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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第116回   第百十五話 機械仕掛けの天使 No3

ヘルデストロイヤーに捕らえられ、無理矢理改造されてしまった3体のE0。彼女達の悲しみと悔しさを知り彼女達をジッと見つめるエミリアとネリネ。

「・・・・・・」

エミリアはゆっくりと立ち上がり倒れているE0に手を差し伸べた。

「・・・・何のつもり?」

エミリアの行動を理解できずに見上げるE0。エミリアは真剣な眼差しで彼女を見て言った。

「私達と一緒に来てください」
「・・・・は?」
「貴方達はヘルデストロイヤーの技術で改造されたのでしょう?ならばライトシンフォニアの技術でも貴方達を元に戻す事ができるはずです」
「え?」

元に戻せる、その言葉を聞いたE0は倒れたまま聞き返した。そんな時、エミリアの後ろで立っていたネリネも少し驚いた様子で尋ねた。

「エミリア様、本当ですか?本当にこの子達を元の戻す事ができるんですか?」
「ええ、勿論。ヘルデストロイヤーのコンピュータから情報を得れば、あとは我が社の優秀な技術者達が力をつくしてくれます」

ネリネの方を見ながら笑顔で話すエミリア。そんな彼女の顔を見たネリネも「きっと大丈夫」と心の中で確信して笑顔を見せる。エミリアはE0の方を向き直し、優しい顔を見せて話し続ける。

「もうこれ以上、望まない戦いをする必要はありません。あとの二人も彼女が指示を出さなければ襲ってきませんし、さぁ」

再びE0に手を差し伸べ彼女を起こそうとするエミリア。敵であるはずの自分に優しく手を差し伸べるエミリアの顔を見たE0は少し驚きながら「彼女は嘘はついていない」と悟ったのだ。

「本当に、本当に元に戻してくれるの?」
「ハイ、私達を信じてください」

元の人間に戻りたい、その願いが叶うと知ったE0は自然と笑顔を見せてゆっくり立ち上がった。そしてE0はゆっくりと自分の手をエミリアの手に乗せようとした。





その頃、第二訓練所ではマサシとジゼルが体中をホコリまみれにしながらUrs(ウルス)と戦っている最中だった。

(・・・・チッ!E0の内の1体が意志を取り戻したか。しかも元の戻してもらえると知った途端に我々を裏切ろうとするとは)

マサシとジゼルをジッと見たまま動かず頭の中で呟くUrs。そんUrsを見ながらジッと構えている二人。

(アイツどうしたんだろう、突然止まって?)
(分からない、だけど迂闊に動けないな・・・・)

小声でヒソヒソと話しているマサシとジゼル。だがUrsはそんな二人を方を向いてはいるが全く気にしてない。

(アイツ等、俺が自分達をコンピュータを通して何処にいるのか、何を考えているのか全てを知る事ができる事を知らないようだな。馬鹿め、お前達は俺の支配から逃れられない事を教えてやる)

そう頭の中で考えた後、Ursは目を光らせた。だが、マサシとジゼルはその事に気付いていなかった。





「さぁ、行きましょう」

第三訓練所、笑顔でE0達を迎えようとするエミリア。立ち上がったE0も笑いながら手を伸ばす。だが、現実は甘くなかった。

「これで私達は元に・・・・ぐっ!ぐわあああああ!!」
「「!?」」

再び激しい頭痛に襲われ頭を抑え出しE0。エミリアとネリネは突然の事に驚いて表情を一気に変えた。

「あああああっ!や、やめてー!!」
「い、一体どうしたの?」
「分かりません・・・・」

苦しみ出したE0を見て驚きながらエミリアに尋ねるネリネ。エミリアも理由が分からず表情を鋭くした。

「も、もうイヤだ!戦いたくない!私は、私は帰るの!彼の所に!あノヒとのトコろに!ア、ああアアアああア!!」
「・・・・どうなっているの?」
「・・・・・・」

頭痛に襲われながら断末魔を上げるE0をジッと見つめるエミリア。E0の声は少しずつ機械化していっている事は当然彼女は気付いている。そして叫び声を最後にE0は首と頭を押さえている手をガクッと落して黙った。

「・・・・・・」
「だ、大丈夫?」

突然黙ってしまったE0にゆっくりと近づくネリネ。次に瞬間、E0はフッと顔を上げた。驚いて大きく後ろの跳ぶネリネ。E0の目は最初に会った時と同じように目から光が消えていた。だが、最初に会った時とは若干何かが違う。

「殺ス、ライトシンフォニア、殺ス・・・・」
「え?」

目を丸くしながら驚くネリネ。E0の声は完全に機械化していた。

「ど、どうしたの?しっかりして!」
「待ってください」

近づこうとするネリネの前に手を出した彼女を止めるエミリア。そしてエミリアはゆっくり目を閉じ、E0に向けて何かを透視するかの様に自分の意識を飛ばした。そして・・・・。

「・・・・ッ!コンピュータに意志を完全に支配されている、今の彼女達はただ命令どおりに動くロボットと同じです!」
「何ですって!?」

エミリアはE0達が完全にコンピュータに取り込まれてしまった事を知って少し高い声を出した。E0達は他のロボット、G250やS420と同じ様になってしまったのだ。そしてE0は一斉に飛び上がり鉄の翼を広げた。

