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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第105回   第百四話 幼きユウタと教官ゴードン

窮地に追い込まれたレイナは父の形見だあるゴールドエングレーブのSAAを取り、自分の使える最高の技をリーズに叩き込んだ。その技の直撃を受けたリーズは大きく後ろの飛ばされ管制室の横長いテーブルに叩きつけられた。

「ハァハァハァ・・・・や、やったのか?」

仰向けに倒れているレイナはゆっくりと立ち上がり、撃たれた腹部を押さえながらリーズに近づいていく。

「・・・・・・」

自分の技をまともに受けたとはいえ、相手は自然の四塔(フォースド・ガイア)の一人、警戒を解かずにSAAを構えながら歩くレイナ。そしてリーズまであと2mという所まだ来た時、倒れていたリーズがゆっくりと立ち上がったのだ。それを見たレイナは足を止めてSAAの銃口をリーズに向けた。

「う、うう・・・・」

リーズは腹部を押さえながらレイナを睨む。撃たれた場所からは血がドクドクと流れ出ており、致傷の量と言ってもいい位だった。それだけの出血をしていながらもリーズは立ち上がったのだ、レイナはそんな彼女を見て少しだけ見直すような顔をした。

「ま、まさか・・・・まだあんな大技を使うだけの気力が有った・・・・とはな・・・・・・」
「プリズムキャノンを撃てたのは私の気力だけのおかげじゃない・・・・」
「・・・・?」
「このSAAを手にとって、私は感じたのだ。父の思いを、父と母の為にも生きなければならないと言う私自身の思いを・・・・」
「・・・・フフフフフ」

レイナの話を聞いてリーズは小さく笑った。

「成る程、お前から奪ったSAAが私の敗因と言うわけか、哀れだな・・・・」

リーズは敗北した自分のあざ笑うかのような言い方をし、その場にゆっくりと座り込む。

「哀れだが、悪い気分じゃない・・・・」
「・・・・・・」
「もしかしたら、私はこうなる事を心の何処かで望んでいたのかもしれない・・・・」
「敗北を望んでいた・・・・?」

突然おかしな事を言い出すリーズを見ながら問い返すレイナ。

「ああ、私がお前からその銃を奪った日から今日まで、私はお前がその銃を取り返すために強くなる事を、そして私と戦い、私を打ち負かす事を、私は望んでいたのかもしれないという事だ・・・・」
「おかしな考え方をするな・・・・」
「フフフフ、そうだな。本当におかしな考え方だ・・・・」
「・・・・・・」

リーズの考えが理解できずに少しだけ顔を歪めるレイナ。

「5年前、お前の両親を殺した私に、お前は正面から挑んで来た、仇を討つために、銃を取り返すために。お前の様な強い心を、勇気を持つ者と戦える日が来るのを私は待ち望んでいたのだろう」
「・・・・・・」
「そして私は待ち望んでいた敵と戦い、そして敗北した」
「・・・・・・」
「フッ・・・・これなら敗北しても悔いは無い、本望だ・・・・」
「・・・・・・」
「さっきから黙ってばかりいるな、一言ぐらい何か言ったらどうだ・・・・?」
「・・・・何を言えばよいのだ?正直私には貴様の考えが理解できない。敗北して得られる物があるなんて私は・・・・・・ッ!!」

「私はあるとは思えない」そう言おうとした瞬間、レイナは何かを思い出したようにハッと目を大きく開いた。

(あの時も、似たような言葉を聞いた・・・・)

あの時、それはシェルメリン村の人達を守る事ができなかった時、エミリアから説教と励ましの混ざったような言葉を言われた時の事だ。

(あの時、私達は村人を守る事ができなかった自分達を責めていた、だがエミリア様は言った。『心の底から申し訳ないと思っているのなら、次に同じ様な犠牲者を出さない為にもっと強くなりなさい』と、あの時に私達はもっと強くなろうと言う強い意志を手に入れた・・・・)

その事を思い出したレイナは座り込むリーズを見た。

(コイツも似たような考えをしていたのだな・・・・)

黙ってリーズを見つめるレイナ。そんなレイナを見てリーズは口を開いた。

「さっきから何を黙っているのだ・・・・?」
「・・・・いや、何でもない」
「そうか・・・・・・私はもう眠い、これで失礼するぞ・・・・?」
「ああ・・・・」
「フン・・・・最後の最後まで・・・・軽い返事・・・・だ・・な・・・・・・・」

徐々に力を無くす声を出しながらリーズをゆっくりと横になり目を閉じて動かなくなった。レイナはゆっくりとリーズに近づき、首に指をそっと付け、脈が無い事を確認した。

「・・・・・・父さん、母さん、仇は討った」

両親の仇を討ったレイナ、だが彼女は素直に喜んでいいのか悩んでいた。憎いはずの相手なのに、さっきのリーズの態度を見て微妙に心が揺れたのだ。だが、今の彼女にはその理由がわからなかった。






