「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!セァァァァァ!!!!!!!」 ザシュッ!! 「が・・・ぁ・・・にんげ・・ん・・め・・」 バタッ・・・ 光の粒となり消えてゆく魔族の体。 「ふぅ・・・これで終わりね。」 魔族の討伐に向かった森で最後の一体を倒して一息つく。 「だな。帰ってエール酒で一杯やるかい?」 「そうね。でもまずギルドに報告済ませなくっちゃ。」 彼の名前はケイン、あたしの相棒みたいな奴で1年ほど前に知り合ってから仕事でちょくちょく一緒になることが多い。 言う事が親父くさかったりするし基本的にバカだけどそれなりにいい奴である。 「そういやお前さん、この仕事ギルド経由で受けたのか。」 ギルドって言うのは簡単に言ってしまえば用心棒の集まりみたいなもので、あたしはそこの従業員って訳。この仕事もずいぶん長くてかれこれ3年になる。 あたしを育ててくれた事は勿論で、この仕事に引き合わせてくれた師匠にはいくら感謝しても足りないぐらいだ。 ケインはそんな師匠の友人らしい。詳しく知らないけども。 「魔族絡みの依頼だったからね。報酬もそれなりによかったし引き受けたのよ」 そう、あたしは魔族絡みの依頼を受けることがほとんどだ。それはなんでかってゆーと魔族相手なら手加減も必要ないし、母の仇でもある。 そして何より魔族は悪だから。正義を信条にするあたしにとって魔族とは、倒すべき敵なのである。 「魔族ねぇ・・・。」 ケインはどうにも興味なさそうな声で適当に返事を返してきた。 「まぁ人間相手よりはやり易いわなぁ」 この男は何が言いたいのだろう・・・?そこそこの付き合いだが、そういった部分はまったく読めない奴なのだ。
ギルドに報告を済ませ、近くの酒場でケインと乾杯を交わす。まぁ仕事終わりの恒例ってやつだ。 「そうそうケイン。あの話考えてくれた?」 ついさっき乾杯したのにもうおかわりを注文しようとしていたケインに話しかけた。 この酒豪め。早すぎなんだよ。もっとゆっくり飲めよ。 「あの話ってーと、勇者募集のアレか?やめとけやめとけ。無理だよおまえさんにゃ。」 「なによ。あたしは大丈夫よ。なにせあたしには特別なチカッぅブッ!!!」 いきなり口を押さえられあたしは舌を噛みそうになった。そして手の主を、睨みつける。 「ちょっ!おい、あまりおおっぴらに言うなよ。変に見られるぜ。」 いろんな意味で変に見られていることに気づけ、このバカ! 「んーーー!むーーー!ぷはぁ!!いきなりあにすんのよ!」 「・・・・お客さん。あんたらアレに行くのかい?」 エール酒を運んできたおばちゃんが声をかけてきた。 「やめときなよ。死ににいくようなもんだわさ、今度の王様は何を考えてるのかねぇ・・・」 そうなのである。先ほどから出てきている、アレとか勇者募集という話、実の依頼者はこの国の王様なのだ。 話の始まりは1ヶ月前、マルコス王子の王位継承の儀での言葉が原因である―――。
「聞けッ国民よ!我らは立ち上がるべきだッ!魔族を根絶やしにし、この世界を我ら人間の手に取り戻すのだッ!」 その宣言とともに、全世界にあるひとつの通達がなされたのがこの勇者募集である。
―――――――――――――― 勇者よ集え! 今こそ魔王を倒し、世界に光を! 我こそは勇者という者は○月×日王城に来られたし。
備考 福利厚生、危険手当あり。 特に特別な力とか持った人歓迎! 今なら聖剣プレゼント! ――――――――――――――
「これは行くっきゃないわよねッ!」 あたしはその瞬間運命を感じた―――特に聖剣のところに。
「でもよー。魔王だぜ?勝てるのかよ。」 「そうだわさ。危険だよ?お嬢ちゃん」 二杯目のエール酒を飲み干しケインが文句をたれる。 いつの間にかおばちゃんも合席して話に加わっている。仕事はどーした。あッこらあたしの肉食った!
「大丈夫!魔王を倒すのはあたしよ!」 真剣な顔でケインに言う。聖剣うんぬんはまぁ冗談で、魔王を倒すのはあたし。いや、あたししか居ない。 これは自惚れでもなんでもなく、あたしのこのチカラがそう決定付けている。 そう、魔族と同等の、このチカラが―――。 ケインにも詳しくは話していない。魔族相手に多少チカラが上がるって言うことだけしか、彼は知らない。
「でもよー・・・」 煮え切らない奴である。まだ文句を言っている。 「あたしは一人でも行くわ。明日、王城に行く。そして魔王を倒すわ」 誰になんて言われようとね。 心の中でそう呟いた―――。
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