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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第104回   第百三話 気力を銃に込めて

激しい戦闘の末、リーズの背後を取る事ができたレイナは彼女の頭にSAAの銃口を突きつけ、引き金を引こうとする。

「このまま引き金を引けば私の勝ちだ、どうする・・・・?」
「・・・・・・」

リーズは目を閉じてしばらく黙っていた。しばらくすると、彼女は突然笑い出した。

「フフフフフ」
「何がおかしい?」
「これで本当に私に勝った気でいるのか・・・・?」
「貴様こそ、この状況でまだ勝機があるとでも?」
「ああ、思っている・・・・」

次の瞬間、レイナは引き金を引きオーラショットを放った。しかし、リーズは消えるかのように姿を消し、オーラショットはリーズに当たる事無く管制室の壁に命中して爆発した。

「かわした?零距離攻撃だぞ・・・・?」

レイナの声はいつもどおりの静かな声だが、表情は明らかに驚いた顔だった。すると、何処からかリーズの声が聞こえてきた。

「たとえ零距離攻撃と言えど、引き金を引く時に聞こえる金属音や空気の流れを感じれば簡単にかわせる・・・・」

背後から声が聞こえ咄嗟に振り返るレイナ。彼女の目の前には、さっきまで自分に背を向けていたリーズが剣とゴールドエングレーブのSAAを持って立っていた。しかも、彼女をよく見ると、彼女の頬や鎧から露出している部分の肌に翡翠色の光のラインが浮き上がっていのだ。

「それは、レベル・3?」
「ああ、お前達(神竜隊)だけではないのだぞ?レベル・3を使えるのは・・・・」
「私が攻撃する直前にレベル・3を発動させて身体能力を強化、その後すぐに攻撃を回避したというわけか・・・・」
「理解が早くて助かる・・・・」
「お褒めにいただき、恐縮!」

レイナは瞬時にSAAをリーズに向けてもう一度オーラショットを放とうとした。しかし、SAAをリーズの方に向けた瞬間、レイナの持っていたSAAは銃口からシリンダーの部分まで粉々に砕け散った。

「なっ!?」

突然に事で驚きを隠せないレイナ。彼女は驚きながらも、何が起きたのかを調べる為に目だけを動かし辺りを見た。そして彼女の目に剣を振り上げたまま立ち止まっているリーズが飛び込んできた。さっきまでと態勢が違った為レイナはすぐにリーズが何かしたのだと気付いた。そして一つの答えを導き出した。

「まさか、剣でSAAを破壊したのか・・・・?」
「フフフ・・・・」

レイナの答えを聞きクスクスと笑うリーズ。どうやら正解のようだ。

(馬鹿な!銃を構えた瞬間に銃身の半分が砕け散ったのだぞ!)

つまり、リーズは目では確認できないくらいの速さでレイナのSAAを破壊したのだ。レイナが心の中で驚きながら、破損したSAAを捨て、もう一丁のSAAを右手に取り持ち替えて大きく後ろの跳び距離を取った。

「目で確認できない位の速さとは・・・・奴のレベル・3はそれだけ奴の力を強化するのか・・・・?」

小声で独り言を言うレイナを見てリーズは剣の先をレイナに向けて言った。

「お前もレベル・3を発動しろ、そうじゃないと、私には勝てんぞ・・・・?」
「・・・・・・どうやらそうみたいだな」

レイナは銃口をリーズに向けてゆっくりと口を開いた。

「解放、レベル・3・・・・」

すると、レイナの体に黄色い光のラインが浮き上がった。これでレイナとリーズが同じ条件で戦う事となる。レイナのレベル・3の解放を確認したリーズは剣を下ろしながら言った。

「これで条件は互角だな・・・・?」
「ああ・・・・」
「それでは、戦闘再開だ・・・・」

リーズはそう言ってレイナに向かって走り出す。レイナは自分に向かって来るリーズに向かってオーラショットを3発連続で放った。しかし、3発全てをかわされ、リーズは自分の2m前まで一気に距離を縮め、剣を振り上げて勢いよくレイナの頭上に振り下ろす。レイナは瞬時に後ろに跳んで攻撃をかわした。そして、リーズの剣が床に触れた瞬間、床に大きな地割れの様な大きな傷が生まれ、レイナは咄嗟に近くのテーブルの陰に飛び込んで身を隠した。幸いリーズの周りは攻撃した事で舞い上がった砂埃で彼女はレイナを見失っていた。

「ハァハァ、やはり、オーラショットを連続で撃てば、力の消耗も速いか・・・・」

テーブルにもたれた瞬間に大きな疲労感がレイナを襲った。実はレイナのオーラショットは自分の体の中の「気」と呼ばれる生命エネルギーを放って攻撃する技だ、それを使いすぎると当然疲労も激しい。

「これ以上気を連続で使うのは危険だ・・・・。仕方ない、隙を作る事になるが、実弾を使うか」

レイナのSAAはリボルバー式拳銃の中で最もリロードに時間が掛かる銃、つまり隙が最も大きくできるという事だ。レイナは最初の12発を使い切った後にそれを考えて今まで実弾を使おうとしなかったのだ。しかし気を使いすぎて体力に限界が来たのだ、レイナはテーブルに隠れながらシリンダーに弾を込め始めた。すると、砂埃が薄くなり、中からリーズがゆっくりと歩きながら出てきた。

「何処に隠れた・・・・?」
「!」

リーズの気配を感じ一瞬驚くレイナは自分の気配を殺しながら弾の装填を急いだ。しかし、手元が狂い装填に失敗し弾を落してしまった。

(しまった!私とした事が・・・・!)

