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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第114回   第百十三話 機械仕掛けの天使

E0、ネリネの聖天使人の力を分析し、その力を得た精鋭ロボット。そしてそのロボットがエミリアとネリネの第三訓練所に居る、その事をUrs(ウルス)から聞かされたマサシとジゼルは驚きを隠せないでいた。

「聖天使人を量産だと・・・・?」
「そう、我等は最強の軍隊を手に入れたも同然なのだ!」
「クッ!」

奥歯をギリッとさせながら悔しさと怒りを表すマサシ。そんなマサシにジゼルは少し慌てる様子で語りかける。

「マサシ、早くこの事をエミリア様と姉さんに!」
「ん?あ、ああ!そうだな!」

ジゼルに言われてようやく何をするべきか思い出したマサシは腰に納めてある無線機を取り、電源を入れる。だが・・・・。

「させるか!」

Ursはそう言って目から黄色い光線を放った。その光線はマサシの手の中にある無線機に命中し粉々にした。

「うわぁ!アチチチチチ!」

無線機が粉々にする光線の破壊力と熱に驚きながらマサシは手を振って熱を冷ます。幸いマサシの手は無事だった。

「しまった!」
「マサシ、あたしのを使って!」

マサシの無線機が破壊されたのを見て咄嗟に自分の無線機を差し出すジゼル。マサシは急いでそれを受け取ろうとした、だがUrsがそれを見逃すわけが無い。

「デストロイドナックル!!」

Ursは自分の右腕をマサシとジゼルに向けて技の名前を叫ぶ。その瞬間Ursの右腕が二人に向かって飛んだ。死者の大地(デッド・グランド)で使った技と同じロケットパンチだ。

「危ない!!」
「・・・・ッ!!」

向かって来るロケットパンチに気付いたマサシはジゼルを抱きしめ大きく跳んで攻撃をかわし、二人は床に倒れた。だがその咄嗟の行動でジゼルは無線機を落してしまった。

「あ、無線機が!」

無線機は床を滑るようにUrsの足下へ向かっていき、足下で止まった。そしてUrsはその無線機を踏み砕いた。

「クソッ!」

踏み砕かれた無線機を見て悔しがるマサシ。だがすぐに冷静な表情に戻り、倒れているジゼルを起こす。

「大丈夫か?」
「う、うん・・・・」

起き上がった二人にゆっくりと近づいてくるUrs。

「これでもう連絡の手段は全て失ったな。どうする?」
「・・・・・・」

マサシは近づいてくるUrsをジッと見ながら右手で腰の黒龍刀の柄を握る。そんな中、マサシの左側に立っているジゼルが小声で語りかけてきた。

(マサシ、どうするの?)
(無線機が壊れちまった以上連絡のしようがない。コイツを倒した後に第三訓練所に向かってもその時は全て終わってる、レイナには俺から伝えるって言っちまったしな。何とかエミリア様とネリネにこの事を伝えないとマズイ・・・・)
(でも、無線機が無いのにどうやって・・・・?)
(・・・・・・)

小声で連絡方法を話し合うマサシとジゼル。表情を変えずに考えるマサシの横顔を見ているジゼルは彼の耳の穴に入っている小さな機械に気づいた。

(マサシ、その耳に入っている小さな機械は何?)
(え?)

ジゼルの言葉を聞き、マサシは左手の指を耳につける。

(・・・・ッ!これだ!)
(え?)

何かを思い出したマサシはゆっくりとその機械に触れた。すると、その機械の小さなランプが光だした。

「こちらマサシ!」
「え?」
「?」

突然喋り出したマサシを見て驚くジゼルとUrs。

「エミリア様、聞こえますか?」





第三訓練所では自分達に近づいてくる3体にE0を見ながら剣を構えるエミリアとネリネがいた。

「エミリマ様、どう攻めますか?」
「敵の情報が無い以上、迂闊に攻める事はできません・・・・」

二人が剣を構えながら警戒心をより強くする。すると、突然エミリアの耳に声が響いた。

「こちらマサシ!」
「え?」

突然聞こえてきたマサシの声に一瞬驚くエミリアだったがすぐに落ち着いた表情に戻る。そしてゆっくりと左の耳に指をつけた。

「これは非常用の小型通信機、これをマサシが使ってきたという事は、マサシの通信機が使えなくなったって事ね・・・・」

マサシの状況を想像したエミリアはそのまま指とをつけたままマサシの声を聞いた。

「エミリア様、聞こえますか?」
「・・・・・・」
「第三訓練所に居る精鋭に気をつけてください。そいつはジゼルやネリネと同じ聖天使人の力を使ってきます!」
「何ですって?」

小型通信機から聞こえてくる敵の情報を聞いた声を出すエミリア。その声を聞いたネリネは彼女の横顔を見た。

「十分気を付けて・・・・うわぁ!」

マサシの叫びを最後に通信が切れた。

「どうかしたんですか?」

ネリネがエミリアに何があったのかを尋ねる。すると、エミリアはゆっくりと左手を下ろし、ネリネに敵の情報を話し出した。





第二訓練所、マサシとジゼルはUrsから離れた所に立っていた。さっきまで二人が立っていた場所には大きな穴ができていた。恐らく、さっきのはUrsの攻撃を回避した時の驚きで声を上げて通信が切れたのだろう。

「フゥ、なんとかエミリア様に知らせる事ができた」
「貴様、いったい何をした!」
「この非常用の小型通信機でエミリア様と連絡を取ったんだ。ただ、非常用だからほんの数秒しか連絡が取れない上に送信先を選択できないからこれを持つ者全員に送信されちまうんだよ。ジゼルに言われるまでスッカリ忘れていた」
「それじゃあエミリア様と姉さんには・・・・」
「ああ、少しだが敵の情報を伝える事ができたよ」
「よかった・・・・」

