リーズの直属部隊であるステルス・ヴァルキリーをアッサリと倒したユウタとレイナ。しかし、彼等も仲間の傭兵を殺され、二人だけとなってしまった。だが、相手も二人、ゴードンとリーズだけだ、まだユウタとレイナには勝機はある。
「・・・・驚いたな、ステルス・ヴァルキリーをこんなにアッサリと・・・・」
自分の部下が簡単に倒された事に驚くリーズ。レイナはSAAの銃口をリーズに向けて静かに口を開いた。
「ステルス・ヴァルキリー(コイツ等)の事はマサシから聞いている。どんな奴等でどれだけの人数、そしてどんな攻撃をしてくるかをな。もしなんの情報も無かったら苦戦していただろう・・・・」 「成る程、情報を得ていたのであれば、対処する方法も思いつくな・・・・」
表情は変えていないが、悔しそうな声を出すリーズ。そんな二人の会話を横目で見ていたゴードンは同じように二人を見ていたユウタに声をかけた。
「おいユウタ」 「ん?」
声をかけられゴードンの方を見るユウタ。
「ここにいちゃ二人の邪魔だ、俺達は向こうで勝負しないか?」 「・・・・ああ、構わないぜ」
一度レイナとリーズの方を見て納得したユウタはゴードンの申し入れを受けた。そしてユウタとゴードンはゆっくりと歩いてレイナとリーズから離れて行き管制室の奥へと向かって歩いていく。そんな二人に気付かず、レイナとリーズは相手を睨み続けていた。
「今度こそ、父と母の仇を討たせてもらうぞ・・・・」 「フッ、お前では無理だ、私には勝てない・・・・」 「たいした自信だな・・・・?」 「確信、と言ってくれ・・・・」
さっきと変わらず冷静な声で話し合う二人。だが話し合いをここまでのようだ、リーズは右手で腰の剣を抜き、左手でホルスターに納めてあるゴールドエングレーブのSAAを抜いた。リーズの手に握られている金色のSAAを見た瞬間、リーズの表情は変わった。
「貴様、私との戦いでその銃を使うか・・・・」 「当然だ、この銃を見せればお前は必ず動揺すると思ったからな。そして私の勘は的中した、お前、さっき驚いていただろう・・・・?」 「・・・・・・」
図星を突かれて、黙り込みながら俯くレイナ。だが、すぐにリーズの方を向いてニヤリと笑った。
「確かに驚きはしたが、その銃を使っても私は何も躊躇う(ためらう)事も無いし、戦意を失う事も無い・・・・」 「ほぅ・・・・」
ほとんど取り乱した様子を見えなかったレイナを見て少し驚くリーズ。だが、彼女もすぐに表情を戻し、剣とSAAを構えた。それを見たレイナも2丁のSAAを抜いて構えた。
「銃だけしか使わないお前が、銃と剣の両方を使う私に勝てると本気で思っているのか・・・・?」 「ああ、思っている。勝負は武器だけで決まるものではない・・・・」
二人はそれぞれの武器を取って構える。そして、しばらく睨みあい、二人は大きく後ろに跳んだ。
「フッ!」
先に仕掛けたのはレイナだった。両手で持っているにSAAを1発ずつ交互に撃ちリーズを攻撃する。12発の弾丸がリーズに向かって飛んでいく、だがリーズは管制室に設置されているテーブルの陰に隠れて銃撃から逃れた。
「甘いぞレイナ・・・・」
リーズはテーブルに隠れながら自分のSAAをレイナに向けて発砲した。弾はレイナに当たりはしなかったが、彼女の頬をかすった。レイナの頬には切り傷が生まれ、そこから血がにじみ出た。レイナはリーズの銃撃から逃れようと咄嗟にテーブルの陰に隠れた。
「・・・・油断した、銃の腕もそれなりに磨いているようだな。利き腕でない左手で撃って頬をかするとは・・・・」
座り込み、テーブルにもたれながらレイナは自分の頬の血を手の甲で拭った。そしてリーズの隠れているテーブルの方を隠れながら見た。
(奴はあそこか・・・・)
リーズの隠れているテーブルを見つけるレイナはこの後どの様に行動するか考えていた。
(こちらから仕掛けたら奴に隙を見せる事になる、この勝負では隙を見せた方の負けだ。さて・・・・)
レイナは座り込みながら作戦を考える。すると、レイナはある事を思いついた。
(それなら、隠れているテーブルごと吹き飛ばせばいい・・・・)
レイナはゆっくりと立ち上がりテーブルの陰から姿を見せた。それを陰に隠れながら見るリーズは不審に思う。
(何を考えているのだ、アレはでは撃ってくれ言っているような物だ・・・・)
レイナの行動を理解できずにジッと彼女を見るリーズ。するとレイナは右手に持っているSAAをリーズの隠れているテーブルに向けた。
(リーズ、覚悟!)
