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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第10回   第九話 悪魔の名を持つ竜

襲い掛かってきたヘルデストロイヤーの軍事総責任者Urs(ウルス)。彼の身体は最強金属「アストラル超合金」で出来ていた、そのためマサシ達の攻撃ではUrsに傷を負わせることはできない。しかし、マサシにはまだ「切り札」がある。だがその切り札を使ってしまったら・・・。

(アイツ、あんなところに剣を隠していたのか・・・)
(これで終わりだ)

マサシとUrsは互いに心でそう呟いた。それは敗北の確信、勝利の宣言でもあった。しかしマサシはまだ諦めてはいなかった。

(こうなったら、『奥の手』を使うしかないな・・・・この場を凌ぐにはそれしか手はない!)

Ursが剣を振り上げ、止めを誘うとした。マサシは抱きかかえているジゼルを寝かせ、ゆっくりと立ち上がった。次の瞬間、マサシは突然叫んだ。

「解放!レベル・5!!」

すると、マサシの体が突然光りだし、彼の体から放たれた光が彼を包み込んだ。その光はどんどん大きくなりその形を変えていく。

「これは、もしや!」

Ursはなにかを感じたのか大きく後ろに跳び距離をとった。光が治まった時、そこにはマサシの姿は無かった。代わりにそこには大きな黒竜が立っていた。漆黒の甲殻に大きな竜翼と尻尾、二本足で立っており、太い腕と足に、鋭く伸びる爪、長い首、口から生えている牙、頭から生えている長い銀色の角、そして真紅の眼がUrsを睨みつけた。

「コイツ、契約者だと聞いていはいたが、レベルが5だとは聞いていないぞ」

契約者はレベル・5になると契約相手の魔物に変身できる。そう、今Ursの目の前に立っている竜はマサシが変身した姿なのだ。そして、この漆黒の竜こそがマサシの契約相手「ディアボロス」だ。Ursは目の前にいる漆黒の竜を見上げ一歩下がった。見上げると言っても大きさはUrsよりも少し大きいくらいだ。たいして差はなかった。しかし、戦闘能力には大きな差が出たようだ。Ursからはさっきまでの強気は消えていた。

「この化け物め!」

Ursは剣を構えマサシがどう出るか待っていた。だがマサシはUrsを無視するかのようにジゼルの方を向き、眠っている彼女を片腕で抱き上げた。

「なるほど、姿が変わっても人間の意志は残っているようだな」

Ursは「まだ勝機がある!」と心の中でそう思った。なぜなら、マサシはジゼルを守る為に変身したのだから、彼女が居ては十分な力が出せないと踏んでいたからだ。だが、Ursの考えは簡単に砕かれた。ジゼルを抱き上げた瞬間、マサシは音速と言ってもいいくらいの速さでUrsに接近し、彼の胴体に空いている方の手で拳を作りパンチをくらわした。拳がめり込んだ所からはピキッという何かに割れるような音が聞こえた。それと同時にUrsは10m近く飛ばされ大きな岩に激突した。

「な、なんだと・・・・・!!」

Ursが殴られた所を見るとそこには大きな罅(ひび)が入っていた。アストラル超合金に罅が入る、Ursは驚きを隠せなかった。傷が付いたことのない自分の装甲に罅が入る程の力を持つものが目の前に居る、Ursは改めて契約者の強さを知った。

「面白い・・・・この俺に傷を負わせるとは、いいだろう・・・・・俺も本気で行くぞ!!」





「う、う〜ん・・・」

ジゼルはゆっくりと目を覚ました。状況が分からない、ジゼルは必死で記憶の糸をたどった。

(そうだ、確かあたしとマサシはUrsとかいう鉄の人形と戦って、アイツの攻撃を受けた後にマサシがあたしを抱き起こしたらそのまま、あたし気を失ったんだっけ・・・・)

ようやく、状況を把握できたジゼル。だか彼女はその直後に大事な事を思い出した。

(そうだ!マサシは、マサシはどこなの!?)

ジゼルが周りを見回しと、少しだけ周りの物が低く見えた。どうしてだろうと思って足元を見ようとすると、何者かの大きな腕が自分の身体を抱き上げているではないか。慌てて上を見ると、そこには大きな黒竜が自分を抱きかかえて立っていた。

(な、なんなのコイツ!?それよりもマサシは・・・・・・)

そんな時、ジゼルはふと思い出した。意識が消える直前マサシがUrsを睨みつける顔。自分の目の前にいる黒竜も何者かを睨みつけていた、その竜の目先を見ると、そこにはUrsがいた。マサシが居なくなり、マサシと同じような目で、マサシと同じ敵をを睨みつける竜、それらが頭を過ぎった時ジゼルは悟った。

(まさか・・・・・これがマサシ?)





