それまで平穏だった町が、にわかに騒がしくなった。 警察、機動隊の姿が、町の中に目立つようになる。 新改革同盟のテロ活動は、封じ込められているようである。 さすがに、国家の力は、あなどれない。 「ついに『新改革同盟』が、反政府団体に指定されたようですよ。これから、本格的な弾圧が始まります」 孝雄が言った。 孝雄な話によると、東京で「新改革同盟」による大規模なテロが行われたらしい。 それは、政府の要人をターゲットにしたものだった。 ついに「新改革同盟」は、この国を根本的に変えようと実力行使に出たらしい。 そのためには、今の政府の上層部を倒さなければならない。 それは、誠一も同感だった。
その日、全ての住民の外出を禁止するという放送が、警察の街宣車から流れた。 街宣車は数台が、町の中を走っているようである。 その日は、仕事は無かったが、たまたま、パンでも買おうと外出をしていた誠一は、街宣車についていたパトカーの警官にあおられて、アパートの部屋に戻る。 孝雄は仕事のある日だったが、その仕事を中断して、部屋に戻って来た。 誠一は、呼ばれて、孝雄の部屋に行く。 別に、アパートの隣の部屋に行くくらいなら、構わないだろう。 「何があるのでしょうね」 誠一は言った。 「うん、わかりませんが……」 孝雄も悩んでいる。 「やはり『新改革同盟』と何か関係があるのでしょうか」 「恐らくは、そうでしょう。他に、考えられません」 事の真相がわかったのは、また、翌日のことである。 様子を見ていた労働者から、話を聞いた。
昨日、町を封鎖した機動隊は、数か所にある新改革同盟の拠点に踏み込んだ。 しかし、新改革同盟は、反撃に出ることなく、この町から撤退をした。 地方の一都市での活動よりも、中央での大規模な活動を選んだらしい。 しかし、多少の小競り合いはあったようである。 いくつかの爆発が、町の中で起こった。 機動隊に、十数人の負傷者が出たようである。 新改革同盟のメンバーも、十人近くが、逮捕、連行された。 さらに後でわかったことだが、この新改革同盟に対する弾圧は、日本全国、一斉に行われたようである。 東京、大坂、名古屋といった都市部では、大規模な機動隊と新改革同盟との衝突があったようである。 この日以来、新改革同盟は、地下組織になった。
それからも、誠一の生活は一向に良くならなかった。 唯一の頼みであった「緑の葉」の活動も、制限されたままである。 この先の見えない世の中で、日本はどうなって行くのだろうと考えた。 しかし、それは無駄なことである。 まずは、自分の生活が一番だった。
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