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作品名:美人の占い師 作者:三日月

第1回   1
 会社の忘年会の後、街の繁華街を歩いていると、明かりのついた街灯の下に、一人の女性を見つけた。
 女性は小さな机に座っている。
 机の上には、タロットと水晶玉が置かれていた。
 占い師のようだということは、それを見た隆司はすぐにわかった。

 隆司は人波の中で足を止め、その占い師の方を眺めた。
 髪が長く、異国風の顔立ち。
 結構な美人だった。
 日本とどこかのハーフだろうと思った。

 若い二人連れの女性が、占い師の前で占いを受けていた。
 女性は占いを好むと聞いている。
 隆司は、その二人の女性の後に立った。
 占いよりも、占いをしているその女性の方に興味があった。

 二人連れの女性は、占いに満足をして、帰って行った。
「どうぞ」
 と、占い師に言われて、隆司は椅子に腰を下した。
「何を占いましょうか」
「そうですね。結婚とか」
「お名前と、生年月日を」
「高橋隆司、昭和五十六年十月七日生まれ」
「お相手の方の、名前と生年月日は」
「今、相手はいません」
「そうですか。では、何が知りたいのですか」
「ですから、誰と、いつ頃、結婚をするのかと」
「ずい分と、具体的なことを知りたがるのですね。知ってどうするのです?」
「どうするも何も、客の未来を占うのが、占い師の仕事ではないのですか」
「確かに、それはそうですが、知らない方がいいこともあります」
「僕が、いつ、誰と結婚をするのか、知らない方がいいと?」
「だって、楽しみがなくなるのではないですか? 先の幸福がわかってしまうと」
「では、僕は幸福になれるかどうか。それだけを占ってください」
「それはまた、漠然としていますね。幸福か不幸かは、主観的なものですから」
「それでは、あなたは、何を占ってくれるというのですか」
「希望があれば、何でも占います。今までは、私の個人的な意見ですから、気にしないでください。さて、何を占いますか」
 占い師は、水晶玉を自分の正面に引き寄せる。
 それで、隆司の将来を占うらしい。
 隆司は改めて、何を占ってもらうのかを考える。
 あまり軽々しいことを言うと、また何かを言い返されそうなので、今度は真剣に考えることにする。
「明日、宝くじを買おうと思っているのだけど、それが当たるかどうか、占うことはできますか」
「できますよ」
 そう言うと、占い師は水晶玉に手をかざす。
 しばらく、そのまま、水晶玉を眺めた。
 そして、ゆっくりと手を机の上におろす。
「宝くじは、全て外れます。買わない方がいいでしょう」
「そうですか」
 宝くじは、当たらないものと相場が決まっている。
 占ってもらうまでもない。
「では、ロトの当たり番号はわかりませんか」
「そこまで、正確な予言は無理ですね。もし、それがわかるのなら、私が買いますよ」
 占い師は、そう言って笑った。
 確かに、その通りである。
「それから、もう一つ。また、あなたに会いたいと思いますが、これからも、僕は、あなたに会うことができるでしょうか」
「私は、毎週金曜日の夜に、ここに居ます。会いたくなれば、いつでも来てください」
「それから、お名前を聞かせてください」
「若村静香です。どうぞ、よろしく」
 占いの料金は千円だというので、隆司は千円を払った。
 隆司の後に占いの順番を待つ人がいたので、いつまでも、ここで話し込むわけにはいかなかった。


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