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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第112回   第百十一話 機械の狩人達

Urs(ウルス)からブリッジのカードキーのある場所が訓練所だと教えられ、カードキーを手に入れる為にマサシとジゼルは第二訓練所のある左の通路を、エミリアとネリネは第三訓練所のある右の通路を進む事になった。罠だと分かっていても、彼等は進むしかない、この戦いを終わらせる為に。

「・・・・・・」

左の通路を進むマサシとジゼル。マサシは敵がいるか通路の角から顔を出し警戒しながら進むのだった。

「・・・・よし、行こう!」
「うん!」

敵がいない事を確認したマサシはジゼルをつれて奥へと進んで行く。その時、マサシの持つ無線機から発信音が聞こえてきた。

「ハイ、こちら秋円」
「私よ」
「エミリア様ですか」
「ええ、いま何処にいるの?」
「第二訓練所に向かって進んでいる途中です」
「そう、私達は第三訓練所の見える所まで来ているわ、今敵のロボットと交戦中よ」
「え!?大丈夫ですか?」
「今のところわね、ネリネも無事よ」
「そうですか・・・・」
「ホッ・・・・」

無線機の声を聞き安心するマサシとジゼル。その時エミリアが少し低い声を出した。

「こっちにロボットが居るという事はそっちでも交戦する可能性もあるわ、気を付けて」
「ハイ、分かりました」
「それじゃあ切るわよ?気を付けて」
「ハイ!」

マサシの返事の後に無線が切れ、マサシは無線機を戻した。すると、前の方から何やら機械音のような音が聞こえ、マサシとジゼルは咄嗟に来た道に戻り身を隠した。すると、進行方向からさっきと同型のロボットが2体、曲り角から姿を見せる。幸い隠れるのが早かった為見つからずに済んだ。

「攻撃してこないね」
「どうやら俺達の姿を確認できなかったみたいだな」
「これからどうする?」
「このままじゃいずれ見つかる、だったら見つかる前にこっちから仕掛けるしかない」

そう言ってマサシは目を閉じて小声で契約魔法の演唱を始めた。演唱を終えたマサシは目を開き通路へ飛び出してロボットの方を向いた。

「業火よ、我に仇名す敵を焼き尽くせ!フレイムショット!!」

マサシは右手をロボットに向け、手に平から火球を放った。マサシに気付いた2体のロボットはマサシに向かってチェインガンを向けるがすでに遅かった。火球は1体に命中し爆発、もう1体もその爆発に巻き込まれ誘爆した。

「やった!」

ロボットの破壊を確認したジゼルも通路に出てマサシの隣にやって来た。そして粉々になっているロボットをジッと見る。

「・・・・こんなのがまだ沢山いるのかな?」
「多分な、この階が最も重要な階だ、一番守りが固いだろうし・・・・」
「だよね。せめてコイツ等の情報さえあれば・・・・」
「情報か・・・・・・」

ジゼルの言葉を聞き俯いて考え込むマサシ。そして何かに気付いたのかハッと顔を上げた。

「そうだ!どうしてこんな簡単な事に気付かなかったんだ。ジゼル、助かったぜ!」」
「え、何が?」
「情報だよ!」
「情報?」
「ああ!」

マサシは再び無線機を取り、無数の小さなボタンを素早く押した。

「・・・・・・通じてくれ」

無線機を耳に近づけ、しばらくジッとしていると無線機から声が聞こえてきた。

「私だ・・・・」

無線機から聞こえてきたのはレイナの声だった。

「レイナか、俺だ、マサシだ」
「どうした?」
「今何処にいる?」
「管制室だ、リーズとゴードンが待ち伏せしていてな、さっきまでユウタと一緒に戦っていたのだ・・・・」
「そうか。その様子だと無事なようだな?」
「無事、だと言えばウソになるな。勝ちはしたが、私もユウタも重傷だ」
「ハハハッ!命があるだけでもめっけ物だろう?」
「フッ、そうだな・・・・。それで、いったいどうしたのだ?わざわざ私達の安否を確認する為だけに無線をしてきた訳ではあるまい?」
「まあな、今は動けるか?」
「ああ、重傷ではあるが動けないわけではない」
「ならその管制室で調べてほしい事があるんだ」
「何だ?」
「実は・・・・・・」

マサシは無線機でUrsの直属部隊の事、自分達の居場所の事をレイナに話した。しばらくしてマサシの説明が終わり無線機からレイナの声が聞こえてきた。

「成る程、つまりここのコンピュータにハッキングしてUrsの直属部隊のロボットの情報を調べてほしいと言うわけか」
「ああ、できるか?」
「大した事ではない・・・・」
「じゃあ頼む」
「ああ・・・・」
「調べ終わったらお前達もすぐそこから離れろ、すぐに敵の増援が来るはずだ。今のお前達じゃ一般の敵兵ともまともに戦えないだろう?」
「悔しいがその通りだ。分かった、できるだけ早く移動する。コンタとシオンにも伝えておく」
「頼んだぞ?」
「任せろ。じゃあ切るぞ?」
「ああ」

