とある片田舎に低い丘の麓にたたずむ小さな村落があった。そこへ通じる道は狭く細いつづら折れで既に陽も落ち薄暗い闇の林の中へと続いていた。途中まで辿るとうす闇の向うに古く小さなお堂が見え隠れしている。何やら護摩でも焚いているのか崩れそうな壊れかけた屋根の隙間からは白くぼやけながらも煙りが立ち昇っている。中からかすかに低くかすれた不気味な読経の声が聞こえ漏れてきた。「ノウマク サマンダ バサラダンカン 」その時である、急に脳天の中で耳をつんざくようにけたたましい、まるで下駄を激しく打ち鳴らしたかの様な甲高い音が鳴り響き渡った。次の瞬間、金縛りでもあった様に全身に悪寒が走り、硬直し声さえ出せなくなりパニックになった。背中には重石が負いかぶさったみたいに何かがズッシリと重くのしかかった。しばらくしてまたスウ〜ッと軽く引いて行ったのであるが、一目散に慌てふためきながら、その場を駈けずり去った。一体あの時の体験は何だったのか?ある種の心霊現象なのか?それとも暗い小道を歩いてる時に何かにつまづきぶつかって頭がボウ〜ッとして一時的に飽和状態にでもなったのか?思い出しただけでも背筋が寒くなってくる。
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