「匠様とお嬢様の関係?なんでそんなこと聞くんだよ。ばあちゃんに関係あるのか?そんなこと。」 帰宅した加賀美は玄関に入るなりお玉を持ったヤエに捕まり質問攻めにあった。 「あるんだよ。これから一緒に仕事をしていくんだろ。だったら大有りじゃないか。あの2人がどういう間柄かってのは大きな問題だよ。」 年寄りといってもヤエはまだ60を少し過ぎたばかりなので頭もカクシャクとしている。ことに男女間の話となると興味津々。目が輝いてくるのだ。 「オレも!ちょっとしか知らないんだ。2人が幼馴染みってことと、匠様の身の回りの世話をお嬢様がやってるってことと、料理は他人が作ったものは一切口にしない。ってことくらいなんだ。あとは知らない。」 祖母の勢いに押され、怖々と答える加賀美。 「それだけ?それだけってことはないだろうよ。おまえ、何か隠してないかい。」 「か、隠すなんて。本当に知らないんだよォ!勘弁してくれよ。」 「じゃ、お互いどう思ってるんだい?そのくらいは知ってるんだろ?」 「し、知らないよォ、そんな事。オレたち調理場の人間がそんなことまで知ってるわけないだろ。」 「本当かい? マァいいだろ。私が見た限りではお互い好きなのにプライドがジャマしてるって感じだね。こりゃ面白くなってきたよ。ウフフフフ。」 含み笑いをし肩をすくめる祖母に、加賀美は内心、またばあちゃんのお節介が始まった、と思った。 「何をしようとしているのかわからないけど、匠様には気をつけてくれよ。普段は怒ったりしないけど、怒るとものすごーく怖いんだ。執事の榊原さんでも相手できないくらいなんだからな。・・・ああ!今からもう恐ろしいよォ・・・」 半べそを掻き始めた孫を何とかなだめ、ヤエは夕食の準備に取り掛かった。
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