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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第111回   第百十話 Urs(ウルス)の招待状

煉獄機械兵団の奇襲を受けながらも先へと進むマサシ達。しかし、彼等はその奇襲が自分達を何処かへ誘導する為の攻撃だと気付き警戒を強めるのだった。

「・・・・・・ここは」

T字路から先へ進んだマサシ達はエントランスの様は広い部屋へたどり着いた。そこには幾つもの自動ドアがあり、真ん中には太い柱が4本立っているだけの部屋だった。

「何、この部屋は?」

狭い通路から広い部屋に入り、少し驚きの表情をするジゼルは辺りを見回した。

「幾つもの自動ドアがあるから、多分ここからいろんな所へ繋がってるんだろう。つまり、ここがこの階の中央と考えて間違いないな」

ジゼルの隣で部屋の事を考え口にするマサシ。そんな時、マサシが部屋の一番奥にある大きな自動ドアを見つけた。

「アレは・・・・」

マサシは辺りを警戒しながら奥にあるドアへ近づく。そしてドアの手前で立ち止まりドアの上を見た。すると、彼の目に「ブリッジ」とカタカナで書かれてあるプレートを見つけた。

「見つけた!エミリア様、ここがブリッジです!」
「え?」

マサシの言葉を聞いたエミリアは同じように辺りを警戒しながら早歩きでマサシの下へ向かった。

「確かに・・・・」

マサシがエミリアの隣でプレートを見上げていると、ジゼルがマサシの肩を突付いた。

「マサシ」
「ん、どうした?」
「コレは何?」

ジゼルはドアの左側の壁についている小さな装置を指差しマサシに尋ねる。その装置を見たマサシは鋭い目をしながら口を開いた。

「コレはカードリーダーか」
「カードリーダーって?」
「カードキーっていうカード状の鍵を使って鍵を開ける装置さ。ほら、ここに何か薄い物を挟めるくらいの細長い穴があるだろう?」

マサシはその装置の端についている細長い穴を指差してジゼルに分かりやすく説明した。

「この穴は?」
「ここにカードを挟んで勢い良く下ろすんだ」
「つまり、この機械がこのドアの鍵をかけているって事?」
「まぁ、そう言う事だ」

マサシの説明が終わるのと同時に、反対側の方からネリネの声が聞こえてきた。

「マサシ、貴方の言うそのカードリーダーっていう機械がこっちにもあるわよ」
「え?」

どうやらネリネもマサシの説明を聞いていたようだ、ネリネの声を聞き反対側を見ると、確かに右側の壁にもう一つカードリーダーが付いている。つまり、ブリッジのドアを挟んで二つのカードーリーダーが取り付けられているのだ。

「こっちのもカードリーダー・・・・」

二つのカードリーダーを見てマサシはしばらく考え、そして一つの答えにたどり着いた。

「このドアにはロックが掛かっていて、解除するには二つのカードキーがいるって事か・・・・」
「そうみたいね」

マサシに同意するようにエミリアも頷く。

「でも、どうしてあのロボット達は俺達をわざわざブリッジへ繋がる部屋まで誘導したんでしょうか・・・・」
「想像だけど、誘導したのはロボット(彼等)じゃないわ。そして彼等には私達をここへ誘導するだけの意志は無い」
「なぜ?」
「あのロボット達、シャッターが閉まった後もそのまま攻撃し続けてきたでしょ?あれではまるで『敵を見つけたら攻撃しろ』と予め司令されていた様なもの、もし彼等に意志があるのならシャッターが閉まったら攻撃しても無駄だから攻撃を止めるはずよ。でも彼等はシャッター越しで攻撃し続けた」

エミリアの顔を見ながら彼女の説明を聞くマサシ。ジゼルやネリネ、他の傭兵達もエミリアの方を見て話を聞いていた。

「つまり・・・・」
「彼等は敵を見つけたら攻撃しろとだけ命令されていた。恐らく誰かが離れた所で彼等を遠隔操作して私達をここへ誘導したんでしょうね」
「そのとおりだ」
「「「!!」」」

何処からか聞こえてくる男の声にマサシ達は驚いて辺りを見回した。しかし、部屋にはマサシ達以外には誰もいない。

「何処から声が!?」
「あ、マサシ、アレ!」

ジゼルが指差した方を見るマサシ。そこにはスピーカーと小さな監視カメラが取り付けられていた。

「やっと気付いたか」
「その声は、Urs(ウルス)か!?」
「久しぶりだな、秋円。俺が付けた傷はもう治ったか?」
「それはこっちの台詞だ」
「ああ、俺はもう完治したよ」

死者の大地(デッド・グランド)での戦いを思い出して話し合うマサシとUrs。マサシの隣ではジゼルがマサシと一緒に監視カメラを睨んでいる。

「ほぅ、お前はジゼル・アルフォント、だったな。元気だったか?」
「・・・・・・」

Ursの声が聞こえてくるスピーカーを黙ったまま、一瞬だけ見て再びカメラの方を向くジゼル。

「何の用だ?わざわざ俺達をここまで誘導したんだ、それなりに用があるんだろう?」
「フフフフ、勿論だ。お前達の会話は全て聞かせてもらった、お前達の想像どおり、あのロボット達を操りここまで誘導したのは俺だ」
「やっぱりな・・・・」
「それで、何の為に私達をここへ連れてきたのですか?」

