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作品名:ネクロマンサー 作者:飛野一斗

第1回   1日目〜2日目

                 ――様
   
     ――期限が差し迫っています。下記の銀行口座に
       早く料金を振り込んでください――

     ――振り込まれない場合、あなたは4日後に亡くなります――



 ワタシはその手紙をボンヤリと眺め続けている。
 今朝、郵便受けに入っていた奇妙な請求書。
 いまのご時世、支払い義務のないお金を請求したり、架空の宝くじを買わせようとしたりする詐欺まがいの郵便は珍しくもない。が、これはいったいなんだろう?
 差出人の名は記されていない。
 ワタシはその封筒をゴミ箱に放った。
 ただのイタズラだろう。イタズラというのもおこがましいほどの。



 翌朝、また同じ請求書が郵便受けに入っていた。
 今回はちょっと文が長くなっていて、

     ――お金は積み立てることもできます。
       1日寿命を延ばすごとに、300円――

     ――まとめて支払うことも可能です――

(アホか)
 と、思った瞬間、ワタシはとても重要な問題に気づいた。
(どうしてワタシの住所が?)
 いま住んでいるマンションには、一週間前に越してきたばかりだった。親にもまだ新しい住所は知らせていない。
 ワタシはこの一週間の自分の行動を念入りに思い返した。
 長期休暇をとっているために仕事には出ていない。外出も買い物など必要最低限の用のみである。街頭での訳のわからないアンケートでうっかり住所を書いてしまったり、どうでもいいポイントカードの会員になったという記憶もない。
 インターネットの複数のポータルサイトには個人情報が登録してあったかもしれないが、住所変更等の手続きをしていないので、まだ旧住所のままである。
(……となると)
 カレシの悪ふざけを疑うより仕方がない。もう三十にもなろうというヒトが、こんなことをするはずもないのだが……
 電話で確認してみると、大笑いされた。
「ウチにも来てるぞ。その請求書。しかも2日連続」
「ホントぉ?」
 カレが同じ体験をしていたというだけでワタシはなんとなく安心し、嬉しくなった。
「愉快犯だろうな、めちゃくちゃ暇人の。ガキかもしれねーし。ほら大昔あった不幸の手紙とか、そういった類?」
「でも、なんでワタシの住所わかったんだろ?」
「そこが情報社会のおっそろしいところなんじゃないの? だって不動産会社のデータベースには確実にあるわけだし、そこで働く人間は複数、いる。その友達も、そのまた友達も」
「そっか……」
 ワタシは曖昧だが、納得した気分になった。
 なんにしろ、もう話題にするのも飽きてきた。この問題は、今日でおしまいにしよう。


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