「榊原にツェンベル皇子の行状やプロフィールを調べさせた。あれで年は35だそうだ。まぁ、そうは見えんがな。 結果、あいつの異常な趣味が判明した。つまり狩猟と若い男あさりだ。常にホストまがいの男を侍らせて昼夜問わず色欲に耽っている事もわかった。それで榊原に大至急そういった傾向の若く美しい男を集めさせた。もちろん金さえ貰えばどんな相手でも構わない、という条件つきでだ。そしてあの男を選んだ。おまえよりも先にあの男を引き合わさなければならなかったから苦労した。あとのことは心配する必要はない。」 匠の説明でも沙織には納得できない部分があった。 「お父様は皇子のその。」 その言葉を口にするのもおぞましい、とばかりに沙織は語尾を濁した。 「おそらくはな。あの人にぬかりはないだろう。知らなかったのは榊原だ。これは職務怠慢だ。」 「知っていて私をあんな人のところに。」 思い出しただけでもゾッとする。 「想像だが、オレを試していたような気がする。」 「試す? でも、どうして。」 「見合いの席を設けることでオレがどう出るかを、だ。」 「え?」 「まんまと一杯食わされた気分だ。」 「じゃ、私は。」 「利用されたんだ。だからおまえはバカなんだ。あの人の思惑も読めず、表面の話だけで倒れるなんて。何年あの人の子供をやっているんだ。まったくおまえの頭は脳みそが溶けてしまっているようだな。 まぁいい。今に始まったことじゃない。」 むっつりと外を眺める匠に沙織はポッと顔を赤らめ下を向いた。 「ごめんなさい。 私、匠さんに迷惑をかけてしまったのね。」 「別に、謝らなくていい。 これであの人の魂胆がわかった。」 「え?」 「どうしてもオレを担ぎ出したいらしい。」 「どういうこと?」 素朴な疑問に横目でジロリと一瞥し、鼻で笑う匠。 「おまえに言ってもわからん。」 撥ね付けられ再び下を向く沙織。
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