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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第115回   第百十四話 機械仕掛けの天使 No2

エミリアとネリネの前に現れた3体のE0。戦いの最中に3体の内の1体が突然の頭痛に襲われる。その直後、そのE0は喋り出したのだ。

「喋った・・・・」

突然喋り出したE0を見て驚くネリネ、エミリアも声は出さなかったが驚いている。

「・・・・貴方達がエミリアとネリネね?」
「・・・・ハイ、そうです」

E0の質問に素直に答えるエミリア。その答えを聞いたE0はゆっくりと剣を構え直した。

「悪いけど、貴方達にはここで死んでもらうわ」
「そうはいきません」

冷静に対応するエミリア。そんなエミリアを見てE0は更に闘志を燃やした。

「私達も負けられない、貴方達を倒して元の姿に戻る!」
「?」

E0の言葉を聞いたエミリアは目を細くして首を傾げた。そしてE0は残りの2体のE0と共に機械の翼を広げ、勢いよく床を蹴りエミリアとネリネに一気に近づいた。それを見たエミリアとネリネも翼を広げ、エミリアはE0達から見て右に、ネリネは左に飛んだ。

「貴方達、行きなさい!」

意志を持つE0が意志を持たない2体のE0に指示を出した。2体のE0はエミリアとネリネを追い、持っている騎士剣で斬りかかる。だがエミリアとネリネは自分の剣でその攻撃を止めた。

「ううっ!!」

宙を飛びながらネリネは剣の柄を両手で持ち、E0の攻撃を必死で止めている。聖天使人の力を持ち、更に体は機械化して身体能力は強化されているE0。いくら本物の聖天使人であるネリネでも厳しい。

「な、なんて力なの!」
「・・・・・・」

E0の力に驚いているネリネに対し、E0は無言のまま表情すら変えずに攻撃してくる。

「このー!」

ネリネはE0の無防備の腹部に蹴りを入れてほんの少しだけ距離を作り、一気にE0から離れた。

「・・・・・・」

E0は自分から離れたネリネを一瞬の隙も見せずに後を追った。蹴られた時もだったが、E0は無表情のままだ。

「速い!機械なのに何であんなに速く飛べるの!?」

自分の後ろをとんでもないスピードで飛んで来るE0を見て驚きながら逃げるネリネ。全力で飛んでいるが全く離れない。それどころか、ネリネは徐々にE0に追いつかれている。

「クッ!このままじゃ捕まってしまう、なんとかしないと!」

ネリネは逃げながら必死でE0への対処方法を考えた。だがそうしている間にもE0は少しずつ距離を詰めてきている。

「・・・・やってみるしかないわね」

ネリネは何か策を思いついたのか目を鋭くして前を見た。しかし、状況は変わらない、E0との距離はどんどん短くなっていく。そしてあと1mという所まで近づいたE0は騎士剣を構えて斬りかかろうとした。しかしその直前にネリネはグルッと円を書く様に空中で回りE0の背後を取った。

「よし!」

背後を取った瞬間にネリネは右手をE0に向け、手から青い光球を放たれ、それはE0の背中に命中。E0は飛行機が墜落するように床に叩き付けられた。落ちた場所からは灰色の煙が上がり、その様子を空中でから見下ろすネリネは小さく息を吐いた。

「フゥ・・・・これで残りは2体ね。急いでエミリア様の所へ・・・・」

ネリネがエミリアの所へ向かおうと方向を変えた次の瞬間、青い光線がネリネの目の前を通過した。

「!!」

突然の出来事に驚いたネリネは、咄嗟にE0が落ちた場所を見た。彼女の目に煙の中で左手の指を自分に向けるE0の姿が飛び込んできた。

「そんな、あれでまだ立てるなんて」

自分の攻撃をしかも直撃を受けたはずなのに、ほとんどダメージを受けていないE0を見てネリネは思わず声を出した。

「・・・・・・」

表情を変えずに黙ったままネリネを呼び指すE0。そして彼女の指から再び青い光線が放たれ、ネリネは咄嗟にそれを回避した。

「クッ!今度はシャイニングレーザー!もしかしてアイツ等、天使魔法を全て使えるの?」

ネリネはE0の周りを回る様に飛び様子を見ている。その時、E0は鉄の翼を大きく広げ、ネリネの方を向いた。

「ん?」

突然翼を広げるE0を見て首を傾げるネリネ。すると、鉄の翼が光り出した。それを見たネリネの表情は急変、「何か来る!」そう判断したネリネは急いでE0から離れようとしたが、時すでに遅し、E0の翼から無数の銀色の羽が放たれた。

「今度はレインフェザー!?」

迫ってくる銀色の羽を必死で避けるネリネ。だが全てをかわす事はできず、ネリネはE0の攻撃を幾つか受けてしまった。

「うわあああ!!」

攻撃を受けたネリネさっきのE0と同じように床に落ちた。落ちたネリネを見てE0は一歩ずつ近づいて行く。ネリネは痛む体を起こし、落ちている剣を拾いE0の方を向いた。

「うう・・・・まともに受けてしまった・・・・」

剣を杖代わりにして自分を立たせたネリネはゆっくりと剣を構える。そして自分に近づいてくるE0をジッと見て次の攻撃方法を考えていた。





離れた所ではエミリアが残りの2体のE0の相手をしていた。エミリアはE0の斬撃を大剣一本で全て止めている。2対1でエミリアの方が不利に見えるが、敵を押しているのはエミリアの方だった。

