「良!おじいちゃんが呼んでるわよ!」 さて事情を説明しよう。という段になって京子がイライラしながら居間に入って来た。 「あら!お客様? まぁこちらは?」 いくつになっても京子は女性である。まず目に飛び込んだのが超イケメンのゲイルだった。 「おばさん。こちらはロドリゲス夫人。こちらはゲイル・カーペンターさんです。」 良と絹代、綾子とゲイルの取り合わせの事情を知らない京子にとってこの光景はかなり異様に見えたようだ。 「母さん、じいちゃんが呼んでるんだろ?」 「え?ああ、そうよ!早く行ってやって。」 「わかった。」 手をつないだまま良は絹代を伴い、勝和の部屋へ向かった。 「じいちゃん。入るよ。」 絹代の手を取り勝和の枕元に近付くと、弱々しく目を開けた勝和は見知らぬ女性の存在を認めた。 「誰じゃ。」 しかし声にも力がない。 「お客さんだよ。アメリカからのね。 絹代・ロドリゲスさんというんだ。」 「キヌヨ・・・キヌ・・・そう。・・あのお人もキヌヨという名じゃった。・・・神社の絹代さんと同じ名じゃ・・・」 勝和がふと漏らしたひと言は、絹よに大きな衝撃を与えた。微動だにせずじっと勝和の顔を見つめていたが、突然 「まさか! そんな。・・そんなことが・・」 と呟くと片手でこめかみを押さえ、良の身体にもたれかかった。 「絹代ちゃん!どうしたの!何が起こったの!」 「・・・良・・さん。 まだわからないの?・・・あなたのお祖父さまは・・あの勝一君なのよ・・・」 震える声で絹代の口から出た名前に、良は「え?」と言ったきり、祖父と絹代の顔を呆然と見比べた。と同時に勝和の目が大きく開き、眼光鋭く絹代を見つめた。やがてほうっと大きなため息をつくと再び目を閉じた。その目尻から大粒の涙が頬を伝って流れ落ちるのを絹代は見逃さなかった。 あの勝一が自分の祖父?!そんな偶然がいくつもあってたまるものか!そう叫びたい気分だった。それに祖父の名前は勝和だ。そんな訳はない。絹代は頭がおかしくなったのか?そうとしか考えられない。きっとそうなのだ。絹代の方が変なのだ。混乱し何も考える余裕のない良に向かい、勝和が静かに語りかけた。
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