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作品名:草をむしる 作者:三日月

第2回   2
 とりあえず、昇の仕事は屋外での草むしりが続いた。時折、先輩の古畑が、手伝いに来てくれる。古畑は、黙々と草むしりを続けた。
「古畑さんは、この屋外管理課に来てどのくらいですか」
 昇は聞いてみる。
「さあ、そろそろ十年くらいかな」
「十年もの間、草むしりをいていたのですか」
「草むしりばかりが仕事ではないが、まあ、そうだ」
「毎日、同じことの繰り返しで、飽きませんか」
「仕事というのは、だいたい、同じことの繰り返しだ」
「それはそうですが、あまりにも単調ではありませんか」
「僕は、単調な仕事は嫌いではない。第一、責任がないのがいい。気楽に給料がもらえる」
「でも、やり甲斐は感じませんよね」
「仕事に、やり甲斐を求めてはいない。仕事にやる甲斐を求めるのなら、他に仕事を探せばいい」
「じゃあ、古畑さんの生き甲斐は、何ですか」
「生き甲斐か。それほど考えたことはないが、今のところ、絵を描くことかな」
「古畑さんは、絵を描くのですか」
「趣味で、油絵を描いている。週に一度、土曜日には先生について勉強もしているよ」
「それは、本格的ですね。ぜひ一度、見てみたい」
「一応、個展も開いたりしているから、今度、招待するよ」
 どうも、古畑先輩にとって、会社でのこの仕事は給料をもらうための手段で、本業は絵を描くことという事らしい。見方を変えれば、いわば、古畑先輩は売れない画家といったところだろうか。しっかりとした一本の筋があれば、この会社でこの仕事を続けることも可能だろう。古畑先輩にとってこの屋外管理課は、かえって居心地のいいところかもしれないというのがわかった。


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