「ハッ!」

E0に大きな横斬りを放つエミリア。E0達はその斬撃を大きく後ろに跳んでかわし、少し離れた場所で止まった。

「なかなかやるわね?」

意志を持つE0がエミリアを見て言うと、エミリアも少しだけ笑って言った。

「貴方達もやりますね、誰から剣術を習ったのですか?」
「・・・・言って意味ないでしょ?」
「・・・・そうですね」

すぐに会話は終わり、再び剣を構えるエミリアとE0。その時、離れた所かネリネがエミリアの下へ飛んで来た。

「エミリア様!」
「ネリネ、大丈夫ですか?」
「ええ、なんとか・・・・」

と言ったものの、ネリネはE0の攻撃を受けて体中傷だらけだった。すると、ネリネの飛んで来た方角からもう1体のE0が飛んで来て一列に並ぶように2体のE0の近くに着地した。

「コイツ等、かなりできますよ」
「ええ・・・・」

ジッと3体のE0を見て頷くエミリア。意志を持つE0とそれを挟むように立つ意志の無い2体のE0も自分達をジッと見ていた。

「でも、どうしてロボットなのに自分の意思を持っているの・・・・」

ネリネは独り言のように呟くと、隣で大剣を構えているエミリアはE0を見たまま口を開いた。

「彼女達はロボットじゃないありません」
「え?」
「彼女達は、サイボーグです」
「サイボーグ?」

聞いたこと無い言葉に聞き返すネリネ。エミリアは視線だけをネリネに向けて説明し出した。

「ええ、人造人間とも呼ばれます」
「じんぞうにんげん?」
「彼女達は元々人間だったんです。それをヘルデストロイヤーによって改造されてしまったんでしょう、半分人間で半分機械の存在にね・・・・」
「え・・・・?」

元は人間だった。それを聞いたネリネは驚きを隠せずに声を出した。目の前にいる三人の少女、明らかに普通の人間とは違う。肌は白く、鉄の翼と聖天使人の力を持つ者。とても元が自分達と同じ人間とは思えなかったのだ。

「でも、どうしてそんな人達が・・・・」
「お喋りはそこまでよ!」

エミリアに尋ねようとしたネリネより先に意志を持つE0が割り込むように口を挟んだ。

「それ以上、話す必要はないわ、さっさと殺されなさい!」

そう言って再び剣を構えるE0達。2体のE0は表情を変えてはいないが、真ん中のE0は怒りと哀しみの混ざり合った様な表情で二人を睨んでいた。

「・・・・・・」

エミリアは黙って目を閉じ、大剣の柄を両手で持ち目の前で立てた。

「何をやっているの?」
「・・・・・・」

E0の質問に答えずエミリアは目を閉じたまま黙っている。そんな彼女を見てE0は剣の柄を強く握る。

「フン、何をするつもりか知らないけど、これで終わりよ!!」

その言葉を合図にするようにE0達は一斉にエミリアとネリネに飛び掛った。

「エミリア様!」
「・・・・・・」

慌てながらエミリアの名を叫ぶネリネ。このままではやられてしまう。そう思った直後、エミリアは目を開き、大剣を大きく振り上げた。

「光ノ滅剣(ひかりのめっけん)!!」

技の名前のような言葉を叫び、エミリアは勢いよく大剣を振り下ろした。すると、刀身から黄色い光る大きな斬撃が放たれ、E0達を呑み込んだ。

「ワァーーーーー!!」

叫びと共に3体E0は訓練所の一番奥まで飛ばされ、壁に激突した。その光景を目にしたネリネは目を丸くして驚いていた。

「ウソ・・・・・・」
「フゥ、この技を使うのは10年ぶりね」
「・・・・・・」

大剣をゆっくり下ろして息を吐くエミリアと黙ったまま驚くネリネ。そして、エミリアはゆっくりと歩きながらネリネを呼んだ。

「行きますよ」
「え?あ、ハ、ハイ!」

慌ててエミリアの後を追うように早歩きするネリネ。二人は訓練所の一番奥で倒れている3体のE0の前までやって来た。エミリアは意志を持っているE0の前まで歩いていき、ゆっくりと膝をついた。

「・・・・・・一つ訊きたい事があります」
「何?」

少し苦しそうな声を出すE0、エミリアは少しだけ表情を和らげて話を続けた。

「貴方、さっきこう言いましたね、『元の姿に戻る』と、それがヘルデストロイヤーが貴方達に出した交換条件だったのですか?」
「そうよ。私には将来を誓った人がいるの、こんな姿じゃ彼には会えない、一緒に暮らす事も・・・・。私だけじゃないわ、そこの二人も同じよ、私と同じように家族や好きな人がいるわ」

E0は自分の近くで倒れている他のE0をチラッと見ながら言った。そんな姿をジッと見るエミリアとネリネ。

「・・・・・・貴方の言うとおりよ。私達はヘルデストロイヤーに捕まって無理矢理改造されたの。人間に戻りたかったらライトシンフォニアの傭兵達を殺せってUrs(ウルス)に言われて仕方なく。私達は、ただ大切な人達の下に帰りたい・・・・・・帰りたかっただけなのよ!!」

悔しさと悲しさを訴えながら立ち上がろうとするE0。そんな彼女を見た二人は何を感じたのか、この戦いの結末はどうなってしまうのか?


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