両親が死んだのは俺が中3の時だった。電車事故だ。駅で酔っ払いが喧嘩をしていて、そのとばっちりだったそうだ。現場を見たわけではないから詳しくは知らないが、暴れた奴らが両親にぶつかり両親は線路に落下。そこにブレーキの間に合わない電車が突入してしまったと、人づてにそう聞いた。 大人達が色々と難しい話をして説明されたが、正直解らなかった。ただ泣き続ける小さな妹を、必死に抱きしめていた。
「和之君、那奈ちゃん。これからはおばさんの所で暮らしましょうね?」
ずっと何か揉めていたようだったが、結局俺が理解したのはそれだけだった。妹はまだ泣き止まなくて、暮らす場所よりもそれだけが気になっていた。
「おにーちゃん!おーにーいーちゃーん!」 「わぁ!何だよ!」
どんっと激突するように那奈が後ろから抱き付いてくる。あからさまな猫撫で声で、こんな風にくっついてくるのも珍しい。聞くまでも無く、何かねだる事があるのだろう。ついこの前冬物のコートやらワンピースやらを買ってやったばかりだから、さすがに服ではないだろう。だが、えへへなどと可愛らしく笑って見せてるあたり十中八九お小遣いをくれというのだろう。
「急に千鶴が遊ぼうっていうからさぁー。」 「お前な、この前洋服買ってやったばっかりだろ!」 「だってぇ!それはそれ!これは友達づきあい!お兄ちゃん、友達は大切にしろっていつもいってるじゃない!ね?」
お願い、と拝み倒される。ただでさえたった一人の家族で大切なのに、六歳も年下の妹ともなれば可愛くないはずが無い。自他共に認めるシスコンの俺が、那奈のお願いに勝てるわけも無かった。あっけなく財布を取り出し、そこから今月の自分の小遣いとして取っておいた分を渡してしまう。
「・・・いいけど。あんまり暗くなる前に」 「解ってる!有難う!お兄ちゃん大好きっ!いってきまーす!」
早く帰れよといいたかったのに、聞いてすらもらえなかった。親の心子知らずとはよく言ったものだ。だが、それでも可愛い妹が楽しく過ごしているのなら俺は全く苦ではなかった。
「・・・・・・・・都合のいい時だけ大好きとか言うなよな。」
那奈の気まぐれなその一言に、俺はあっさり騙されていた。
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