マサシの言葉を引き継ぐようにエミリアが監視カメラを見てUrsに尋ねる。

「なに、そろそろアンタ達と決着をつけようと思ってな。最高のリングを用意した」
「生憎だが、俺達はお前と戦っている暇は無い!このままブリッジを制圧させてもらうぜ!」

そう言ってマサシは黒龍刀を構えて自動ドアを破壊しようとした。すると、スピーカーから笑い声と共にUrsの声が聞こえた。

「ハハハッ!止めておけ、そのドアはアストラル超合金で出来ている上に特殊な加工が施してある。たとえ契約者の力をぶつけても破壊する事はできないぞ」
「なに?」

Ursの言葉を聞いて再び監視カメラを睨むマサシ。

「という事はここを開けるにはやっぱりカードキーがいるって事?」
「そのとおりだ」

ジゼルの質問に素直に答えるUrs。更に続けてUrsは話し出した。

「お前の居るそのエントランスには八つのドアがあるだろう。そのドアはこの7階の各部屋へ通じている、お前達の左右にあるドアの先の部屋にカードキーがある。」

マサシ達はブリッジのすぐ近くの左右にあるドアを見て確認した。

「右のドアの先にある第三訓練所に1枚、その鍵は俺の直属部隊の精鋭が守っている。そして・・・・」
「もう1枚はお前って訳か」

監視カメラを見ながらUrsの代わりに答えるマサシ。

「その通り。俺は左のドアの先にある第二訓練所で待っている」
「どうして俺達にそんな事を教える?」
「言っただろう?お前達と決着をつける為だと」
「・・・・・・」
「では、頑張ってくれ」

その言葉を最後にスピーカーからUrsの声が止まった。マサシはエミリアの方を向き直して尋ねる。

「どうしましょう?」
「彼の言うとおりこのドアが契約者の力でも破壊できないのであれば、カードキーを手に入れるしかないでしょうね」
「それじゃあ・・・・」
「ええ、彼の招待を受けるしかないわ」
「「「・・・・・・」」」

エミリアの答えを聞いたマサシ、ジゼル、ネリネは黙ったままエミリアの顔をジッと見た。

「二手に分かれてカードキーを手に入れましょう」
「「「ハイ!」」」

声を揃えて頷き、返事をする三人。すると、そのすぐ後にマサシが進言してきた。

「エミリア様、左のドアへは俺に行かせてくれませんか?」
「え?」
「左のドアの先にある第二訓練所ではUrsが待っています。アイツの所には俺に行かせてください。もう一度アイツと戦いたいんです」
「あたしも行きます」

マサシに続いてジゼルも進言し、意外に思うエミリア。

「あたしも、アイツと戦いたいんです、もう一度・・・・」

マサシ達が一度ラビリアンから戻ってきた時に死者の大地でUrsに敗れた事を聞いた事を思い出したエミリア。彼女は既に確信していた、二人はリベンジ死体のだと。しばらく黙って考えたエミリアはゆっくりと口を開いた。

「分かったわ、Ursは貴方達に任せます」
「ありがとうございます」

エミリアに頭を下げながら礼を言うマサシ。その時、今まで黙っていたネリネが口を開いた。

「エミリア様、私も行ってはいけませんか?」
「姉さん?」

突然同行を求めてきたネリネを見て、少し驚くジゼル達。すると、エミリアは真剣な表情で、だがほんの少し優しい声でネリネに言った。

「いいえ、貴方は私と一緒に来てください。ここは二人に任せましょう」
「で、でも・・・・」
「ジゼルの事が心配なのは分かるわ。でも、彼女は傭兵であり、貴方と同じ聖天使人の末裔でもあるわ。私はジゼルの力を信じていますから」
「エミリア様・・・・」

ジゼルを信じる、微笑みながら言うエミリアの言葉がネリネの心に響いた。そしてジゼルが笑いながらネリネの手を取った。

「大丈夫だよ姉さん。あたしも少しずつだけ強くなってるもん。少しはあたしを信じて、ね?」

ウインクしながら言うジゼルを見て苦笑いしながらネリネを口を開く。

「分かったわ、本当は少し不安だけど、貴方を信じるわ」
「ブ〜、何よそれぇ・・・・」
「フフフフ」

頬を膨らますジゼルを見て小さく笑うネリネ。だがすぐに真剣な表情に戻る。

「ジゼル、頑張ってね」
「うん、姉さんも」

お互いに短く抱き合い無事を祈り合うジゼルをネリネ。それを見たエミリアは傭兵達の方を見た。

「私達はカードキーを手に入れる為に敵の待つ訓練所に向かいます。貴方達はこの場を確保していてください!」
「「「ハイ!」」」

エミリアの命を受け敬礼をしながら返事をする傭兵達。マサシとジゼル、そしてエミリアとネリネはもう一度お互いの無事を祈るように目で合図をし、自動ドアを潜り訓練所へ向かって走り出した。


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