仕事は土曜日と日曜日が休みだった。 休日はいつも、大抵、昼近くまで寝ている。 しかし、その日、土曜日は朝早くに目が覚めた。光太郎には、今日は考えていることがあった。 軽く朝食を食べると、外出の準備をした。押入れの中から、隠していた拳銃を取り出す。 光太郎は、拳銃を紙袋に包み直して、部屋を出た。 光太郎は、アパートの裏にある駐車場に車を置いていた。今から約十年前に中古で買った軽四輪で、今でも大切に乗っている。 光太郎は車に乗り、一時間ほど、郊外に向けて走った。光太郎は、人気のない山の中に向かう。できるだけ、山の奥深くに入り、光太郎は車を降りた。助手席に置いてあった紙袋を手にして、中から拳銃を取り出した。 拳銃は回転式で、六発の弾丸を、撃てるようになっている。光太郎は、拳銃に弾を一発だけ入れてみた。 ここで、試射をしてみるつもりである。この拳銃が本物であるということを確かめたいと思っていた。 もちろん、光太郎は拳銃を撃ったことはない。どれほどの衝撃があるのか、見当もつかなかった。 光太郎は、前方、十メートルほど先にある木の幹に向かって、拳銃を構える。 慎重に引き金を引くと、乾いた発砲音と同時に、軽い衝撃が拳銃を構えた手首を襲った。 木の幹に弾丸が命中する。鈍い音と同時に、木の皮がめくれ、穴があいた。 やはり、本物だ、と光太郎は思う。今からでも遅くない。警察に持って行くのがベストかと思ったが、やはり、その気にはなれなかった。 男には、本能的に、武器や兵器に憧れを持つものである。拳銃を持つことで、自分が強くなったような気もする。 光太郎は、一発、発砲をしただけで、車で山を降りる。 そのまま、アパートの部屋に戻り、また、拳銃を押入れの中に入れた。
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