冬は好きだ。 体をしめつけるような冷たい風が頬を刺すと、大学時代を過ごした北海道を思い出す。 関西の11月の寒さなど、北の地のそれとは比べ物にならず、中途半端に身を竦ませる気候は、4年ぶりの実家暮らしと似て、どこか煮え切らないもどかしさがあった。 大学院進学のために去年の春に実家のある神戸に戻って1年と7ヶ月、某国立大学の修士2年も終わりに近づき、予定調和的に決めた準大手ゼネコンへの就職と、卒業のための修士論文とが頭の大半をしめ、あとは家庭教師のバイトと、前のバイト先で知り合った彼女という存在が、たまに頭をよぎる程度だった。 大学時代が人生の休息地だなんて、どこのアホがいったんだか。 一人ごちて、駅から大学までの20分ちかくある、たいして景観もよくない通学路を早足で歩いた。このあたりは古くからの住宅地と、計画的に整備されたニュータウンが混在しており、大学があることもあり、町全体がアカデミックで閑静な静けさに包まれていた。しかしそんな雰囲気は大学生にとってありがたくもなんともなく、北海道の騒がしいネオン街のほうがよっぽど活気があって東は好きだった。 今日こそは修士論文の第一稿を橋本教授に提出しなければいけない。 そう思うと空っぽの胃が音をたてて縮んでいく気がした。 昨日半徹でなんとか仕上げたが、とても先生に納得してもらえるとは思えない。 だがそれもどうでもいい気がしていた。 彼女からもらったマフラーが、肩に垂れ下がってくるのを、乱暴にかきあげて、 構内に一歩足をふみいれると同時にスピードを上げて研究室に向かった。
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