「エミリア様、逃げてください!」
「!」

ネリネの声を聞き咄嗟に飛んでその場から離れたエミリアとネリネ。次の瞬間、二人が立っていた場所へ銀色の羽の雨が降り注いだのだ、天使魔法のレインフェザーだ。

「なんて力なの・・・・」

躊躇(ちゅうちょ)無しに攻撃をしてくるE0達の力に少し驚くエミリア。レインフェザーの後に2体のE0がそれぞれエミリアとネリネを追った。

「さっきと同じじゃない!」

さっきまでと同じ様にE0が背後から追って来る光景にネリネは苛立ちを見せながらも必死に逃げ回っていた。

「これじゃあ泥沼状態だわ、ここは大勝負しかないわね!」

ネリネは逃げるのを止めて空中で立ち止まり、剣を構えて追って来るE0の方を見た。E0もネリネが止まったのを見た直後に剣を構えて突っ込んでいく。だがネリネは回避行動を取ろうとはしなかった。

「ハァーーッ!」

目を閉じて力を溜めるように剣を強く握るネリネ。そして剣を力強く縦に振った。

「最大全力よ、精霊剣術!ブルーズソニック!!」

剣から青い刃が放たれ、その刃はE0に直撃し大きな爆発音を上げ、E0は煙を上げて床に叩きつけられるように落ちていった。煙が消えると、そこには体を壊されそこから電気をバチバチと音を立て動かなくなったE0が有った。

「や、やっと倒せた・・・・」

空中で勝利を手の入れホッと胸を撫で下ろすネリネ。そしてすぐにエミリアの元へ飛んで行った。その頃エミリアは自分の後を追って来ていた別のE0と戦っている最中だった。お互いに自分の剣を自在に操り、激しい攻防を繰り広げていたのだ。

「フッ!ハッ!」
「・・・・・・」
「やりますね。でも、心の無い者が操る剣など私には届きません!」

そう叫んだ直後にE0の視界からエミリアの姿が消えた。E0が辺りを見回してエミリアの姿を探すが見つからない、すると、E0の背後から突然翼を広げたエミリアが現れた。

「遅い!」
「・・・・!」

声に反応し、振り返るE0。だがすでに遅かった、E0が自分の方を向いた瞬間にエミリアは大きく大剣を振り下ろし、渾身の一撃をE0の背後に与えた。攻撃を受けた場所からバチバチと電気が発生し、E0はまっ逆さまに落下して動かなくなった。それを空中から見届けるエミリアの顔には少しだけ悲しみがあった。

「ゴメンなさい、貴方達にも大切な人がいるように、私達にも守らなければならない大切な人がいるんです。だから、私達はこんな所で死ぬ訳にはいきません」

謝罪をしながら自分の思いを言うエミリア。そんな彼女の耳に叫び声が響いた。

「キャアアアッ!」
「あの声は、ネリネ?」

エミリアはネリネの声のする方を向いて全力で飛んで行った。





「うわああああああ!!」

エミリアが戦っていた場所からさほど離れていない場所、そこでネリネは最後のE0に襲われていた。そう、さっきまで自分の意志を持っていたE0だ。

「うう・・・・」
「・・・・・・」

E0は騎士剣を持ち、黙って倒れて動けないネリネに一歩ずつ近づいてくる。彼女の目にはもう光は無く、自分の意志は無いに等しかった。

「・・・・やめて!目を覚まして!」
「◇\#%〒煤E・・・」

意味不明の機械声で喋りながら近づいてくるE0を必死で説得しようと語りかけるネリネ。今の彼女は最初のE0との戦いで傷を負い、疲労も来ている、立ち上がる事も困難だろう。

「貴方に人間らしい感情が、人を思う優しさがあれば、貴方の恋人はきっと分かってくれる!分かってくれるはずよ!」
「$コ〇☆ロ凵E・・・」
「信じて、貴方の恋人を!姿が変わっていても、きっと貴方を受け入れてくれるわ!」
「コロス、ライトシンフォニア、コロス・・・・」

次の瞬間、E0は空いている手をネリネに向け、青い光球を放ちネリネに攻撃した。

「うわああああ!!」

攻撃をまともに受けてしまったネリネは床を転がりながら訓練所の壁に叩き付けられた。

「うう・・・・E0、貴方には、もう人間の意志が・・・・・・」
「コロス、コロス・・・・」

一歩一歩ネリネに迫っていくE0。彼女にはもう敵を排除する為だけの兵器と変わりなかった。ネリネは必死で体を起こそうとするが、全く力が入らない。

「うう、これ以上は・・・・」

そして遂にE0がネリネの目の前までやって来た、そして高く剣を振り上げる。

(・・・・ここまでね)

覚悟を決めたネリネ。そして次の瞬間E0が剣を振り下ろした。

(・・・・ッ!!)

ネリネは咄嗟に目を閉じた、が何も起こらない。自分はどうなったのだろう、そう思いながらゆっくり目を開くネリネ。すると、E0の騎士剣が目の前で止まっている。更にその奥には背後からエミリアの大剣で体を貫かれているE0の姿があった。E0の攻撃よりもエミリアの攻撃の方が早く助かったのだ。

「・・・・・・」

エミリアは黙って大剣を引き抜く。そしてE0はゆっくりと倒れて動かなくなった。その様子を倒れたままジッと見つめるネリネ。

「・・・・どうしてこんな事に」
「これがヘルデストロイヤーの、ゾーク達のやり方です。自分の望みの為ならば関係の無い人々をも利用する・・・・」

静かな声で言いながらエミリアはE0の近くに落ちている赤いカードのような物を拾った。カードキーの一つだ。

「許せません・・・・」
「ええ、彼女達の様な犠牲者を出さない為にも、一刻も早くこの戦いを終わらせないといけません」
「ハイ・・・・」

エミリアはネリネを壁にもたらせて応急処置を始める。戦いには勝利し、カードキーも手に入れた二人。だが、それは決して喜べる勝利ではなかった。


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