光太郎は事件をテレビのニュースで知った。 光太郎は、事件に衝撃を受けた。 もちろん、犯人は光太郎ではない。その光太郎が衝撃を受けたのは、身近で起きた事件の悲惨な状況だった。 女性は正面から、額を拳銃で撃ち抜かれていた。犯人の冷静さと狂気を、その状況から読み取ることが出来た。 自分の部屋の中にも、今、拳銃がある。 もしかすると、自分もまた、同じような事件を起こさないとも限らないと感じた。 光太郎は、押入れの中の拳銃を取り出し、それを目の前にして考えた。 これはやはり、どこかに放棄するべきだろうか。 誰にもわからない場所に、捨ててしまうのが一番いいのかもしれない。 今回の事件が起こったのも、恭子が住んでいるアパートの近くだった。 定食屋で、恭子は言った。 「私の部屋にも、また銃声が聞こえたのよ。怖かったんだけど、近所の人たちが家から次々と出て来るのを見て、私も部屋を出たの。現場には、まだ女の人が倒れていて、頭から血を流していた。誰が通報したのか知らないけど、救急車が来て、それから、警察も来たわ。私の部屋にも、刑事が聞き込みに来た。刑事なんて、見たのは初めてよ」 「物騒だね。暴力団の仕業かな」 光太郎は言ってみる。 「どうだろう。でも、女の人を殺すなんて」 恭子は、今のアパートから、どこかに引っ越しをしようかと考えていると言った。 確かに、その方がいいかもしれないと光太郎も思う。 今回の事件の犯人は、暴力団の組員ではないかもしれないと、光太郎は思っていた。 根拠はないが、直感としてそう思った。
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