昭雄は毎日、夜の十時頃まで勉強をしていた。学校の授業の予習と復習、それと宿題は欠かさない。根は真面目な男である。 その日、午後の十時を回り、いつものように勉強を終えて風呂に入ろうとした時、昭雄はふと、妙な胸騒ぎを感じた。 風呂に入っても、胸騒ぎは消えない。そして、風呂から出て五分ほどした頃、その胸騒ぎはふと途切れた。 その直後、部屋の中で携帯電話が鳴った。それは、美和子からのものだった。 「今、何か、感じた?」 美和子は言う。 「感じた。おかしな胸騒ぎ」 「何か、あったのかな。篠原さんと、川上さんにも、電話をしてみる」 「何かわかったら、また、僕の方にも電話をして」 「わかった。そうする」 一度、電話を置き、昭雄は本を読みながら、美和子からの電話を待つ。 二十分後、再び、電話が鳴った。 「原因がわかったわよ。川上さんが、この間、話をしていたストーカー男に襲われたって」 「それで、大丈夫だったの?」 「一応、大丈夫だったようだけど、今、篠原さんが、川上さんのところに向かっている」 「川上さんの心が、僕たちに伝わったというわけなの?」 「そうだと思う。私たちの心は、どこかでつながっているのよ」 「誰かの心が揺れると、僕の心も揺れるということか」 「いわば、魂の共振ね」 「共振か」 昭雄は、その言葉に共感した。 自分は一人じゃない、という気持ちがする。
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