レイナから煉獄機械兵団の情報を聞いたマサシとジゼル。しかし、分からない事もあった。HD−E0の暗号名を持つロボット、果たしてどんなロボットなのだろうか。
「E0か・・・・。なんだか嫌な予感がする」 「情報が無いんじゃ対策のたてようも無いしね」 「ああ」
考え込むマサシとジゼル。そんな時、無線機から再びレイナの声が聞こえてきた。
「私が調べられるのはこれ位だ・・・・」 「そうか。サンキュー、レイナ・・・・・・あっ」
マサシが礼を言うと、彼は何かを思い出したような顔をした。
「どうしたの?マサシ」 「肝心な事を忘れてた」 「肝心な事?」
ジゼルが首を傾げていると、マサシは無線機を口に近づけた。
「レイナ、もう一ついいか?」 「何だ?」 「実は・・・・」
真剣な顔でマサシがレイナに何かを話しだした。そして僅か数十秒後に話は終わった。
「・・・・・・分かった」 「すまないな、只でさえ疲れているのに何度も頼み事をして」 「構わない、私もその事を忘れていたからな」 「フッ、らしくないな。それじゃあ、頼むぞ、分かったら無線機で知らせてくれ。あと、この事は俺からエミリア様に伝える」 「分かった」
マサシは無線を切ってそれをしまった。そのすぐ後にジゼルが真剣な顔で問い掛けてきた。
「マサシ、さっきの話・・・・」 「ああ、情けない事にすっかり忘れてた」 「あたしも忘れてた。でも、彼等は本当に『アレ』を使うのかな?こんな大きな飛行機があるのに」 「どっちにしろ、一刻も早くブリッジを制圧してないと大変な事になる、急ごう!」 「うん!」
二人は第二訓練所へ向かって走り出した。走り出してから数分後、敵と遭遇しながらも、彼等は遂に目的地の第二訓練所に着いた。
「ここが第二訓練所」 「ここにUrs(ウルス)が・・・・」
第二訓練所の前に立つ二人は自分の武器を確認する。
「いよいよだね」 「ああ、気を引き締めていこう!」
マサシはシグザウアーを抜き、自動ドアの真横に壁にもたれ、ジゼルはメタトロンを取り反対側の壁にもたれた。
「・・・・・・」 「・・・・・・」
お互いに目で合図をし、マサシは壁に付いているパネルのスイッチを押した。その瞬間、自動ドアが開きマサシは銃を構えて自動ドアの前に躍り出た。
「・・・・・・」
マサシは一歩ずつ訓練所の中に入っていく。そこは体育館程の広さで敵の姿は無く、それを確認したマサシはジゼルに合図を出し彼女を中へ入れた。
「誰もいないね」 「ああ、それにしても、本当にここで戦うのか?」
銃を下ろしたマサシは部屋の見回した。その部屋にはランニングマシーンや鉄アレーなどのトレーニングマシーンが幾つも置いてある。
「あんな物が有っちゃ邪魔で戦えないぞ」 「それにあたし達にとって邪魔なのだから、Urs(アイツ)にとってもそれは同じはず、何のどうしてここを選んだのかしら?」 「分からない・・・・」
マサシとジゼルが考えていると、訓練所の奥から声が聞こえてきた。
「待っていたぞ」 「「!!」」
声に反応し、自分達の武器を取って構える二人。すると、奥にある大きな自動ドアが開き、中からUrsが姿を現した。
「Urs!」 「意外と遅かったな?秋円、アルフォント」 「・・・・・・」
死者の大地(デッド・グランド)での戦いを思い出し、二人は警戒心を強める。そんな事を一切気にする事無くUrsは一歩ずつ二人に近づいていく。そして二人の10m程前で立ち止まった。
「久しぶりだな、死者の大地での戦い以来だな」 「ああ、あの時の借りを返させてもらうぞ!」 「フフフ、少しは強くなったか?」 「お前もしばらく見ないうちに随分変わったな?」
マサシはそう言ってUrsのジッと見た。死者の大地で戦った時のUrsと比べて装甲の形や数が違う。マサシは最初にUrsの姿を見た時からそれに気付いた。
「レベル・5を発動したお前との戦いで俺の身体はボロボロになってしまったからな、社長が修理と同時に強化してくれたのだ。今の俺は『Urs改』と言ったところだな」 「姿はともかく名前は随分とダサいな」 「フン、大きなお世話だ」
マサシの挑発に乗る事も無くUrsは軽く受け流した。するとUrsはマサシからジゼルに視線を向けた。
「アルフォント、久しぶりだな?」 「・・・・・・」
Ursの挨拶に返事をする事無くジゼルは黙って睨んでいた。
「そんな恐い顔をするな、折角再会したんだ、もう少し嬉しそうな顔をしろ」 「アンタの前であたしは笑顔を見せるつもりはないわ」 「つれないな、聖天使人?」 「・・・・ッ!やっぱり知ってたのね」 「当然だ、俺はヘルデストロイヤーの軍事責任者だぞ?知ってて当たり前だ。勿論、お前とネリネ・クリシェールの関係もな」 「・・・・・・」 「ところで、これだけ時間が掛かったという事は俺の直属部隊に相当手こずった様だな?」 「ああ、ゴキブリみたいにウジャウジャ出てきやがってな、少し手間取っちまったよ」 「G250に手こずるようでは、それ程お前等は力を得てはいないな」 「え?」
Ursの言葉を聞いたジゼルの頭にある疑問が横切った。突然声を出したジゼルに気付いたマサシは彼女の方を向いて問い掛けた。
