「さて、と。たしか初対面だと思いますが。」 「お忙しいところお呼び立てして申し訳ありません。 回りくどい言い方はせず単刀直入に窺います。よろしいですか。」 「もちろんです。もって回った言い方はぼくも嫌いですから。」 「今朝、さお、あ、いや、榊原沙織という女性に会いましたね?」 「ええ、サオリさん!いやぁ、あんなに美しい人には会った事がありません。一目ボレってやつですか、速攻でデートに誘ったんですけど断られてしまいました。 でも、それが何か。」そう言って宮沢は天真爛漫な笑顔を見せた。匠はその笑顔に好感を持った。と同時に畏怖も覚えた。こういう人間が意外に危ないのだ。一度カン違いをさせてしまうといずれアダになってしまうことが大々にしてあるものだ。 「こちらの早合点ならあらかじめ謝ります。今日は断られたと仰いましたが、これから先あの子を誘われる気持ちはありますか。」一応、遠まわしに聞いてみた。 「誘う? ああ、デートですね。もちろんですよ。あんな美人、今まで見たことがないですからね! でも、なぜそんな事を聞くんです? あ、もしかしたら、彼氏、ですか?」 それまでの笑顔が無くなり、片方の眉がつり上がった。 「厳密にいえば少々違いますが、そう解釈していただいてもまァ結構です。」 「なんだか回りくどい言い方だなァ。はっきり言って下さい。はっきり。」 「そうですか。 そうまで仰るなら言いますが・・私はあの子のいいなずけです。2〜3週間後には婚約し、私の誕生日に入籍する予定です。」 匠にしてみれば普通に言ったつもりだったが、宮沢にはかなり奇異に聞こえたようだ。 「いいなずけ? どういうことです? もしそれが本当なら、今どき随分古臭い話ですね。それに本当にあなたが相手なんですか? なんだか他人事のようにぼくには聞こえましたけど。それに誕生日ってどういうことですか?」
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