平日だというのに、夕方の心斎橋はすごい人だった。 待ち合わせより少し早く到着したので、紀子は迷わず大手百貨店の 化粧室に直行した。化粧直しのためだ。しかし今から顔を合わせる人間の顔を想起すると、従姉妹のエリコと、3ヶ月前花火で知り合った高橋くんとそのブラジル好きの 友人の3人であり―最も最後の1名についてはあったことはないが、高橋の 友人ということで同等レベルだとおもわれた―化粧直しの必要性さえ疑われた。 しかし、自分の中で満足のいくレベルの身だしなみをしていないと、人と会う楽しみが 半減してしまうことがよくわかっていたので、ごそごそと化粧ポーチを取り出し、 まずは一日オフィスにいて崩れたベースメイクを、メイクオフシートで落とすところから始めた。念入りにメイクを直し、髪型を合わせ鏡であらゆる角度からチェックし、 全身をざっとチェックすると、最後に鏡に向かって得意のスマイルを披露し、 大満足で化粧室をでた。 気合の入っていないときほど、イケてしまうのはどうしてかしら、と小首をかしげながら。 時計をみると、 6時28分。約束が30分ジャストなので、ここからだと2〜3分遅刻で到着だ。ちょうどいいタイミングだ。あまり早すぎてもいけないことも計算済みだからだ。 待ち合わせ場所のスターバックスにつくと、まだエリコしかきていなかった。 とおもったら、逆側に、高橋の姿が見えた。 とりあえずエリコの肩をぽんとたたいて「ごめん、ごめん」と声をかけ、 促して高橋のところにむかった。 高橋はすぐこちらに気づき、いつもの屈託ない笑顔をうかべた。 となりの男に目をやる。なんだかずんぐりしてるなあ、というのが 第一印象だった。背は高橋よりも高く、180に少し届かないくらいに思えた。 とくに太っているわけではないが、肌のなめし皮っぽいところとか、独特の雰囲気が、昭和っぽい重量感をかもし出していた。 とりあえず店に向かうことにした。
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