無線機の向こうから通信の切れる音が聞こえ、マサシはゆっくりと無線を戻した。

「レイナ?」
「ああ、管制室からコンピュータにハッキングしてロボット達の情報を調べてもらうよう頼んだんだ」
「じゃあ、さっきの情報ってこういう事だったの?」
「ああ、ジゼルのおかげだ、サンキュ」
「う、ううん。あ、あたしは別にそんな・・・・」

少し頬を赤く染めて謙遜(けんそん)するジゼル。そんな彼女の顔を小さく笑って見つめるマサシ。

「よし、レイナから連絡が来るまでの間、俺達だけで何とかするぞ!」
「うん!」

二人はロボットの残骸をまたいで先へ進み第二訓練所へ向かった。




その頃、右の通路を進んだエミリアとネリネは第三訓練所ヘ向かって進んでいた。彼女達の通ってきた通路にはロボットも残骸が幾つも転がっている。

「フゥ、意外と時間が掛かったわね」
「は、はぁ・・・・」
「ん、どうしたの?」
「い、いえ、凄いなぁと思いまして」
「何を?」
「エミリア様ですよ。敵のロボット達はあんなにアッサリと倒しちゃうんですから・・・・」

どうやらさっきまでエミリアが一人でロボット達と戦っていたようだ。そしてネリネはそれを見て驚いていたのだろう。

「フフフフ、そんなに驚く事でもないでしょ?」
「い、いえ、驚きますよ。だって・・・・」

ネリネが話していると前の方から機械音が聞こえてきた。

「お喋りはそこまでよ」
「え?」
「どうやら敵の増援が来たみたい」
「え、こんな短時間で!?」
「敵もそれだけ私達を消したいって事よ」
「マサシとジゼルは大丈夫かしら・・・・」
「あの二人なら心配ないわよ。さっきもジゼルが言ってたでしょう?『あたしを信じて』って」
「・・・・そうでした」
「フフ。それじゃあ、行くわよ?」
「ハイ!」

エミリアの言葉で驚きから戦いの表情へ変わったネリネ。エミリアとネリネは敵の攻撃に備えて剣を構えた。





同時刻、マサシとジゼルは順調に先へ進んでいた。彼等もここまで多くのロボットを倒してきたようだ、通路には残骸が転がっている。

「まったく、いったい何体いるんだ?」

マサシは目の前で動かなくなったロボットを見て頭をかきながら言った。マサシの後ろには彼に背中を向けたジゼルがいる。

「さっき見た壁のプレートに『第二訓練所』って書いてあったんだよね」
「ああ」
「だったらそれだけ警備が硬くなってるって事でしょ?敵の数が多くても不思議はないわ」
「それは分かってるけど・・・・これだけ倒せば敵の戦力が尽きてもおかしくないだろう」

二人が話しているとマサシの無線機から発信音が聞こえてきた。

「こちら秋円」
「私だ・・・・」

無線機から聞こえてきたのはレイナの声だった。

「レイナか、どうだった?」
「コンピュータ内の兵器ファイルに侵入したところだ」
「流石だな。それで?」
「Urs直属部隊の情報も有ったぞ。部隊名は煉獄機械兵団、全てのロボットにマイクロチップが仕込まれていて、それを使って遠隔操作しているのだろう」
「成る程な・・・・」
「ロボットは3種類まで作られている。陸戦用の『HD−G250』。下半身が足ではなくキャタピラになっていて両腕にチェインガンを装備しているロボットだ」
「そいつならさっきまで戦っていたよ。もう数え切れない程にな」

マサシが疲れきった声で言うとレイナは関心が無いように話を続ける。

「話を続けるぞ・・・・」
「おい、ツッコムか何かしろよ・・・・」
「ツッコミはユウタの仕事だ」
「あっそ・・・・」
(相変わらずクールだね・・・・)

レイナの声を聞いて改めて彼女の性格を知り、苦笑いをするジゼル。

「次は空中戦用の『HD−S420』だ。丸い体の真ん中に大きなリニアレンズが付いていて左右に翼が付いているのが特徴だ」
「対空用か、最後の1種類は何だ?」
「それが、よく分からないのだ」

レイナの言葉を聞きマサシとジゼルはお互いの顔を見て首を傾げる。

「兵器ファイルの隈なく探したが、最後の1種類の情報が何処にもない。と言っても暗号名だけは有ったがな」
「暗号名?」
「ああ、『HD−E0』だ」
「イーゼロ?」

あまりのにもシンプルな暗号名に声を出すジゼル。

「ああ、それ以外は何も無い。ロボットの画像さえもな・・・・」
「そうか・・・・」
「いったい何なのかしら・・・・」
「さぁな・・・・」

ようやく煉獄機械兵団の情報を掴んだマサシとジゼル。だが、彼等はまだ知らなかった。HD−E0、このロボットが彼等にとって予想もしていないほどの脅威になる事を・・・・。


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