2日後。勝和の葬儀はしめやかに滞りなく執り行われた。絹代とゲイルは勝和の昔からの知人という形で紹介され、殆ど遺体の傍から離れることなく控えていた。しかし良にとって勝和という存在が単なる祖父ではなかったということがあまりにも大きすぎ、葬儀の間中ずっと放心状態のままだった。見かねた綾子が時々声を掛けるのだが、それに対する返事もままならぬ有様だった。 葬儀も無事終わりこれ以上休暇の延長は無理という日になって、綾子は新一夫婦に婚約解消とこれからすぐ帰京しなければならない旨を告げた。ゲイルも一旦帰ると言い出したため、どうせなら一緒に行こうという話になった。 新一はもとより京子の驚きといったらなかった。破綻した原因を作ったのは自分だと泣いて綾子に詫びた。しかし元々それが理由ではなかったので、京子の謝罪は暗くなっていた綾子の心を更に重くした。 「おじさん、おばさん。これで縁が切れたという訳じゃありませんから、何かあったらすぐ飛んできます。それにさっきから言ってるように、こうなったのはおばさんのせいじゃないですからそんなに謝らないで下さい。良ちゃんと私は元々縁がなかった。それだけですから。 ね? それじゃ、私、行きますから。良ちゃんをお願いします。」 「笹崎さん。絹代おばさんを宜しく頼みます。僕は仕事がありますから一度東京へ戻りますが、来週また来ます。その時まで小母をお願いします。 じゃ、綾子さん。行きましょう。」 ゲイルに肩を抱かれ、あらかじめ頼んでおいたタクシーに乗り込むと、一度も後ろを振り返らず綾子は去って行った。
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