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作品名:恋愛成就祈願 作者:三日月

最終回   3
 直人との交際を始めてから、半年が経つ。
 交際は順調で、何の問題も無い。
 直人と、結婚をしたいと、強く思うようになって行った。
 しかし、自分から、それを言い出すことはできなかった。
 直人の本心がどこにあるのか、香澄は、つかみかねている。
 そんな時である。
 見覚えのある女性が、店にハンバーガーを買いに来た。
「若田さん?」
 と、香澄は、思わず声をかけた。
「はい、そうですけど」
「私、清水だけど、覚えているかな。高校の時に、同じクラスだった」
「ああ、清水さん。覚えているわよ」
「高校を卒業してから、どうしていたの?」
「大阪の大学に行って、そのまま、大阪で就職をして、大阪で、今、生活をしているの」
「今は、実家に帰っているというわけ?」
「ちょっと、会社を休んで、帰って来ているのよ。用事があって」
「そうなの」
 用事が何なのか、香澄は聞かなかった。
 もしかすると、渡辺直人に関することかと、香澄は察する。
 由紀子もまた、時々、店に姿を現すようになった。
 その内に、由紀子と直人が店で顔を合わせるのは、時間の問題だろうと思う。
 このまま、黙っておくのも具合が悪い。
 香澄は考えた末に、直人に話すことにした。
「若田さんが、最近、時々、お店に来るわよ。今、こっちに居るらしい」
「うん。知っている」
「知っているの? もしかして、どこかで会ったりしているの?」
「うん、まあ」
 会っているのか、と、香澄は思った。
 まだ、直人は、由紀子に未練があるのだろうかと思う。
「若田さんのこと、まだ好きなの?」
「好きだよ。嫌いには、なれない」
「私と、若田さんとだったら、どっちを選ぶ?」
「それは、若田さんとは、もう別れた後だから」
「よりを戻すつもりはないの?」
「それは、無い。安心してくれて、いいよ」
「そもそも、別れた理由は、何?」
「若田さんにとって、僕よりもふさわしい人が現れた。そういう訳だよ」
「要するに、若田さんに、他に好きな人が出来たというわけ」
「そういう事になる。簡単に言うと」
 直人は、まだ、由紀子に未練がある。
 それは、香澄にとっては、気持ちのいいことではない。
 このまま、由紀子のことは考えず、直人と付き合って行くことは出来る。
 直人もまた、よりを戻すつもりは無いという言葉は、本心だろう。
 しかし、……。

 香澄はしばらく考えて、決心をした。
 直人の本当の気持ちを、確かめなければならない。
「恋愛が絶対に成就するという神社があるんだけど、行ってみない?」
「神社? 何で?」
「もし、若田さんと、よりを戻す気があるのなら、最後のチャンスよ」
「……、いいよ。若田さんのことは、気にするな。もう、会わないようにするし、話もしないようにする。それで、いいか?」
「よくない。渡辺くんの、心の中に、彼女が居る限りは」
「じゃあ、どうしろと言うの」
「一度、距離を置きましょう。それで、本当に私のことを好きになってくれたら、もう一度、今度は、渡辺くんの方から、告白をして。待っているから」
 香澄はそう言って、一度、直人と別れることにした。
 これからが、あの神社の本当の力が試されるところだろうと思った。
 もちろん、香澄は待つつもりである。
 もう一度、あの神社の力を信じてみようと思った。



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