エミリアとネリネに知らせる事ができた事を知りそっと胸を撫で下ろすジゼル。しかし、そんなジゼルと知らせる事に成功したマサシの顔を見たUrsは怒りの声でゆっくりと喋り出した。

「このぉ・・・・!油断も隙もないガキめぇ!」
「残念だったな?」
「おのれぇ!!」

Ursは右腕をマサシとジゼルに向けて再びデストロイドナックルを放とうとする。それを見たマサシとジゼルも刀とトンファーを取り戦闘態勢に入った。

「これで心置きなく戦えるね」
「ああ、行くぞジゼル!」
「うん!」





マサシの通信か切れた後、エミリアはネリネの敵の情報を話して戦い方を考えていた。

「か、彼女達が・・・・?」
「ええ、貴方やジゼルと同じ聖天使人の力を持っているそうよ」
「どうしてそんな・・・・・・あっ!」
「どうしたの?」
「あの時・・・・」

ネリネはコルヘルスから戻った後にロードグランでゾーク達に体を調べられた事を思い出した。

「ロードグランでゾーク達に体を調べられた事があります。もしかしたらその時に・・・・」
「・・・・その時以外に体を調べられたことは?」
「ありません」
「なら、その時以外にありませんね」

いずれにせよ、目の前にいる敵は聖天使の力を持っている強者である事に変わりはない。二人は剣を取り近づいてくる白いタクティカルスーツを身に纏う3体の少女をジッと見た。

「私が正面から攻めます。貴方はその間に背後に回って攻撃して」
「わかりました」

ネリネは目を閉じて聖天使人の力を解放した。体が赤く光った彼女の髪は銀色に変わり、背中から銀色の翼が生えた。聖天使の力が解放された事を確認したエミリアも目を閉じる。すると、彼女の背中からも翼が生えてきた。ネリネの翼とは違い純白の美しい翼だ。彼女の契約相手、妖精インシェルの翼である。

「いくわよ」
「ハイ!」

翼を広げたエミリアは床を蹴り、低空飛行で3体のE0に突っ込んだ。E0の3m手前まで来た瞬間にエミリアは大剣を大きく横に振った。すると、3体のE0はほぼ同時に騎士剣を抜き、エミリアの斬撃を止める。E0達は表情を一切変えずにエミリアの攻撃を防いでいる、だがその間はE0は動けない。エミリアが攻撃を仕掛けるのと同時にネリネも翼を広げ、高く飛び上空からE0の背後へ回り込む、ネリネは背後を取る事に成功した。

「隙あり!!」

ネリネはエミリアと同じように剣を大きく横に振った。攻撃は命中したかと思われたが、真ん中のE0がエミリアの大剣を止めている騎士剣を片手で持ったままもう片方の手をネリネの方へ向ける。その直後、ネリネとE0の前に光の結界が現れネリネの攻撃を防いだ。以前ジゼルがステルス・ヴァルキリーと戦った時に使った物と同じだ。

(アレは、エンジェリックシールド。私達(聖天使人)の使う天使魔法じゃない!アイツ等、魔法も使えるの!?)

天使魔法を使ってきたロボットを見て驚きながら心の中で呟くネリネ。それを見ていたエミリアも表情こそ変えなかったが少し驚いていた。

「てっきり聖天使人の身体能力だけ手に入れたと思っていたけれど、どうやら考えが甘すぎてみたいですね。これは全力で行かなくては!」

エミリアは攻撃を止めて、翼を広げて大きく後ろに飛んだ。

「ネリネ、離れてください!」

エミリアの声を聞き咄嗟にE0から距離を取ったネリネ。そしてエミリアはネリネが離れたのを確認してすぐに目を閉じ、契約魔法の演唱を始めた。

「闇を消し去る聖なる爆炎!エクスプロージョン!!」

エミリアは大剣を持っていたいほうの手を上げた。すると、手の上に白い大きな火球が姿を現し、エミリアはそれをE0達に投げつけた。E0は回避行動を取ろうとしたが既に遅かった。火球は3体のE0を飲み込み爆発した。

「やった!」

ネリネは旋回する様に飛んでゆっくりとエミリアの隣に着地した。

「やりましたね」
「・・・・いいえ、まだよ」
「え?」

鋭い目をしながら爆発場所を見るエミリア。ネリネもゆっくりとエミリアの視線の先を見た。爆発場所からはモクモクと白い煙が上がっており、その中で何かが動いている。そしてその何かが煙の中から出てきた。体、そして身に纏っている白いタクティカルスーツの彼方此方に焦げ後が付いているだけで大きなダメージを受けている様子はない。

「そ、そんな!あの攻撃を受けて、ほとんど無傷なんて・・・・」
「エクスプロージョンを受ける直前にさっきの結界を張ってダメージを削ったんですよ。ロボットなのになかなかできるわ」

再び大剣を構えるエミリア。それに続くようにネリネも剣を構え直した。その時。

「グ・・・・グウ・・・・アアッ!!」
「「!?」」

突然頭を押さえて苦しみ出す3体のE0。ロボットが頭痛に襲われるはずない、そう思っているエミリアとネリネ。そして、3体のE0の内、1体のE0が頭から手を離して、ゆっくりと二人を見た。そのE0の目にはさっきまでとは違い光があったのだ。

「グ、ググ・・・・・・あ、貴方達・・・・」
「え、しゃ、喋った!?」
「・・・・・・」

突然喋り出したE0に驚くネリネ。これには流石のエミリアも驚きを隠せなかった。聖天使人の力を持つロボット、E0。だが、エミリアの攻撃を受けた後に喋り出した。いったいどうなっているのか?そしてエミリアとネリネは信じ難いE0の事実を知る事になる。


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