太田は署の休憩室で、ソファーの上に横になり、昼寝をしていた。 昨夜は、あまり寝ていないので、睡眠不足である。仕事で忙しかったわけではなく、飲み仲間と集まって麻雀をしていた。特別、麻雀が好きというわけではないが、これも付き合いである。 「ちょっと、起きてください」 太田は、中村に肩をゆすられて目を覚ました。 「事件です。出かけますよ」 中村に言われて、太田は体を起こす。 「事件? 何があったんだ」 「殺人事件です。南田町二丁目で、女性が射殺されたようです」 射殺? 太田は驚いて、一変に目が覚めた。 すぐに署を出て、パトカーに乗り込む。ハンドルを握るのは中村だった。 「犯人は?」 太田は聞いた。 「目撃者はいません。通報者は銃声を聞いて、家を出てみると、女性が倒れていたということです」 「一からの捜査だな。また、眠れない日が続くのか」 現場に到着すると、野次馬が集まっていた。現場の整理をしていた警官に状況を聞く。 女性の名前は井川一美。年齢は25歳。これは、所有していた運転免許証からすぐにわかった。被害者の住んでいる家も、現場の近くにあった。恐らく、外出先から、帰宅の途中だったのだろう。 警官の話によれば、被害者は、正面から、額を一発、拳銃で撃たれていた。もちろん、即死である。遺体は今、病院に運ばれている。死因は、解剖結果を待つまでもないだろう。 太田と中村は、さっそく周辺の聞き込みに入った。 顔見知りの犯行か、それとも、通り魔的犯行か。そこから詰めていかなければならなかった。
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