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作品名:別れ 作者:三日月

第2回   2
 三日後の水曜日の午前十時。電話で予約を入れていた依頼者が、時間通りに事務所に姿を現した。小柄で、品のいい感じの老女である。付添らしい、スーツ姿で背の高い男性が、隣に立っていた。一目で、裕福な家庭の人間らしいということはわかる。
「こちらに、どうぞ」
 広美は老女を応接室に案内した。飯田も一緒に応接室に入り、話を聞く。
 老女の話は、一時間ほどで終わった。
「どうも。それでは、よろしくお願いします」
 老女は頭を下げて、事務所を出て行く。話はまとまったらしい。
 飯田は、すぐに報告書を作成し、博に渡した。博はそれに目を通し、必要事項をパソコンに打ち込む。
 依頼者の名前は門脇由美子。年齢は七十二歳。住所は東山二丁目で、電話番号も書かれている。依頼の内容は、行方不明の息子を探して欲しいということだった。
 依頼に対する報酬がすごい。まずは前金で五百万。さらに、息子が見つかると一千万を払ってくれるという。息子が家を出たのは、今から三十年も前のことだった。これまでに一度も、息子から連絡はないという。
 博は、広美から、さらに詳しい話を聞いた。
 息子の名前は、耕三という。耕三が家を出たのは、父親に結婚を反対されたのがきっかけだった。耕三は、勘当同然に家を出て、相手の女性と結婚をしたそうである。結婚をして耕三がどこに住んでいるのか、何をしているのか、全然わからないということだった。唯一の手がかりは、老女が覚えているという、耕三の結婚相手の名前である。
 結婚相手の名前は「ハナオカサチコ」といったらしい。漢字はわからない。三十年前の当時、その女性は、石井町に住んでいたということだった。
 情報は、それだけである。
 後は探偵としての飯田の腕に頼ることになる。


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