心の中で呟くレイナのSAAの銃口に黄色い光が集まりだした。そう、ステルス・ヴァルキリーを倒す時に使ったレイナのわざの一つ、オーラショットだ。
「オーラショット!!」
力の入った声で技の名前を叫び引き金を引くと、銃口から黄色い光弾が放たれ、リーズの隠れているテーブルに向かっていく。そして光弾がテーブルに命中した直後に爆発し、テーブルを跡形も無く吹き飛ばした。勿論、周囲のテーブルや隠れていたリーズのいた場所もだ。
「消えた・・・・」
レイナは顔を動かさずに目でだけを動かして辺りを見回した。
(奴がこの程度で死ぬとは思えない、必ず何処かに隠れているはずだ・・・・)
レイナの読みは当たっていた、レイナの背後にある机の陰からリーズが現れたのだ。
「背中ががら空きだぞ!」 「!」
リーズの声に反応し、後ろを向いてSAAを向ける。だがリーズの方が速く、迎撃が間に合わない。リーズの持つ紅い刀身の剣だレイナに迫ってくる。レイナは後ろに大きく跳び斬撃をかわそうとした。だが、違っていたのだ。
「やはりお前は甘い・・・・」 「何?」
斬撃がくるのかと思っていたが、途中で剣が止まり、代わりにSAAの銃口がレイナに向けられた。そして次の瞬間、SAAの銃口から弾丸が吐き出され、レイナの左の脇腹に命中した。
「グァ!」
跳んでいたため回避することが不可能だったのだ。撃たれた衝撃でレイナは着地する事が出来ずに床を転がった。
「う・・・・」
レイナは撃たれた所を押さえて、痛みに耐えながら出血を止めようとする。そんな彼女にSAAを向けながらゆっくりと近づいてくるリーズ。
「どうだ、父から貰った銃に撃たれる気分は・・・・?」 「クッ!」
リーズを睨むレイナ。父から貰った銃を奪われ、その銃で撃たれた事による悔しさと怒りがレイナのお顔に出ていた。
「その顔、あの時と同じだな・・・・」
リーズはレイナと初めて会った時の事を思い出した。あの時のレイナも同じようは顔をして自分の睨んでいたと。
「お前のそんな顔を見るのもこれが最後だ・・・・」
SAAをレイナに向けたまま剣を振り上げるリーズ。
「止めだ・・・・」
剣を振り下ろそうとした、その時。
「クリスタルノクターン!」 「!」
レイナが技の名前らしいものを叫び、それを聞いたリーズは足元を見て足元が光だしたのに気付いた。彼女は咄嗟に後ろに跳んだ、すると、リーズの立っていた場所から水晶の欠片が天井に向かって打ち上げられた。更にリーズの着地した場所がさっきと同じように足元が光だした。リーズは再び後ろに跳びその場所から離れる、そして再び水晶が打ち上げられた。
「足元から攻撃とは、少し油断した・・・・」 「お前も甘かったな・・・・?」 「フッ、お前と同じにするな・・・・」
挑発されても冷静に対応するリーズ。レイナはリーズが離れたのを確認してゆっくりと傷口を押さえながら立ち上がった。
「クッ!・・・・弾丸が貫通せずに体内に残っているか・・・・」
レイナは傷口を押さえている手を離して血の付いて右手で落ちているSAAを取った。
「その体で何処まで持つか、見せてもらうぞ・・・・?」 「勝手にしろ・・・・」
レイナは左手で持っているSAAをホルスターに納めて、ゆっくりと目を閉じた。そして小声で何かを言い出した。
「契約魔法か・・・・?」
レイナの口を見て契約魔法の演唱をしている事に気付いたリーズ。
「演唱はさせない!」
リーズはSAAでレイナを狙い引き金を引いた。弾丸がレイナの顔に向かって飛んでいく、しかしレイナは目を閉じた状態で顔を軽く横に傾け銃撃をかわした。
「何、かわした?」
目を閉じた状態で攻撃をかわしたレイナを見て驚くリーズ。その直後に演唱が終わりレイナは目を開いた。
「天の使いよ、闇を打ち消す閃光を放て、ライトニングボール!」
レイナの左手に白く光る光球が現れ、彼女はその光球をリーズに向かって投げた。リーズは剣を構え自分に向かって来る光球を睨んだ。
「蒼雷光斬(そうらいこうざん)・・・・」
静かに剣を振り、刀身から蒼い雷の斬撃が放たれた。その斬撃は光球に命中し爆発を起こした。
「私の銃撃をかわした事は褒めてやるが、正面からの攻撃とは、ナメてくれるな・・・・・」
爆発によって舞った灰色の煙の向こうに居るレイナに言うリーズ。だが、次の瞬間、リーズの背後から声が聞こえた。
「ナメてるのはどっちだ・・・・?」 「何!?」
突然の声に振り向くと、そこには自分の後頭部にSAAを突きつけるレイナがいた。
「いつの間に・・・・」
リーズはレイナの全身を目だけを動かして見だした。そんな時、レイナの足に電気がバチバチとまとっているのに気付いた。
「その足は・・・・」 「これか?クイックロードだ・・・・」 「何だと・・・・?」
レイナは口から出たのはハヤテが使っていたのと同じ契約魔法の名前だった。
「お前も使えてのか・・・・」 「クイックロードは演唱後に契約者の足元に電撃の道を作り、そこに乗って道の終わりの場所まで雷速で移動できる魔法だ・・・・」 「成る程、さっきの爆発の直後にクイックロードを発動して私の背後に回りこんだと言うわけか、爆発の煙で私の視界から消えているうちに・・・・」 「・・・・これで攻守交替だな?」
リーズの背後に回りSAAの引き金を引こうとするレイナ。形勢逆転、このまま引き金を引けばリーズを倒せる、だがリーズもこうなる事は予測していたはず、それなのに冷静なまま。レイナは何か嫌な予感を感じていたのだ、この戦い、このまま何事も無く決着が付くのだろうか・・・・?
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