どうしたのですか、レイナ?」
「エミリア様、そこにマサシはいますか?」
「ええ、いますよ」
「すみません、変わってもらえますか?」
「ええ、ちょっと待ってください」

顔から無線機を放したエミリアは無線機をマサシに差し出す。

「マサシ、レイナからですよ」
「レイナ?」

マサシはエミリアから無線機を受け取り、自分の顔に近づけた。

「俺だ」
「マサシか、一体どうしたんだ?お前の無線機に何度も連絡を入れても返事がなかったぞ」
「ああ、悪い。Ursに無線機を壊されちまってな・・・・」
「そうだったのか、それでジゼルは無事なのか?アイツの無線機からも返事がなかったぞ」
「実はジゼルの無線機も壊されちまったんだ、ハハハハ・・・・」

無線機が壊された事を話して苦笑いをするマサシ。すると、無線機の向こうに居るレイナが小さく溜め息を付いた。

「ハァ、まったく脅かすな・・・・」
「悪い、それで、一体どうしたんだ?」
「お前に頼まれて調べていた事が分かったぞ」
「頼まれて・・・・・・ああ、アレか!」

マサシはレイナから煉獄機械兵団の事を訊いた時に彼女に言った事を思い出した。





『レイナ、もう一ついいか?』
『何だ?』
『実はこの要塞機に搭載されている核の保管場所と起爆コードを調べてほしいんだ」
『核?』
『ああ、これまでずっと戦っていたからヘルデストロイヤーが核を持っているって事をスッカリ忘れていたんだ』
『!そうだ、奴は核というとんでもない物を持っていたな・・・・』

核の事を思い出し無線機の向こう側で驚くレイナ。マサシの隣にいたジゼルも声は出さなかったが驚いていた。

『奴等の目的は俺達(ライトシンフォニア)を壊滅させること、そしてサンドリアを陥落させることだ。いや奴等はサンドリアを陥落させるなんて最初から考えていないはずだ。ユピローズ王国はこの世界で最も俺達を信頼し、助力している国、そしてサンドリアをその国の首都、奴等にとって俺達やサンドリアは目障りなはずだ。つまり奴等の本当の目的はライトシンフォニアとサンドリアをまとめて始末する事だ。それを最も簡単に、最も早く行う方法は・・・・」
『『核!』』

ジゼルとレイナが声を揃えて言う。ジゼルの方を向いて頷いたマサシは再び無線機の方を見て話を続けた。

『奴等は必ずこの戦いの最中に核を使うはずだ。奴等が核を使う前に起爆コードを調べてそれを解除しなければならない。急いで調べてくれ!」
『・・・・・・分かった』






レイナに頼んだ事を思い出してマサシは無線機に顔を近づけた。

「分かったのか?起爆コードの解除方法と保管場所が」
「ああ、少々セキュリティー手間取ったがな・・・・」
「さすがだな。それで?」

マサシが核の事をレイナに尋ねると、ジゼル、エミリア、ネリネ、そして傭兵達が一斉に静まった。

「いいか、まず核の保管場所だが、この要塞機の最下層に保管されている」
「最下層か・・・・」
「しかもそこに核発射の制御装置がある。つまり、核を発射するには最下層に行って直接制御装置を操作しなければならない」
「なるほど・・・・」
「そしてもう一つの起爆コードだが・・・・」
「ああ」
「起爆コードはゾークの声による音声入力だ・・・・」
「音声入力!?」

マサシの声を聞いて周りの者達は少しざわめき出した。

「要するに、核を発射できるのはゾーク本人だけという事だ」
「ゾークだけ・・・・」

ゾークが核を発射できる。パイシーズ聖王国を跡形もなく消し飛ばしたのはゾーク、それを想像したマサシ達はゾークがどれだけ冷酷な人間なのかを改めて知った。

「分かったのはこんな所だ・・・・」
「そうか、ありがとな」
「ああ」
「お前もユウタと一緒にはやいとこコンタとシオンと合流して上に上がってきてくれ。早くしないと敵の増援が来ちまうぞ?」
「・・・・・・その事なんだが」
「どうした?」

マサシは突然低い声を出したレイナに尋ねる。するとレイナは低い声のまま話し出した。

「あの後、お前に頼まれて起爆コードを調べている間、敵の増援が一人も来なかったんだ」
「増援が来ない?どういう事だ?」
「ここは敵の本拠地だ。普通これだけ派手に暴れれば敵もすぐに私達の所に増援を送るはずだ。敵の数が少なかったら尚更のはず、だが一人も来なかったんだ・・・・」
「・・・・・・確かにそれは妙だな。コンタとシオンの所に向かったんじゃないのか?」
「私もそうだと思って二人に連絡を入れたが、敵は来ていないとの事だ」
「?」

