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作品名:ハラス 作者:岳士登

第1回   朝礼
今日も朝から電話が鳴り続けていた。パート社員のオペレーターが全員電話に掛かりきりになっている。そんな中、朝礼は行われ課長の右山はとうとうと話を続けていた。

オオタカ建設は名物社長が1代で築き上げ、全国に営業展開している建設会社である。バブル期の多角化経営に失敗し多額の債務を背負い込んでいる。経営は銀行に債権放棄をしてもらいなんとか倒産の憂き目から逃れるのが精一杯の状態、経営はどん底にあった。

会社の現状がいかによくないかを回りくどく説明し、営業がいかに夜遅くまでがんばっているか、必ず達成しなくてはいけない、人数が少ないので決して休んではいけない、
立ち居振る舞い、日頃の言動とは、心構えが、 、 、 、
朝礼の話は抽象的な精神論が中心になっているのでいつ終わるとも無く続いていた。右山の話には具体的な解決策というものが全く登場しない。分かりきっている現状を回りくどい説明ともっとやれ、まだまだ全然足りない、もっとやれの繰り返しであり、プレッシャーをかけ続けているだけであるということに自身は全く気がついていない。また昨日喋った内容と正反対の事を平気で話す無神経さを併せ持っている為、話を真に受けてしまう経験の浅い課員は混乱し、朝からストレスという鞭で毎朝叩かれ続け日に日に消耗するという皮肉な成果を着々と出し続けていた。問題は沢山持ち込むが解決策を提示しなければ。課員が追い込まれていくのは当然の帰結である。また右山は課員には必ずメモを取らせ、議事録を作成するよう命じていたので威力は更に増していた。

中田岳史は右手にペンを持ったまま、マウスを気づかれないようにクリックしニュースサイトの記事に集中し、耳に飛び込んで来る細かいフレーズをなるべく頭から追い出そうと努力した。


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