「ジゼル、どうした?」 「今なんて言ったの、G250に?・・・・・・マサシ、おかしいわ」 「何がだ?」 「今の言い方、まるであたし達の来た通路にはそのG250しかいない様な言い方よ」 「え?」 「だって、さっきのレイナの通信ではUrsの部隊には3種類のロボットがいるって・・・・」 「・・・・!!」
ジゼルに言われたマサシはようやく気付いた。確かにマサシとジゼルがエントランスからこの第二訓練所までの間、遭遇した敵はG250だけだった。残りのS420とE0とは遭遇していない。
「確かに変だ、兵を配置するなら1種類だけじゃなく複数の種類を配置した方が戦いやすい。1種類では攻撃パターンが読みやすくなって敵を倒しやすくなり、防衛網を簡単に突破されてしまう」 「現にあたし達はレイナの通信で情報を手に入れた後は時間が掛かっても楽に敵のロボット達を倒して来れたわ」
二人が考えていると、突然Ursが大きな鉄の手で拍手をしてきた。
「ハハハハハッ!見事だ!」 「「!?」」 「まさか部隊の情報を掴んでいたとは、感服した。お前達が情報を掴んでいなかったらうまく誤魔化せたのだがな」 「どういう事だ!」 「そうだな、俺の作戦を見抜いた褒美として教えてやろう」 「作戦?」 「そうだ、お前達の想像どおり、こちら側にはG250しか配置していない、反対側、つまりエミリアのいる方にはG250だけでなくS420も配置してある」 「何のために?」 「勿論、奴の力を少しでも削る為にだ。ネリネ・クリシェールもいる様だが、奴は問題ない」 「姉さんを甘く見ないで、姉さんもあたしと同じように聖天使人の力を使えるのよ!」 「それでも問題はない。なぜなら、向こうのカードキーを守っているのは煉獄機械兵団の中でも精鋭中の精鋭であるE0なのだからな」 「E0!?」
E0の言葉を聞いた瞬間マサシは声を上げた。
「Urs!そのE0とは何なんだ?」 「知りたいか?」 「ああ、是非!」 「フフフフ、そいつだ」
Ursはそう言ってマサシの隣に立っているジゼルを指差した。
「え、あたし?」 「ああ、そうだ」
その頃、エミリアとネリネは第三訓練所の前に立っていた。
「ここね」 「ハイ」 「ここにはUrsの言っていた精鋭部隊がいるはずです。決して油断しないでください」 「ハイ、分かっています」 「では、私が先に入りますので、貴方は私の後に続いてください」
エミリアはそう言って自動ドアの前に立った。自動ドアが開き、エミリアは瞬時に中へ侵入、すると、頭上から無数の丸い体の真ん中に目の代わりになるリニアレンズと飛行機の翼のような物を左右に付けた物体が2体下りて来た。対空用のロボット「S420」だ。それに気付いたエミリアは高くジャンプし、S420の目の前まで跳んだ。S420はエミリアをロックオンして翼についている小型ミサイルを発射しようとする。だが次の瞬間、エミリアは大剣を大きく横に振り、S420を真っ二つにした。そして空中で爆発し、床に小さな残骸が落ちる、そのすぐ後にエミリアもゆっくりと着地した。
「は、速い・・・・」
エミリアの戦いを見て改めて驚くネリネ。そして彼女はエミリアの隣まで駆け寄り、落ちた残骸を見下ろす。
「コイツ等が精鋭、なんですか?」 「違うとでしょうね、精鋭がこんなに簡単に倒されるとは思えないわ・・・・」
エミリアは残骸を見下ろして考えていると、訓練所の奥から何かが聞こえてきた。それに気付いたエミリアとネリネは剣を構えて音のする方を見た。奥からは三人の女が一列に並んで歩いてくる。見た目からジゼルと同じくらいの歳の少女達だった。だが、その三人の少女は普通ではない。
「女の子、ですよね・・・・」 「ええ、見た目は・・・・」
エミリアは鋭い視線で近づいてくる少女達を見ていた。エミリアの言うとおり、彼女達は普通じゃない、肌はまるで死んでいるかの様に白く、目にも光はない。まさに生きる屍の様な少女達。そして彼女達の腰には一本の騎士剣、更に背中にはまるで天使の様な羽が付いている。ただし、鉄でできた機械の羽だった。
(もしかして、アレが・・・・・・)
「なん・・・・だって・・・・」
第二訓練所、マサシが驚きながら声を漏らし、隣ではジゼルも驚きの顔をしていた。そんな二人に構う事無くUrsは話を続ける。
「聞こえなかったのか?E0はそこに居るアルフォントと同じ、聖天使人の力を持っているんだよ」 「そんな馬鹿な!」 「本当の事だ、ロードグランで分析したネリネ・クリシェールの聖天使人の力をデータ化し、疑似魔封石に組み込み、未完成だった人型ロボットに仕込んだのだ」 「・・・・・・つまり」 「機械でありながら奴等はこの世界の伝説の戦闘民族の力を最大限に使える。しかもデータがある限り、我々は幾らでもE0を量産できる、我々は最強の軍隊を手に入れたも同然なのだ!」
E0、それはジゼルやネリネと同じ様に聖天使人の力を手にした精鋭ロボットだった。そしてその精鋭がエミリアとネリネの前に現れた、エミリアとネリネがどうなってしまうのか!?
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