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作品名:拳銃 作者:三日月

第3回   3
 光太郎は新聞を取っていない。
 新聞はいつも夕食を食べながら、定食屋で読むことにしていた。
 その日もいつものように、定食を食べながら新聞を読む。その地方面の見出しには、
「暴力団射殺される」
 と書かれていた。
 近頃、この町では、暴力団の抗争が激しくなっていた。細川組と大野組が、この町の東と西で、縄張り争いをしている。
 あの夜、光太郎にぶつかった男も、それを追いかけた二人の男も、暴力団の組員だろうと光太郎は思った。今、押入れの中に入れてある拳銃も、元は暴力団の所有物だったのに違いない。拳銃を所有することは法律違反だが、暴力団にそういうことは関係ない。
「いい迷惑よね」
 突然、横から声がして、光太郎は驚いた。見ると、横から恭子ちゃんが新聞をのぞいていた。
「その事件、私の住んでいるアパートの近くであったのよ。銃声も聞こえたし、男の人の叫び声や、怒鳴り声も聞こえた」
「そうですか。危ないですね」
 光太郎は答える。光太郎は恭子と、雑談をするのは初めてのことだった。
「警察もすぐに来たし、野次馬も多くて、夜、遅くまで騒々しかった」
「恭子さんも、見に行ったのですか」
「私は、部屋の窓から見ていただけ。だって、怖いから」
「それがいいですよ。夜に外に出るのは危険です」
「でも、このお店が終わるのは九時だから、それから部屋に帰らないといけないの。ちょっと、怖いかな」
「よければ、僕が送ってあげようか」
 と、光太郎は言ってみる。
「本当? そうしてもらえると、心強い」
 恭子は、意外にも、光太郎の申し出を受け入れた。
「だったら、九時頃、店に迎えに来ますよ。待っていてください」
 光太郎は、定食を食べ終えると、うかれて店を出た。
 これまで女性にもてたことのない光太郎にとって、女性の相手を務めるのは初めてのことだった。うかれるのも、無理はない。


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