20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:共振 作者:三日月

第6回   6
 ストーカー男に襲われた洋子の恐怖は、相当なものだったらしい。微弱な心の揺れは、昭雄も時折、感じていた。
 美和子の話によれば、洋子は賢治のところに身を寄せることにしたらしい。その方が安全だろうと、昭雄も思った。
「川上さんは、篠原さんのことが好きなのかな」
 昭雄は美和子に聞く。
「それは、好きだと思うわよ。共通の心を持つ人は、そうそう、見つけられるものではないと思うから」
「それなら、里中さんは、僕のことが好きなのかな」
 昭雄は勇気を出して聞いてみた。
「そうね。そういうことになるのかな」
 はっきりとしない返事だったが、好きだと言ってくれたことは確かだった。
 昭雄は、内心、喜んだ。
 お互い、両思いということである。
 しかし、その話を深く掘り下げることはやめておいた。あまり深く追求すると、幸せが逃げて行きそうな気がした。
 一方、洋子の方である。
 洋子が、賢治の部屋に住むようになってから一週間が経った。
 そして、次の土曜日、昭雄は美和子と一緒に賢治の部屋を訪れる。
 微弱な心の揺れは、美和子も感じていたようだった。美和子も、洋子のことを心配していた。
 部屋に上がると、洋子は畳の上に敷かれた布団の中で横になっていた。
 一見して、以前よりも痩せているのがわかった。
「大丈夫ですか?」
 美和子は思わず、声をかける。
「あなたたちが来てくれると、随分、気分も楽ね」
 洋子は言った。
「最近は、僕が傍にいないと心が落ち着かないらしい。大学も、しばらく休んでいる」
 賢治は言う。
「病院には、行った?」
 美和子は聞く。
「病院に行って、どうするの? 私たちのことが、医者にわかるとは思えない」
 洋子は言う。
「やっぱり、ストーカーの一件が、原因ですか」
 昭雄は言う。
「多分ね……」
 美和子は言った。
 昭雄は心の揺れを感じる。それは、他の二人も同じはずだった。
「敏感になりすぎているのよ。私の心が」
 美和子は言う。
「落ち着かせる方法はあるのですか」
 昭雄は言う。
「わからない。とりあえず、今は、僕が傍に居ることが一番だ」
 賢治は言った。
 洋子の心は、次第に落ち着いて来たようだった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2095