それから1週間あまり、学校では特に何事もなく過ぎた。沙織の容態もほぼ快復し、登校できるようになった翌日。年に一度は必ず行なわれる行事。次年度の生徒会役員選挙が2週間後に告示されると発表があった。現生徒会長が推したのが、あろうことが恋敵であるはずの匠であった。それを同級生から聞いた匠は、会長にしてやられた、と思った。沙織の件でひどく傷つけられた会長がこんな形で仕返しをしてきたのだった。役員その他、教師たちまでもが全員同意しているという。いくら匠がタフな人間でもこれ以上役目を押し付けられては身体が持たない。正式が依頼がある前に手を打たねばならない。匠はかねてからこいつなら、と目星をつけていた隣のクラスの吉本という生徒を立候補させることにした。もちろん根回しは充分にしての話だ。吉本も匠の後押しということで立候補に前向きになり、自らも周囲にそれとなくPRすると約束してくれた。そういったこともあって、実際会長から正式な依頼があった時には既に遅く、匠は吉本の選対委員長として名乗りを上げていた。匠の思惑通り、告示の日には誰一人立候補する生徒がおらず、吉本の無投票当選となった。一般社会の選挙とは異なり、この場合再選挙というケースも考えられたが、天下の周防匠が吉本を推している限り、何度やってもムダだと誰しもがわかっていた。そのおかげで選挙は成立し、吉本が新生徒会長に任ぜられることとなった。彼が会長になったことで、睡蓮政治を懸念する教師も一部あったが、周防匠が仕切っている限り、学校の体質そのものが悪化することは考えにくいため、まぁいいだろう。ということでケリがついた。面白くないのは前会長を主とする一派である。会長にしてみればこれで周防匠の鼻を明かせると目論んでいたものがことごとく失敗したからだ。自分が在校中に何とか仕返ししてやろうと躍起になるのも無理はなかった。
|
|