加納愛子が、会社の中で慌てていた。 それを見つけた孝太郎は、 「どうしたの」 と、聞いてみる。 「笠原さんの姿が見えないの」 と、愛子が言う。 「今、そこに居たと思ったのに」 と、愛子は休憩室の方を指さす。 孝太郎も、休憩室を覗いた。 が、そこに、笠原由香子の姿はなかった。
青野四郎は、病院のベッドの中で意識を取り戻していた。 自分は、死んではいない。 そのことを確認するまでに、少し時間がかかる。 ベッドの傍らの椅子に一人の女性が座っていた。 「君は?」 「笠原由香子よ。知っているでしょう」 「なぜ、ここに」 「あなたの悲鳴を聞いたのよ。それで、ここに飛んで来た」 「飛んで来た?」 「瞬間移動。あなたも使えるみたいね」 四郎は、由香子から、これまでの話を聞く。 四郎の精神の悲鳴が、由香子の心に届いたこと。 そして、由香子はここに飛んで来て、四郎を助け、病院に向かった。 「私たち、超能力者を専門に狙う殺し屋が居るようね。あなたを襲ったのも、そういう仲間の一人かも」 「あの男は、どうしたのですか」 「警察に居るわよ。私が確保した」 「笠原由香子さんの話は、山梨の研究所でも聞きました。やはり、素晴らしい超能力のようですね」 「まだ、未知の部分が多い。私自身にとってもね」 研究所から、医師が一人、車で病院に来た。 笠原由香子は、それと入れ替わりに居なくなる。 怪我の回復を待って、四郎は研究所に戻った。 所長をはじめ、スタッフや三人の超能力者が、四郎を迎える。 「予知は当たったようだな。しかし、君が死ななくて良かった」 浜中所長が言う。 「笠原さんのお陰ですよ。彼女に助けられました」 四郎は言う。 「笠原由香子か。また、研究に協力をしてもらいたいが、彼女の意思次第だから」 所長は、あきらめ気味に言った。
四郎は、それから、瞬間移動を試してみたが、どうもうまく行かないようだった。 自分の超能力は、まだ、自分でコントロールをするまでには行かないようだった。
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