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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第109回   第百八話 想いを力に変えて

遂に自然の四塔(フォースド・ガイア)を全員倒した神竜隊。だが誰もその戦いの勝利を素直に喜べなかった、だが彼等の戦いはそれだけでは終わらない、まだ社長のゾークとUrs(ウルス)と言う強者が残っている。彼等を倒した時こそ、ライトシンフォニアは本当の意味で勝利するのだ。

「もうすぐだな」
「うん、急がないと!」

ベンヌの階段を駆け上がりながら話をするマサシとジゼル。今マサシ達はゾークが居ると思われるブリッジへ向かっている。

「確かブリッジは最上階の7階にあるってさっき見たプレートに書いてあったな!」
「ええ、でも・・・・」
「ん?」

階段を駆けながら自分の後ろにいるジゼルの方を見るマサシ。よく見ると彼女は呼吸が乱れている、相当疲れているようだ。

「ハァハァ・・・・ちょ、ちょっと休ませて・・・・」
「何言ってるんだ、早くしないと敵に見つかっちまうぞ?」
「で、でも・・・・もう4階も休まずに昇ってるんだよ?流石に疲れたよ〜」

情けない声を出しながら訴えるジゼル。それを見て小さな溜め息をつくマサシ、そしてジゼルの後ろには恥ずかしそうな顔をするネリネとそんな彼女を見てクスクス笑うエミリア。その後ろではライトシンフォニアの傭兵達が見ていた。

「お前傭兵なんだろ?これ位で疲れてどうするんだ?」
「そ、そんな事言っても、大体エレベーターがあるのにどうして使わないの?」

エレベーターに乗らずに階段で上へ昇る事にどうしても納得できないジゼルはマサシに尋ねる。すると、ジゼルの後ろに居たエミリアがジゼルに語り変えた。

「エレベーターに乗ってしまうとどの階に行くか敵にも分かってしまうから、敵が待ち伏せする可能性があるの。それにもし止められたらそこに閉じ込められてしまうからよ」
「あ、そっか・・・・」

エミリアの説明に納得したように頷くジゼル。

「さあ、頑張りましょう。目的の7階に着いたら少し休憩を取ることにするから。ね?」
「ハ、ハイ・・・・」

自分に手を伸ばすエミリアの顔を見て少しだけ元気になったジゼル。それを見たマサシとネリネも少し笑った顔を見せる。そして彼等は再び階段を駆け上がった。





その頃、ベンヌのブリッジではゾークが椅子に座りながら腕を組んで大型モニターに映る映像を見ていた。モニターにはベンヌの各場所に設置してある監視カメラの映像が映っていた。その中には格納庫と管制室の映像も映っている。

「・・・・・・」

黙ってモニターを見るゾーク。モニターには倒れて動かなくなった自然の四塔の四人と神竜隊の四人が映っている。

「自然の四塔が全滅するとは・・・・」

低い声で自然の四塔の全滅を口にするゾークその声は低く、怒りが混ざっているような感じがした。

「フン!役に立たん者達だ・・・・」

仲間が死んだにも拘らず悲しみを見せるどころか怒りを口にするゾーク。彼はモニターの映像を切り、椅子についている電話の受話器のような物を取り何処かに連絡を取り始めた。しばらくして受話器の向こうから男の声が聞こえてきた。

「こちらUrs、どうしました社長?」

声の主はUrsだった。Ursの声を聞いたゾークは低い声のまま話を始めた。

「自然の四塔が全滅した」
「・・・・さきほど部下から連絡が」
「そうか・・・・」
「あんなガキどもすら止められないようでは、所詮奴等もこの程度と言うわけですな」

ゾークと同じように仲間が死んでも蝿が死んだ程度にしか感じない様な言い方をするUrs。そんな彼の言葉をサラリと流してゾークは会話を続ける。

「だからこそ、こうやってお前に連絡を入れたのだ」
「ハッ!」
「いよいよお前とお前の直属部隊の出番だ、直属部隊全戦力を使って奴等を叩きのめせ!」
「承知!」

その言葉を最後に受話器の向こうでブツンと言う音が聞こえ、電話が切れた事を確認したゾークはゆっくりと受話器を戻した。

「いよいよUrs達『煉獄機械兵団』の出番か・・・・」

煉獄機械兵団、恐らくゾークの言っていたUrs直属部隊だろう、一体どんな部隊でそれほどの戦力なのだろうか・・・・。





一方、マサシ達は最上階の7階に到着し休憩を取っていた。床に座り込み武器の確認や残弾数を調べている。その内の数人は敵が来ないかどうか見張りに付いている。

「調子はどうだ?」
「少し落ち着いた」
「そうか」

座り込んで休んでいるジゼルの隣にやって来て同じように座り込むマサシ。

「それにしても、お前以外と体力無いのな?」
「なによ、あたしは女の子なのよ?」
「それ以前にお前は傭兵だろ?それに聖天使人の血だって流れてるんだ」
「確かにそうだけど、あたし達はあなた達契約者と違って普通の人間に近いんだから」
「そんなもんかねぇ・・・・」
「そんなもんなの!」

