とりあえず、昇の仕事は屋外での草むしりが続いた。時折、先輩の古畑が、手伝いに来てくれる。古畑は、黙々と草むしりを続けた。 「古畑さんは、この屋外管理課に来てどのくらいですか」 昇は聞いてみる。 「さあ、そろそろ十年くらいかな」 「十年もの間、草むしりをいていたのですか」 「草むしりばかりが仕事ではないが、まあ、そうだ」 「毎日、同じことの繰り返しで、飽きませんか」 「仕事というのは、だいたい、同じことの繰り返しだ」 「それはそうですが、あまりにも単調ではありませんか」 「僕は、単調な仕事は嫌いではない。第一、責任がないのがいい。気楽に給料がもらえる」 「でも、やり甲斐は感じませんよね」 「仕事に、やり甲斐を求めてはいない。仕事にやる甲斐を求めるのなら、他に仕事を探せばいい」 「じゃあ、古畑さんの生き甲斐は、何ですか」 「生き甲斐か。それほど考えたことはないが、今のところ、絵を描くことかな」 「古畑さんは、絵を描くのですか」 「趣味で、油絵を描いている。週に一度、土曜日には先生について勉強もしているよ」 「それは、本格的ですね。ぜひ一度、見てみたい」 「一応、個展も開いたりしているから、今度、招待するよ」 どうも、古畑先輩にとって、会社でのこの仕事は給料をもらうための手段で、本業は絵を描くことという事らしい。見方を変えれば、いわば、古畑先輩は売れない画家といったところだろうか。しっかりとした一本の筋があれば、この会社でこの仕事を続けることも可能だろう。古畑先輩にとってこの屋外管理課は、かえって居心地のいいところかもしれないというのがわかった。
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