敵の増援が来ない。それを聞いたマサシ達は表情を変える事無く考え出した。

「まあ、私達としてはそっちの方が助かるがな。とにかく私とユウタはコンタとシオンと合流してそっちに向かう」
「分かった、俺達はこのままブリッジを制圧してゾークを捕縛する」
「油断するなよ?」
「分かってる。お前達も気をつけろよ」
「ああ、エミリア様と変わってくれ」
「了解」

マサシはエミリアに無線機を手渡し、エミリアは無線機を顔に近づけた。

「私です」
「エミリア様、私達もすぐにそちらに向かいます。マサシ達をお願いします」
「分かりました、気をつけて上がってきてください」
「ハイ、それでは・・・・」

レイナのその言葉を最後に無線機から電源の切れる音が聞こえた。

「さあ、行きましょう!」
「「「ハイ!!」」」

マサシ達は声を揃えて返事をした。マサシとエミリアはブリッジの入口の横に付いているカードリーダーの前に立ち、自分達の持っているカードキーをカードリーダーの隙間に差し込んだ。

「マサシ、行きますよ?」
「ハイ」
「3!」
「2!」
「1!」
「「0!」」

二人は同時にカードキーを下ろした。すると、カードリーダーの緑色のランプの「OPEN」というランプがついた。

「行くぞ皆!」
「「「おおー!!」」」

マサシ達は自分達の武器を構えて一斉にブリッジに突入した。そして突入してきたマサシ達に驚き、ヘルデストロイヤーのオペレーター達は抵抗せずに両手を上げて降参した。

「よし、まず外の連中にブリッジを制圧した事を知らせるんだ。これで外の戦いは止まるはずだ!」
「「「ハイ!」」」

マサシの指示に従い傭兵達は外の両軍にブリッジ制圧を知らせた。しかし、何かおかしいと感じたマサシは辺りをキョロキョロと見回した。

「・・・・ゾークがいない」

そう、ヘルデストロイヤーの社長であり総司令官でもあるゾークの姿がブリッジの何処にも見当たらないのだ。

「おい!ゾークは何処だ!」

マサシがオペレーター達にゾークの居場所を聞いていると、背後からジゼルが話しかけてきた。

「マサシ、エミリア様がいないよ」
「え?」

さっきまで自分達の一緒にいたエミリアの姿も見当たらない。マサシはエントランスに出てエミリアを探した。だが、彼女はいなかった。





ここはベンヌの最下層、まるでタンカーの船底の様に広く、部屋の端には渡り廊下やハシゴがある。その部屋の真ん中を一人の男が歩いていた。ゾークだった。

「フフフ、残念だが、私はブリッジにはいないぞ、ライトシンフォニアの諸君」

そう言いながら部屋の真ん中を歩きながら辺りを見回すゾーク。その部屋には無数のミサイルのような物は置かれている。核弾頭だ。

「コイツ等がある限り誰も私達には逆らえん」

その部屋の置くにある自動ドアに近づくゾーク。そのドアの先には学校の教室二つ分程の広さのある部屋があった。その奥には何かのコンピュータのような物があった。それこそが核弾頭の制御装置だったのだ。

「すでに核弾頭は装填されている。あとは私の声で起爆コードを入力し発射ボタンを押せば・・・・」
「そんな事はさせないわよ」
「!」

突然背後から聞こえてくる女性の声に振り返るゾーク。そこにはブリッジにいたはずのエミリアが大剣を握り立っていた。

「エミリア!どうして君がここに?ブリッジに向かったのではないのか?」
「確かに数分前まではブリッジの前にいたわ。でもレイナが貴方の声が核の起爆コードの入力方法だと聞いてもしかしてと思って貴方はすでに最下層に居るんじゃないかと思ってここに向かったの。そしたら案の定、貴方はここにいたわ」
「私の行動を先読みしていたのか・・・・。だとしてもこんな短時間でこの最下層に来るなんて不可能なはずだぞ?」
「私は契約者よ?インシェルの力を使ってテレポートしたのよ」
「・・・・フッ、フフフフ。成る程」

笑いながら納得したゾークは自分の背中に納めてある大剣を抜いた。

「ゾーク、ここで終わりにしましょう」
「そうだな」

ブリッジを制圧したマサシ達。しかし、その時ゾークはすでに最下層で核を発射しようとしていた。そんなゾークを止める為にエミリアがゾークに剣を向ける。遂にエミリアとゾークの長い戦いにを終える最後の戦いが始まる!


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