「いいか。今日は長い1日になる。各自、仮眠してから9時にここに集合だ。オレと森河はその足で朱雀公園に向かう。城瀬はここで待機。譲二は連絡があるまでお嬢さんの見張りだ。いいな。では、解散。」 駒木の合図で3名は事務所を出て行った。黒猫のジョージは再び沙織のいる倉庫に取って返し、彼女が縛られたまま横たわっているのを確認した。そして用心のためにと、ハンカチに含ませたクロロフィルムを嗅がせ、沙織が気を失うのを見てから自分もその場にうずくまった。現在の時間、午前4時30分。約束の時間まであと4時間半・・・
秀一に経過を報告すると匠と沢木は再び外へ飛び出した。時計を見ると6時半を回ったところである。どちらともなく腹がグーっと鳴った。考えてみれば2人共、昨日まる1日何も食べていなかった。匠などはおとといから殆ど口に入れてはいなかった。 「沢木、何か食べよう。」 「え? そんな暇ないでしょう。」 「オレ、おとといから何も食べていないんだ。」 「そうなんですか! わかりました。何か調達して来ましょう。匠さんは車に乗っていて下さい。」 沢木は得宗寺家の厨房に走り、料理長に手早くサンドイッチを作ってもらい、コーヒーをポッとに入れると車に舞い戻った。 匠は助手席でそれをパクつき、沢木もハンドルを握りながら片手でサンドイッチを腹に流し込んだ。2人の腹はものの10分もしないうちにそれらを全部平らげてしまった。ようやく人心地つくと、匠は意外なことを言った。 「沢木。車を警視庁へ付けてくれ。」 「え? けいさつ・・ですか?」 「そうだ。」 「でも沙織さんは。」珍しく沢木がうろたえた。 「大丈夫だ。いる場所はわかっているんだから、捕り物はプロに任せた方がいい。」 「わかりました。」 その他の理由は聞かず、沢木はアクセルを踏み込んだ。
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