少し頬を膨らせて訴えるジゼルと見て少し笑いながら受け答えをするマサシ。

「・・・・・・」
「どうしたの?」

さっきまでの気の抜けるような顔から急に真剣な表情で天井を見つめるマサシを見てジゼルが尋ねる。

「この戦いで俺達が勝てば全て終わる」
「うん、そうだね」
「そしたらライトシンフォニア(俺達)も必要なくなる」
「え?」

引っ掛かる言葉を聞きマサシに聞き返すジゼル。

「それって・・・・」
「ああ、元の世界に戻るだろうか・・・・」
「・・・・・・そう」

ライトシンフォニアが元の世界に戻る、そう理解したジゼルの顔から明るさが消えた。そして恐る恐るマサシに尋ねる。

「貴方も・・・・?」
「ん?」
「貴方も帰るの?」
「俺?」

目だけを動かしてジゼルを見るマサシ。ジゼルが悲しそうな瞳で自分を見てくる。マサシは彼女の気持ちに既に気付いていたのだ。そして、彼は正直に自分の気持ちを伝えた。

「俺はラビリアン(こっち)に残るつもりだよ」
「え?」

自分の予想と違った答えに驚きと喜びを感じるジゼル。

「ど、どうして?」
「どうしてって、俺にはこっちに残らなくちゃいけない理由があるからさ」
「何なの、その理由って?」
「・・・・・・お前だよ」
「え、あたし?」
「・・・・惚れた女を残してどっかに行っちまうほど俺は冷たい男じゃないよ」
「・・・・・・ッ!」

惚れた女、その言葉を聞いて頬を赤くして驚くジゼル。

「ジゼル・・・・」
「ハ、ハイ!」
「この戦いが終わったら・・・・」
「う、うん・・・・」
「俺と・・・・」
「う・・・・うん・・・・」

真剣な表情で自分の見るマサシ、そしてみるみる顔を赤くしているジゼル。いい雰囲気になって来た、その時。

「さて、休憩はここまでだな」
「ガッ!!」

真剣な表情から一気に元のチャランポランな顔に戻ってしまったマサシを見てその場に肩をガクリと落すジゼル。

「ちょちょちょ!ちょっと待ってよ!何なのその終わり方!?」
「休憩時間の15分が過ぎたんだよ」

立ち上がり武器を装備し直すマサシ。しかしジゼルは話の終わり方に納得が出来なかった。

「ま、待ってよ!」
「続きはこの戦いが終わってからな」
「んも〜!!」

再び頬を膨らませるジゼル。そんな二人のやり取りを少し離れた所で見ているエミリアとネリネ。

「少しだけ元気が出たみたいね、ジゼル」
「え?どういう事ですか?」

エミリアの言葉を聞いて問い掛けるネリネ。

「さっきの階段の昇りで疲れが出ていた彼女をマサシなりに疲れを解してあげたんでしょう」
「あれで、ですか?」
「疲れは疲れでも精神的な疲労だけどね」
「精神的?」
「人間は体の疲れだったら休んでいれば治るけど、心の疲れは休んでいても簡単には治らないわ。だからあんな風に別の話をして少しでも彼女の心を疲れから遠ざけてあげたんでしょう」
「成る程・・・・」

エミリアの話を聞いて頷きながら納得するネリネ。すると、エミリアが少しからかうような笑いをしながらネリネに話しかけて来た。

「フフフフ、少し羨ましいのではないですか?」
「え、何がですか?」
「妹に先を越されてしまった事」
「先って・・・・・・あっ!」

エミリアの言いたい事を察したネリネは少し頬を赤くし目を閉じた。

「べ、別にそんな風には・・・・」
「フフフ、そうですか?」

そんな風にやり取りをしながら準備を進めるエミリアとネリネ。彼女達も少しだけ疲れを癒せたようだ。





同時刻、一つの細長い部屋、部屋の中は暗くてどんな風になってるのか分からない。その細い部屋の真ん中をゆっくりと歩くUrs。

「遂にお前達の出番だ」

そう言って左腕に付いている無数のスイッチを押し出した。すると部屋の照明が付き、部屋が一瞬で明るくなった。部屋の中には数え切れない程のロボットが並んでいた。下半身部分にキャタピラが付いており腕の部分にはチェインガンが2丁、肩にはマイクロ弾発射機構が装備されていた。そして全てのロボットに顔のリニアレンズの様な物が光だし、全てのロボットが起動し出した。

「さあ、お前達、地獄の宴を始めるぞ!煉獄機械兵団、出撃!!」

自然の四塔を倒し敵の戦力を大幅に削り少しだけ余裕が出来たライトシンフォニア。しかしそれも束の間、ヘルデストロイヤー軍事総責任者のUrsが直属部隊、煉獄機械兵団を率いて牙を向ける。


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