Ursはジゼルの意識が戻った事にも気付かずにマサシを見ながら構えていた。

「いくぞ!!」

Ursは剣を構えながらマサシに向かって走り出した。マサシとの距離が1m近くまで縮むとUrsは剣を大きく横に振り攻撃した。中段斬りだ。しかしマサシは竜翼を大きく広げ飛び上がった、だがUrsもそれを見逃さかった。

「フラッシュレーザー!!」

Ursがマサシの方を見て叫ぶと彼の眼が光りだし黄色い光球が二つ眼から飛び出した。二つの光球はマサシに命中するかと思ったが、当たる直前マサシはひらりとかわし、かわしてすぐにUrsの方に向き直し口を開けた。すると口に赤い光が集まりだした。

「カオスアブソリュート・・・」

マサシの声で技の名前らしき言葉が聞こえた後、口に集まっていた赤い光が一本の線となりUrs目掛けて発射された。

「なめるな!!」

Ursはアトミックレーザーで応戦。赤色と黄色の二つの光線がぶつかった。力は互角かと思っていたが、マサシのほうが力がはるかに上、マサシのカオスアブソリュートがどんどんUrsに迫っていき、Ursは危険と判断したのか攻撃を止め、翼を出し空中へ飛び攻撃をかわした、Ursがさっきまで立っていた所では大爆発が起こった。Ursはマサシと同じ高さまで上がり、二人は睨みあった。

「少しお前を過小評価していたようだ、まだ勝負はこれからだ!」
「・・・・・」
「フン、変身してから随分静かになったな?」
「・・・・・」

漆黒の竜と鋼鉄の巨人、その二人の距離は約十数メートル。どちらかが先に攻撃するかで勝敗が決まる、いや既に勝負は見えている、マサシのほうが圧倒的に有利だ。だがUrsはそれが気に入らないのかいっこうに引こうとはしなかった。

(す、すごい力・・・この竜、本当にマサシなの?)

マサシの腕の中でこの竜が本当にマサシなのかを疑うジゼル。

「アイシクルレーザー!!」

Ursの肩の飾りのような装甲が青く光りだした、そこから青い光線が発射され、同時に両膝の装甲が開きそこからゴッドミサイルが発射された。マサシは青い光線を軽くかわした。しかし前から無数の小型ミサイルが近づいてきた。だがマサシは慌てることなく腕を上げ手を広げた。

「ダークネスアロー・・・」

マサシの手から無数の黒い矢が飛ばされ、それがミサイルを全て撃つ落とした。だが、マサシの攻撃はまだ続いた。黒い矢はUrsに命中、変身する前と違ってUrsはダメージを受けているようだ。

「グオォ!!・・・・・おのれ、この俺が・・・」

かなりのダメージを受けたらしく、Ursは攻撃を受けたところを押さえ、空いている腕でなにやら、もう片方の腕についているスイッチのような物をいじくっている。

「・・・・・?」

すると、後ろの方から何かの音が聞こえてきた。マサシが後ろを見るとなにやら黒い物体が二つ近づいてきた。なんとそれは対戦車ヘリ、コブラだった。

コブラ(AH-1コブラ)
コブラはベル・ヘリコプター・テキストロン(ベル・エアクラフト)社がUH-1を元に開発した、世界初の攻撃ヘリコプターである。最大の特徴は、幅99cmという非常にスリムな胴体と、搭乗員をタンデムに配置した事である。前席が射手兼副操縦席、1段高い後席が操縦席となっている。機首下面には、切り替えにより毎分680〜750発もの発射速度を誇る20mmM197三砲身ガトリング砲が配置されており、戦車の装甲を切り裂く威力を持っている。また、グレネードランチャーの発射機に換装が可能である。胴体中央部のスタブ・パイロンには4ヶ所のパイロンがあり、ロケットランチャーや対戦車ミサイルなどを装備している。

地上からは以前戦ったM1戦車が二台、陸上自衛隊が使用している軽装甲機動車が二台接近してきた。

「俺は今回こっちの世界に送った先遣部隊を倒した奴の始末を任されてな、二個小隊を連れてきてるんだ。使う必要などないと思っていたが、貴様が相手なら仕方がない」

どうやらさっきのUrsの行動は増援を呼ぶための物だったようだ。マサシはUrsに隙を見せないように空中と地上の敵を見て戦況を計算している。

「攻撃開始!」

Ursの合図で二機のコブラが同時に20mmガトリングを同時に発射。マサシはコブラに背を向けたまま上昇しコブラの攻撃をかわした。そして回り込むようにコブラの側面にまわった、コブラもマサシの方に向き変えようとした、だがマサシはコブラに急速に接近し翼を大きく広げ、翼を縦にした。すると翼はコブラ二機を通過し機体を真っ二つにした。その直後、機体は大きく爆発し粉々になった。

