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作品名:TAKUMI 作者:Shima

第117回   第117話
   「・・・・それで、第3者の存在とは?」
外での立ち話は少しの間でも足元から寒さが滲んでくる。匠は真田を促し剣道部の部室へ連れて行った。
  部室の中は当番の者が電気を入れてくれたのか、ヒーターがほどよい具合に効いていて2人を優しく迎え入れた。全国レベルの剣道部は予算もたっぷり取れるため、部員専用の応接室なども備え付けられている。部室というより豪奢な一戸建ての家、といった感じである。そして匠自らコーヒーを淹れ真田に勧めると改めて第三者の存在を聞いた。
「ええ。吊られたロープにはトイレが洋式だったせいで踏み台を要せずだったようですが、入り口に遺体のものとは明らかに異なる靴の跡がありました。もちろん発見者のものでもありません。彼の話では掃除は最低でも1日3回は行なっているはずだということでした。それにわずかでしたが土も残っていました。乾燥はしていましたが古いものではないようです。ですから他殺のセンもあながち拭い切れず困っていたところです。」
「土のついた靴・・・か。 その他には。」
「今のところありません。これからの捜査で新しい手掛りが発見されるとは思うのですが、と言って自殺のセンも捨て切れません。表立って争った形跡もありませんでしたし、自らこういうカンジで・・・首にロープを掛けたようなんです。」
真田は手振りでロープを自分の首に掛ける真似をした。
「自殺というには靴跡が気になり、他殺というにはロープの掛け方・・・か・・・難しいですね・・・それで? ぼくにどうしろと仰るんです?」
「それなんです!」
待ってましたとばかりに真田はポンと膝を叩いた。
「それ、とは?」
嫌な予感がする。と匠は思った。また厄介な事に巻き込まれそうだ・・・
「ええ!是非、周防さんのお力をお貸しいただけないかと!以前、周防さんの学校が朱雀高と聞いていたのを思い出し、なんとか協力をお願いしたいと! お忙しいのは重々承知しておりますが、そこをなんとか、お願いできないでしょうかッ!」
勢い良く頭を下げすぎてテーブルにガツン!と額をぶつける真田を見て、『予感的中』の文字が目の前を通過した。匠は小さくため息をつくと、いったんうつむいてからゆっくり顔を上げるとにっこり笑った。


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