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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第106回   第百五話 組織の掟 傭兵の忠義

リーズとの戦いに勝利したレイナ。これで三人目の自然の四塔(フォースド・ガイア)を倒した、だがまだユウタとゴードンの戦いが残っている。ユウタはかつての自分の教官であるゴードンと会話を始め、過去を思い出した。

「よう、久しぶりだなユウタ。元気だったか?」

三階建てのビルで人質を取って立て篭もった銀行強盗団を逮捕する為にオフィスに潜入した幼いユウタ。そこで彼は死んだと思われていたゴードンと再会するのだった。

「きょ、教官・・・どうして?」
「説明は後だ、まずはコイツ等を片付けるぞ」

そう言ってゴードンはトンプソンを持つ強盗達を見た。彼等は突然入室して来たゴードンを見て少し焦りを見せた。

「な、何なんだテメェは!?」
「お前等に名乗る名前は無いな」
「チッ!カッコつけてるんじゃねぇ!」

一人の強盗がゴードンに向かってトンプソンを発砲した。無数の弾丸がゴードンに向かっていく、だがゴードンは回避行動を取ろうとはしなかった。そして弾丸は全てゴードンの体に命中した。それを見た人質達は叫び声を上げ、ユウタも固まってしまった。

「教官!!」
「ハハハァ!あっけなかったなぁ!」

強盗団のリーダーが笑いながらゴードンを見ていると、ある事に気付き表情を変えた。実はゴードンは銃撃を受けたはずなのに倒れる事無くその場に立ったままだったのだ。

「な、なぜ倒れねぇ・・・・?」

驚きながら自分のトンプソンをゴードンに向けるリーダー。その時、顔を下げていたゴードンがゆっくりと顔を上げる。

「俺に銃は効かんぞ」

そう言うゴードンの体を見る周りの人間達。よく見ると、ゴードンに向かって放たれた弾丸は全て凍りついており、ゴードンの体に当たる事無く床に落ちた。それを見て驚く強盗団と人質達、だがユウタだけは驚いていなかった。彼は知っていたのだ、あれはゴードンの契約者としての力だと。

「ヒ、ヒィ!な、何だ、テメェの体は、化け物め!!」

6人の強盗は一斉に自分達の持っているトンプソンを発砲、全ての弾丸がゴードンに命中、したかと思われたが全て凍りついて足元に落ちた。勿論ゴードンは無傷だ。

(無駄だよ、あれは教官の契約者としての力だ。教官の契約相手は妖精種の『ジャックフロスト』、氷と雪を司る妖精で、辺りの者を瞬時に凍り付けにする事ができるんだ、銃なんかじゃ傷をつける事さえできない・・・・)

心の中で呟くユウタはゴードンをジッと見ていた。いまだに発砲し続けている強盗団の顔から次第に余裕が無くなって来た。ゴードンは勿論、幼いユウタにもそれが分かる。そして遂に弾が切れて銃撃が止まった。そしてゴードンの足元には大量の凍った弾丸が落ちている。

「何だ、もうおしまいか?」
「ど、どうなってるんだ!?」
「そっちの攻撃は終わりか?だったら今度はこっちから行くぞ」

そう言ってゴードンは床を蹴り強盗のリーダーの目の前まで一気に距離を詰めた。

「は、速い!」
「いや、お前等が遅いんだよ」

ゴードンはリーダーのトンプソンを握っている手を取り強く握る。すると、ゴードン握っている所から徐々に凍り出した。

「ヒッ!お、俺の腕がぁ・・・・!」
「まず一人」

腕から徐々に凍っていき、最後にはリーダーの体を完全に凍結させた。それを見た他の強盗達は驚き1歩下がる、人質達も驚いて固まっていた。

「この程度か、全く、人を化け物呼ばわりしたくせになんと手応えの無い連中だ」

そう言ってゴードンは完全に凍りついたリーダーに向かってパンチを放つ、そしてパンチが当たった瞬間に凍り付けになっていたリーダーは人の形から無数の氷の欠片へと砕け散った。それを見た強盗達は叫び声を上げながら一斉にオフィスから逃げ出した。

「逃がさん」

逃げる強盗達を見てゴードンはその後を追った。ゴードンが部屋を出たのを確認したユウタは人質達の下へ駆け寄り持っていたサバイバルナイフで彼等を縛っているロープを切った。

「大丈夫ですか?」
「あ、ああ、ありがとう・・・・」

人質が無事なのを確認したユウタは無線機を取り出し外で待機している警官隊と連絡を取った。

「こちら、ライトシンフォニアの金山です。人質を全員無事です。犯人達は逃走しました、恐らく外に逃げたと思われます、出入口を全て包囲してください!」
「了解した、直ちに機動隊を向かわせる」

そう言って無線が切れたのを確認したユウタは無線機をしまい、立ち上がった。

「もうすぐ警察の人達がやってきます、もう大丈夫ですよ」

そんも言葉を聞いた人質達の顔に安心と喜びの表情が出てきた、それを見たユウタも少しだけ安心した。





数十分後、強盗団が立て篭もっていたオフィスに数人の警官と救急隊の人の姿があった。だがユウタの姿は無かった。警官隊が来てすぐにユウタはオフィスを出て行ったのだ。

「ハァハァハァ・・・・!」

廊下を全力で走るユウタ。彼は警官隊からある情報を聞きある場所へ向かっていたのだ。実は数十分前、機動隊が突入した直後、オフィスへ続く廊下に大量の氷が落ちていたのだ、しかもその氷の中には人間の腕の形をした物も有ったと。そして逃走したはずの強盗団の姿が何処にもないと。