「キャアア!!」

爆発に驚いたジゼルは声を上げ、コブラを破壊した後マサシは急降下しM1戦車に近づいた。M1戦車は主砲と重機関銃で応戦したが、マサシは軽々とかわし契約魔法の演唱を始めた。

「次元の歪みよ、漆黒の波動を放て。ネガティブブラック・・・」

するとM1戦車を囲む様に黒い壁が現れ、壁から波動が放たれ戦車を押しつぶし、スクラップ状態になり、そして爆発。

「雷雲よ、敵を貫く刃となれ。サンダーソード・・・」

マサシはサンダーソードを放ちもう一台のM1戦車を貫き破壊した。戦車を全て破壊したマサシは地面に激突する前に再び上昇した。軽装甲機動車から傭兵が数名吐き出された。傭兵達はMP5を構え発砲した。

H&K MP5
H&K社が1960年代に、同社のG3(HK31)のシステムを短機関銃へと移植した物。ローラーロッキングシステムを採用したために当時の面制圧目的な短機関銃とは一線を画す、目標に『当てる』事ができる命中精度を持っており、特にセミオート射撃では拳銃を上回る性能を持つ。

MP5の銃口から吐き出された9mmパラはマサシの背中に迫ったが当たらない。マサシは軽装甲機動車の方を向き、再びダークネスアローを放った。漆黒の矢が二台の軽装甲機動車を貫き、爆発。傭兵達はその爆発に巻き込まれた。そして死者の大地に傭兵達の断末魔が響いた。その光景を目前にして驚いていた。

「・・・・・クソッ!覚えていろ!!」

Ursはその光景を眼にし、逃亡した。だがマサシはUrsを追おうとはしなかった。ジゼルの事が心配なのだろう。





「う、う〜ん・・・」

静かになり顔を上げたジゼル。

「どうなったの?・・・・・・ハッ!!」

辺りを見回そうとした時、ジゼルの目にはとんでもない光景が飛び込んできた。炎上しているコブラ、M1戦車、軽装甲機動車、そして傭兵達の死体。ジゼルにとってはこれは地獄の光景だった。

「・・・・・・・」
「大丈夫か?」
「!!」

突然声をかけられ驚いて顔を上げると、黒竜が自分を見下ろしていた。黒竜はゆっくりとジゼルを降ろした。ジゼルはゆっくり、少し脅えたように黒竜の方を見た。

「・・・・・マサシ・・・・なの?」
「ああ・・・」

ジゼルは再びマサシであるかを確認する為に問い掛けると黒竜はゆっくりと頷き返事をした。

「・・・・・・その姿は?」
「これが契約相手に変身した時の俺の姿さ・・・」
「それが・・・・」

ジゼルはゆっくりとマサシの背を向けた。まるでマサシの姿を見ることを恐れているかのように。

「マサシ・・・・そろそろ元の姿に戻ってもいいんじゃない?」
「いや、折角だからこのまま町まで乗せてやるよ。お前も怪我してるんだし・・・」
「いい・・・」
「だけど・・」
「いいから!!」
「!!」

突然声を上げるジゼルに竜の姿をしたマサシは驚いた。

「いいから・・・・早く・・・元の姿に戻って・・・」
「・・・・・」
「今のマサシの姿・・・・・見たくない・・・恐いの・・・・」
「・・・・・わかった」

ジゼルの声を聞き、マサシの姿が光りだし、竜の形から人の形に戻った。

「戻ったぜ」
「・・・・・」

ジゼルはマサシが元に戻った事を確信した後、マサシの下に歩き、ゆっくりと彼に抱きついた。

「ジゼル・・・・」
「ごめんなさい・・・・」
「いや・・・・・」
「あたし・・・・マサシが契約者だから凄い力を持っている事を知っているから、なにがあっても驚かないつもりだった。でも、マサシのドラゴンの姿を見て・・・・急に恐くなって・・・・それでこの光景を見たら、よけい・・・・・・」
「・・・・・いいさ、俺は契約者。化け物同然だ」
「そんな・・・・」

「そんな事ない」と言おうとしたが、実際彼を見て脅えていた自分にはそれを言う資格がない、ジゼルはそう思ったのか口を止めた。

「・・・・・」
「・・・・・」
「ねえ、マサシ・・・」
「ん?」
「お願いがあるの、あたしの前では黒竜(さっき)の姿にならないで・・・・」
「・・・・・」
「あたしの我が儘(わがまま)だって事は分かってる。でも・・・・・やっぱり、恐いの」
「・・・・・分かった」

マサシはジゼルをゆっくり抱き返し、片方の手で彼女の頭をゆっくり撫でた。マサシの黒竜の時の姿を見て恐怖を知ったジゼル、マサシが翼を生やした時は恐くはない、カッコいいと思った。しかし、ジゼルは恐れてしまった。


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