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作品名:TAKUMI 作者:Shima

第126回   第126話
  その時、真田の携帯が鳴った。ちょっと失礼、と真田は断って電話を耳に当てた。
「はい。おお!矢田君か。どうした・・・・うんうん。なに! わかった、すぐ行く!」
部下の1人である矢田刑事からの電話は新しい情報をもたらしたようだ。
「すみません。現場に戻らなくてはならなくなりました。」
そう言ってすまなそうに立ち上がる真田に匠は自分も同行して良いかどうか尋ねた。
「ええ、もちろんです!いやぁ、周防さんに一緒に行っていただければそれだけ手間が省けます。どうかよろしくお願いします!」
2人は共に長い回廊を玄関へと向かった。
  「お出かけでございますか?」
背後から榊原の声がした。びっくりして振り返る真田をよそに泰然と立ち止まり、匠は煩わしげな目を向けた。
「ああ。」
「お帰りは。」
「わからない。沙織にもそう伝えておいてくれ。」
「かしこまりました。」
「では参りましょうか。」真田に向けられた匠の表情は一変し穏やかになっている。真田は言葉なくただ匠の後をついて行くしかなかった。
その後、匠の外出を知らされた沙織はただ淋しそうに微笑んだ。

  現場での調査は一応済んだ。ということで一旦警察関係者は引き上げていたので匠たちは直接署に向かった。真田に電話をかけた矢田は彼らを玄関まで迎えていたが、匠が一緒に車から降りるのを見ると何やらコソコソと真田に耳打ちした。それに対し真田は安心しろというように矢田の肩をポンポンと叩き、先に立って署内に入った。そのすぐ後を匠が続き、矢田は最後に匠の背中を見る形で中に入った。
  8畳ほどの小会議室で朱雀高の制服を着た女性徒が所在無さげに腰掛けていたが、真田の後ろから匠が鴨居を気にしながら入っていくと、小さく「アッ!」と声を上げた。彼女の目は信じられないものを見た、と物語っているようだ。3人がそれぞれ椅子に掛けても彼女の視線は匠に釘付けになったまま凍りついている。匠がフッと笑いかけると、途端に顔が真っ赤になった。


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