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作品名:秘めた力 作者:三日月

第6回   6
 青野四郎は、最近、どうも体調が優れなかった。
 浜中人材能力研究所に仕事に行く日も、数日に一回になっている。
 研究所には医師もいるので、健康診断をしてもらった。
 体に特に異常はない。
 しかし、脳が多少、興奮状態にあるようだと、診断結果が出た。
 何が影響しているのかは、わからない。
「もしかすると、君の超能力がまた覚醒する前段階ではないか」
 と、医師は言った。
 四郎は、研究所で治療を受けることになった。
 二階の一室のベッドに寝て、医師の治療と、研究員の調査を受けることになった。
 超能力者三人も、様子を見に、部屋に来てくれる。
 しかし、早川美香の精神感応能力は、四郎に不快感を与えた。
 美香が部屋に来ると、何か、ざわざわと嫌な感じが頭の中に起きる。
 しかし、四郎は、その事を表情には出さなかった。
 あまり、美香にも心配はかけたくなかった。

 体調を崩してから二週間が経った頃、四郎は発熱をした。
 熱は次第に高くなり、四十度近い高熱に、四郎はうなされるようになる。
 四郎は、その熱の中で夢を見た。
 得体の知れない男が、自分に近づいて来る。
 男はおもむろに、四郎の腹部を、大きな刃物で一突きにする。
 男が刃物を引き抜くと、四郎は、その場に倒れた。
 そのまま、意識が遠くなる。
 自分は、このまま死んでしまうのか、と四郎は思った。
 そこで、夢から目が覚める。
 同じ夢を何度も見た。
 これは、予知だろうかと、四郎は思う。
 しかし、高熱が下がると、その夢は見なくなった。
 もしかすると、高熱でうなされたために見ただけの夢かもしれない。
 一応、四郎は夢の事を医師に報告した。
 すると、研究スタッフの一人が、すぐに四郎に部屋に来る。
「夢の詳しい内容を、聞かせてくれませんか」
 スタッフにそう言われて、四郎は夢の詳しい内容を話す。
 夢の記憶は鮮やかに頭の中に残っていた。
 四郎は、その内容を詳細に話した。
「これは、ただの夢なのか、それとも予知なのか。青野くんには、見当をつけることはできないか」
「わかりません。このような状態は、初めてなもので」
「しかし、もし、この夢が予知夢だとすれば、大変な事だ。青野くんは、命を落とすことになるかもしれない」
「そのようです」
「怖くはないのか」
「はい。不思議と、実感がありません」
「まだ、何もわからないが、とりあえず、手は打たないといけない。所長や、他のスタッフと相談をしてみるよ」
 研究所の中が、すぐに慌ただしくなって行く。
 一方、四郎の体調は回復に向かい、間もなく、正常に戻った。
 ベッドから起き上がり、普通に生活が出来るようになる。
 北島隼人、早川美香、坂本卓也の三人も、四郎の回復を喜んでくれた。
 もう、早川美香の傍にいても、不快感は全くない。

 研究所では、坂本卓也の透視能力を使って、四郎の夢の場所を突き止められないかと考えていた。
 スタッフ数人が集まり、四郎のイメージを卓也に伝え、卓也は透視を開始する。
 椅子に座って、目を閉じ、精神を集中する。
 数日、その透視が続けられた。
 卓也とスタッフたちは、その透視の過程で、一つの場所を特定する。
 それは、長野県の西部の町。
 春名という地名にある住宅地の中のどこかだろうという事だった。
 四郎は、長野には行ったことがないし、春名という町も、もちろん知らない。
 卓也の透視能力がどこまで信用できるのかわからないが、とてもそこが、自分に縁のある場所とは思えなかった。
 とりあえず、その場所に近づかなければ問題は無いだろうと思う。
 しかし、もし、あの夢が予知だとすれば、四郎は必ず、その場所に行くことになる。
 四郎の予知は、これまで外れたことがない。

 体調の回復した四郎は、借家に戻った。
 研究所には、これまでどおり、毎日、出勤をする。
 しかし、これまでとは違い、四郎もまた、スタッフの研究対象になった。
 毎日、数時間、研究所の部屋の中で、様々なテストを受ける。
 しかし、四郎の超能力は、再発する気配はない。
 二週間ほどテストと検査を受けたが、何の変化もないので、一時、休止をしようということになった。
 四郎には、普通の生活が戻る。
 しかし、日常の中で、あの夢のことを、時々、思いだした。


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