20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:TAKUMI 作者:Shima

第109回   第109話
   「この婚姻でぼくが得る権限はどのようなものでしょう。 そうですね、たとえば・・人事に関すること・・いかがでしょう。」
「権限? 人事? 具体的に言いなさい。」
「得宗グループのみならず、公の機関も含めて、です。」
「ある程度は可能だ。だが、なぜそんな事を聞く。」
「ええ、ちょっと。ただ口にすると差しさわりがあるので言えません。」
「私情を挟むことは許されないぞ。」
「わかっています。しかし部下をないがしろにし、他人を見下している人間に役職を与え、大きな顔をさせておくのは笑止千万です。他人の振り見て我が振り直せ。という最も悪い見本を見せてもらい、ぼくとしてはいい勉強になったと思います。それでもああいった人間には遭いたくありません。いかがでしょうか。」
匠の言葉に秀一は目を細めた。それは彼がよく見せる怒りの表情だった。
「そいつの名は。」
「言わずともすぐおわかりになると思います。有名らしいですから。」
「そういうことならおまえの好きにするがいい。」
「ありがとうございます。早速着手させていただきます。それからお約束いただいた日下たちへの報酬の件ですが、今までのところ特に希望が出ていません。それではいつまでたっても埒が明きませんので、臨時ボーナスということで金一封を出したらいかがでしょうか。もちろん暮のボーナスも例年より弾みましたが、別口で謝礼金として出せば良いと思うのですが。」
「うむ。おまえの思うとおりにしなさい。」
「はい。ではすぐ手配いたします。」
そう言って立ち上がろうとした匠の袖を秀一は引いた。改めて腰を下ろす匠。
「何でしょうか。」
「おまえの、希望はないのか。今の2件は双方、他人事だ。」
「いいえ。今のぼくには望むものはありません。それに・・望んでも詮無い事です。・・・強いて言えば、あなたのご期待に副えるよう頑張ることでしょうか。」
「そうか。  わかった。」
「では、手配してまいります。」
「私の部屋の電話を使いなさい。誰に連絡するにしても直通で通じる電話だ。」
「はい。そういたします。」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 14741