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作品名:拳銃 作者:三日月

第12回   12
 五人の男の所在を、一人ずつ探し出し、事件当時のアリバイを聞いた。太田と中村の捜査の結果、アリバイのない男が一人いた。
 男の名前は北川信也。年齢は二十七歳である。井川一美とは今年の始めに知り合い、二か月ほど交際をしたということだった。
 事件当日は、部屋で寝ていたということである。もちろん、それを証明する人はいない。
 北川信也の周辺を調査してみる。彼はいわゆるフリーターで、現在は、宅配会社の倉庫でアルバイトをしていた。
 同じ倉庫で働いているアルバイト仲間から話を聞いてみる。
「ここのバイト仲間で、北川くんと親しくしていた人は、あまりいないんじゃないかな。彼はあまり喋らなくて、取っ付きにくい人だったから」
 一人の女性アルバイトは言った。
「彼は、ボクシングジムに通っているそうだから、そちらの方で話を聞いてみればどうでしょう」
 と、彼女は付け加えた。
 太田と中村は、ボクシングジムを探して、そこに行ってみる。
 ジムの会長に話を聞いた。
「北川は、真面目な男ですよ。熱心に練習に取り組んでいます。まさか、彼が事件を起こすなんて、考えられません」
「北川くんと親しかった練習生はいますか」
 太田は聞く。
「今はもう、ジムを辞めてしまいましたが、片山という男と親しくしていました。彼の住んでいるところの住所を教えましょうか」
「お願いします」
 太田は住所をメモする。
 太田と中村は、ジムを出ると、住所の場所に向かった。
 そこにあったのは古いアパートである。その二階の三号室が、片山の住んでいる場所だった。
「こんにちは」
 と声をかける。片山は、部屋の中にいた。
「警察の者ですが」
 と、太田は片山に警察手帳を見せる。
「君の友達の、北川信也について、話を聞きたい」
 太田がそう言うと、片山は太田と中村を部屋の中に入れた。
「北川くんは、井川一美という女性と交際をしていたようですね。知っていますか」
「はい」
「井川一美が殺されたことは知っていますよね」
「はい」
「北川くんが、彼女に恨みを持っていたということはありませんか」
「北川が犯人だということですか?」
「それは、まだわかりません。ですから、こうやって、話を聞いているんです」
「北川に聞いてください。僕は何も知りません」
「何か知っているのなら、話してください。もし、何か重要なことを隠していれば、後で罪に問われるかもしれませんよ」
 太田は強く、片山に迫る。
 すると、しばらく片山は黙っていたが、ついに、話をしてくれた。
「恨みを持っていたのは、確かだと思います。北川は、彼女に振られただけでなく、かなりのお金をだまし取られたようですから」
「詐欺にあったということですか」
「それは、どうでしょう。北川は、彼女のことが好きでしたから、その時はすすんでお金を渡したのだと思います」
「それで、振られた後に、恨みを持ったというわけですか」
「そうだと思います」
 太田と中村は、片山にお礼を言って部屋を出た。
「動機は十分だな」
 太田は中村に言う。
「ですが、別に、片山が隠していたところで罪には問われないでしょう」
「嘘も方便といったところだ。真実がわかれば、それでいい」
 太田と中村は車に乗る。
 次は、北川信也の行動を監視する番だった。



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