「間違いない、ゴードン教官にやられた強盗達だ!」

確信したユウタは更に走る速度を速めた。そして彼は目的の場所の着いて、そこは粉々に砕け散った強盗団の氷が落ちている廊下だ。

「これか・・・・」

廊下の真ん中に山のようになっている氷、そして彼方此方に散らばっている欠片、その幾つかは既に溶けていた。

「間違いない、アイツ等だ・・・・」

ユウタは変わり果てた強盗達を見て少しだけ哀れみ感じた。そして、近くにある階段を見つけた。

「多分、教官は・・・・上だ・・・・!」

ユウタは急いで階段を駆け上がり、上へと向かった。そしてユウタは屋上へ着き、屋上の扉を勢いよく開けた。そして真ん中にはゴードンが腕を組んで立っていた。

「教官!」
「遅かったなユウタ?」

ゴードンはゆっくりと振り返りニッと笑ってユウタの顔を見た。

「さっきの質問をもう一度します、どうしてあなたは生きているんですか?一年前の任務で死んだはずです?」
「確かにな。実はな、あの任務で負傷して死に近づいた、そこをヘルデストロイヤーの社長に助けられたんだ」
「え・・・・?」

ゴードンの口から聞いた予想外の言葉、ヘルデストロイヤーに助けられた。そしてユウタは1つの答えにたどり着いた。

「もしかして、貴方は・・・・」
「ああ、今はヘルデストロイヤーに身を置いている。助けられた恩を返す為にな」
「・・・・・・」

親同然に自分を育ててくれた教官が、今自分の組織と敵対している組織にいる、それを聞いたユウタは目を丸くして黙り込んだ。

「俺が今回ここに来たのはお前がこの任務に参加すると言う情報を掴んでな、挨拶をするために来たんだ」
「・・・・・・あの強盗達は?」
「ん?」
「ライトシンフォニアには『無抵抗な相手は殺してはならない』と言う鉄の掟があるはずですよ?」
「それはライトシンフォニアの掟だろ?今の俺はヘルデストロイヤーの傭兵だ」
「だから簡単に殺せると・・・・?」
「そうだ」
「・・・・・・」

再び黙り込むユウタ。今のゴードンは自分が敬愛していた時のゴードンではない。

「どうして、どうしてそんな簡単に殺せるんですか?」
「言っただろう?今の俺はヘルデストロイヤーの傭兵、ヘルデストロイヤーの掟に従うだけだ」
「・・・・・・そうですか」

何かに納得したように俯くユウタ、そして彼はゆっくりと顔を上げてサバイバルナイフを取り出した。

「だったら、俺もライトシンフォニアの掟に従います!」
「ほぅ・・・・」
「ライトシンフォニアの掟では『無抵抗な相手を殺す事』『凶悪犯であろう抵抗する相手であろうと、殺害する事を禁じる』という決して相手を殺(あや)めてはいけないと言う鉄の掟があります。でも殺害が関係している掟の中で、1つだけ特別な掟があるんです、当然知ってますよね?」
「・・・・『無抵抗な人間が殺された時、殺した相手がヘルデストロイヤーの傭兵である場合、殺害する事を許可する』だろ?」
「ハイ・・・・」
「・・・・・・俺を殺すのか?」
「・・・・・・貴方には感謝しています、両親を押し込み強盗に殺され途方にくれていた時、俺を助けて育ててくれました。貴方は俺のもう一人の父親です」
「・・・・・・」

父親、その言葉を聞いて少しだか表情が変わる二人。

「でも、貴方がヘルデストロイヤーの掟に従うと言うなら、僕もライトシンフォニアの掟に従います!」
「・・・・・・そうか」
「・・・・・・」
「大きく、そして強くなったな・・・・ユウタ」
「・・・・・・」

ユウタの顔を見て低い声で言うゴードン、ユウタの頬には一筋の涙が流れていた。しばらく沈黙が続き、その沈黙を最初に破ったのはゴードンだった。

「・・・・・・始めるか」
「ハイ・・・・」
「・・・・・・さらばだ」
「ハイ、さよなら、教官」

そう言って二人の傭兵はほぼ同時に向かい合った走り出した。





「・・・・・・」
「アレからもう7年が経ったんだな」

ベンヌの管制室の中央、ユウタとゴードンはお互いの姿を見ながら過去を思い出していた。

「あの後、俺はお前を能力で凍り付けにして動けなくした」
「ああ、あの時の戦いは俺の完敗だった・・・・」

あの戦いでユウタはゴードンの力で凍り付けにされたが、命までは奪われなかったようだ。恐らくゴードンなりの優しさだろう。だが、何も出来ないまま敗北してしまったのも事実だ。

「あの時の俺は幼かった上に契約者の力も持っていなかった。勝てなくて当然だ・・・・」
「負け惜しみか?」
「いや、認めているだけだ・・・・」
「フッ・・・・そういう真っ直ぐな所はガキの頃と変わらないな」

過去の話が終わり、二人は自分達の武器を取り構えた。

「戦う前に1つだけ聞きたい。あの時、どうして俺を助けたんだ?」
「ただの気まぐれだ」
「アンタも昔と変わらず、嘘が下手だな?」
「ハハハ、そうか?」

笑いながらハンマーを取りユウタをジッと見るゴードン。ユウタもチャクラムを指で回し何時でも攻撃できる態勢に入った。

「あの時の決着をつけるぞ、ユウタ」
「それはこっちの台詞だ、ゴードン」

二人の会話が終わり、いよいよ戦いが始まる。果たしてどの様な結果になるのだろうか!?


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