レイナの手から落ちた弾は床を転がっていき、テーブルの陰からリーズの前に姿を見せた。

「ん?」

リーズはテーブルの陰から出てきた弾を見つけ、弾の出てきたテーブルを方を見た。

「成る程、そこか・・・・」

リーズはテーブルの方へ跳び、テーブルの上に跳び下りてSAAを向ける。しかしそこにレイナの姿は無かった。

「いない、何処へ行った・・・・?」

リーズが意識を集中させて周囲を調べ始める。

「こっちだ」
「!」

背後から声が聞こえ振り返ると、SAAを構えたレイナが立っていた。彼女は弾を落した後に居場所がバレる事を予想して密かに移動していたのだ。レイナはリーズの背中を狙って引き金を引いた。しかし、レベル・3を解放しているリーズはバク転の様なジャンプをして銃撃を回避。そしてレイナの頭上に来た瞬間SAAを発砲、レイナは横に跳んで弾を回避。レイナに当たりはしなかったが、弾はタクティカルスーツを掠めて破れた。そして、破れた部分から何かがこぼれ落ちた、それSAAの弾だった。

「クッ!」

レイナは宙を舞うリーズにSAAで反撃した。弾はリーズの持っていたSAAを命中しリーズの手からSAAは床に落ちた。

「チッ・・・・」

クルッと一回転して着地し、すぐにレイナの方を向いて剣を構えた。レイナはSAAをリーズに向けながらタクティカルスーツのポケットに手を入れる。しかし、そのポケットには穴が開いていた。実はそのポケットはさっきの銃撃で破れたSAAの弾が入っていたポケットだったのだ。

「・・・・しまった!」

レイナはポケットが破れている事にようやく気付き汗を垂らしてリーズを見た。

(クソ・・・・さっきは5発しか装填できなかった、しかも今2発使ったため、残りはたったの3発・・・・)

自分の手元にある弾は僅か3発、つまり実弾の攻撃は3回しかできないという事だ。体力も気力も限界が来ている彼女はとても苦しい状況だった。

「フフフ、疲労感は拭えない様だな。そろそろ限界か・・・・?」
「フン・・・・」

リーズの言った事を軽く流すレイナ。しかし図星だった、オーラショットで気を使いすぎたため、今のレイナには攻撃をかわすのが精一杯だった。

「そろそろ決着をつけるぞ・・・・」

リーズは剣を構えたまま小声でブツブツ言い始めた。そう、契約魔法だ。

「させるか!」

演唱を始めるリーズを止めようとレイナは弾が残り僅かのSAAを発砲した。しかし、リーズは剣で自分に向かって来る弾丸を軽く弾いた。

「クッ・・・・!」

演唱を止められず、やむ終えず回避する態勢に入った。

「大地を揺らす咆哮!グランドブレイク!!」

演唱を終えて契約魔法を発動したリーズ。すると足元が微かに揺れた事に気付いたレイナは咄嗟にその場を離れた。そして先の尖った岩が床から飛び出し襲い掛かった。

「クッ!私のと同じ契約魔法か・・・・」

何とか契約魔法を回避したレイナは少し離れた所に着地した、しかし、リーズの攻撃はそれだけでは終わらなかった。

「受けよ、我が最強奥義!冷血冥想波(れいけつめいそうは)!!」

リーズは着地したレイナに向かって最強の技を放った。剣を大きく振り、その剣から血の様に赤い光線が放たれた。その光線はレイナに直撃した。

「ぐわぁーーーー!!」

光線をまともに受け、攻撃が終わるとレイナはその場で倒れた。管制室の奥の方に転がっていた。管制室は坂になっており、奥に行くたびに深くなっているのだ。しばらく転がっていくとレイナはゆっくりと止まった。

「う、うう・・・・」
「手応えありだな・・・・」

うつ伏せに倒れているレイナはゆっくりと近づいていくリーズ。自分に近づいてくるリーズを倒れたまま見るレイナ。彼女はもう立ち上がる事すらできない。

(クソ・・・・ここまでか・・・・・・)

死を覚悟し、諦めようとしたレイナ。すると、彼女の目の前にある物が飛び込んだ。それはリーズが落したゴールドエングレーブのSAAだった。

「アレは・・・・」

リーズに奪われた父の形見のSAA、それを目にしたレイナの目に僅かに光が戻った。

「と、父さん・・・・」

レイナは倒れたままSAAに手を伸ばす。そして、長い間自分の手から離れていたSAAを取る事ができた。だが、その直後、リーズがレイナの前に着いた。

「ゲームオーバーだ、レイナ・・・・」

勝利を確信しゆっくりと剣を振り上げるリーズ。だが、その瞬間、うつ伏せに倒れているレイナは仰向けになりゴールドエングレーブのSAAを構えた。

「ッ!それは!」
「ゲームオーバーなのは、お前だ!」

驚くリーズにSAAを向けてレイナは最後に力を振り絞り引き金を引く。

「終わりだ!プリズムキャノン!!」

銃口から七色の輝く気を纏った弾丸が吐き出され、その光の弾丸はリーズの腹部に命中し、リーズは大きく後ろ飛ばされた。

「ぐわあああああ!!」

衝撃に耐えられずリーズは飛ばされ、机に叩きつけられた。それを見たレイナはゆっくりと腕を下ろした。全ての力を込めたレイナの最後の攻撃、果たしてレイナはリーズを倒せたのか!?


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