「向こうは勝負がついたようだな?」
「そう見たいだな」

少し離れた所で静かに話し合うユウタとゴードン。ゴードンは自分の腕についている装置を見て光が消えている事を知った。

「リーズもやられたか、これで自然の四塔も俺一人になってしまったな」

リーズの死を確認したゴードンはユウタの方を見て床に置いてある戦闘用ハンマーを持ち上げた。

「それじゃあ、俺達も始めるか?」
「ああ」

ユウタもチャクラムを取って何時でも戦える態勢に入った。

「これで何度目になるだろうな、俺とお前が戦うのは?」

ゴードンがユウタの顔を見ながら懐かしむような声で言った。すると、ユウタも同じような声を出した。

「さぁな、忘れちまったよ」
「つれないなぇ、もう少し合わせろよ。これでもお前の『元教官』なんだぜ?」
「元だからこそこういう話しかできないんだよ。元ライトシンフォニア訓練教官、ゴードン・ヴァイストル」

懐かしそうに、そして悲しそうに言うユウタ。そんな彼を見てゴードンは表情を変えずに話し続けた。

「最後にお前と一緒に任務に出たのは、もう8年くらい前になるな、あの頃はお互い若かったな?」
「ああ、両親を強盗に殺されて行き場も無く途方にくれていた時、アンタ、俺を拾って助けてくれた。俺の信頼できる大人の数少ない中の一人だった」
「フッ・・・・」
「だが、アンタは8年前の任務で負傷し死んだかと思われていた。そして、その1年後にアンタはヘルデストロイヤーの幹部として俺の前に現れた」
「お前の言うとおり、俺は8年前の任務で負傷して死に掛けた、そこをゾークに助けられたんだ」
「ゴードン、なぜだ?なぜアンタほどの人がゾークの計画に協力するんだ?」
「再会した時のも言ったはずだぞ?俺は助けられた恩を返さなくてはならないと」

過去の事を思い出し、顔を歪めるユウタ。彼はそっと目を閉じた。






7年前、3階建てのビルの中を駆ける一人の少年、13歳の頃もユウタだった。身長は今のコンタと同じ位で彼の手にはサバイバルナイフが握られていた。彼は今、銀行強盗団が立て篭もっているビルの中に潜入している。その強盗団はビルで働いている人達を人質にしており、そこへ警察からライトシンフォニアに協力要請が入ったのだ。

「情報では人質はこのビルで働いている12人の人達、そして強盗は6人か、少し厄介だなぁ」

手に取った電子手帳のような小型コンピュータを取り出し、走りながら情報を確かめる。そして強盗団が立て篭もっていると思われるオフィスの前に着いた。ドアに耳を当て中の様子を調べると、中から怒鳴り声や叫びが聞こえてきた。

「静かにしろって言うのが聞こえねぇのかぁ!!」
「キャーーー!!」
「そこ、何コソコソしてやがる!!」
「や、やめてくれぇ!!」

中から二つの低い男の怒鳴り声と、若い女性と老人の叫び声が聞こえてきた。

「速くなんとかしないと・・・・」

ユウタはゆっくりとドアを開け、屈みながらドアの隙間からオフィスに入った。中に入ってすぐに近くの机の陰に隠れ様子を見る、オフィスの真ん中には12人の人質が縛られて座らされている、そして彼等を囲む様に6人の覆面を被った男が「トンプソン」を持ってうろうろしていた。

トンプソン(オートオードナンス・トンプソン)
ジョン・タリアフェロー・トンプソンの立ち上げた、オートオードナンス社が開発したサブマシンガン。アメリカ警察やFBIにも採用され、独特の発射音から「シカゴタイプライター」「シカゴピアノ」「トミーガン」の愛称があり、ドラムマガジンを装備する事も可能で50〜100の弾を装填が可能となっている。

強盗の一人が窓から外で自分達を包囲してる無数のパトカーや機動隊を見下ろしている。

「チッ!サツどもが!さっさと金と車を用意しろ!!」

強盗の一人がパトカーや機動隊に向けてトンプソンを発砲した。弾は機動隊の盾やパトカーのフロントガラスや屋根に命中しただけで、幸い怪我人は出なかった。

「かなり気の荒い連中だなぁ、さて、どうやって行くかな・・・・」

ユウタが陰から様子を伺っていると、強盗のリーダーらしき男が陰から覗いているユウタに気付いて叫んだ。

「誰だ!そこにいるのは!」
「しまった・・・・!」
「出て来い!さもないと人質を殺すぞ!」

観念してユウタは両手を上げてゆっくりと机の陰から出た。

「ん?何でこんな所にガキがいるんだ?」
「俺は傭兵だ、アンタ達を逮捕する為に来たんだ」
「俺達を逮捕?お前のようなガキがかぁ?ハハハハハハッ!」

リーダーのつられる様に他の強盗達も笑い出した。しかしユウタは手を上げたまま強盗達を睨んでいた。

「警察も人手不足なんだなぁ。こんなガキに頼るなんてよぉ!」

リーダーがトンプソンの銃口をユウタに向けながらゆっくりと近づいていく。そしてユウタの額に銃口を突きつけ笑った。

「ハハハッ!せっかく来たのに全然役に立たずに終わるな?」

リーダーが引き金の引こうとした、その時、何処からか声が聞こえてきた。

「それはないぜ、ソイツはこんな所で死ぬ様な奴じゃない」
「誰だ!?」

強盗達がユウタの入ってきたドアとは違う別のドアの方を見て銃を構えた。そしてそのドアからオフィスに入ってきたのは7年前のゴードンだった。

「あっ!ゴードン教官!」
「よう、久しぶりだなユウタ。元気だったか?」

レイナとリーズの戦いはレイナの勝利に終わる。だがまだユウタとゴードンの戦いがある。そして幼い頃のユウタとゴードンの再会、一体この後がどうなるのだろうか?


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