明後日からゴールデンウイークが始まった。それを利用し、良と綾子は実家のあるG県へ出かけた。新幹線でG駅まで行き、バスで約2時間。山間(やまあい)の小さな村が2人の故郷だ。 すでに連絡しておいたので、良の父、新一がバス停まで迎えに来ていた。 「ただいま。」 「おかえり。疲れただろう。お前達が帰ってくるっていうんで叔父さんや叔母さんたちが朝早くから集まってきてるんだ。もう半分宴会状態だよ。」 新一はうんざりしたようにため息をついた。 「ホントですか?わぁ、懐かしいわぁ。ねぇ?良ちゃん。小さい頃何かある度、親戚中集まって宴会みたいなことやってたわよね。・・ね?」 両親を早く亡くしている綾子にとって親戚といえるのは即ち、良の伯父、伯母であり、彼等の子ども達が従兄妹達だった。 口数の少ない良を気遣い綾子はことさら元気に振舞った。しかし両親にはまだ良が会社を辞めたことと、一種の心の病に冒されている事は知らせていなかった。 バス停から車で約6分。その間車窓から見える景色は2人が上京したときと全く変わっていなかった。田畑ばかりの風景だが、良の目には何故か真新しいものに映ったようだ。ふと小さく、『鼓島だ』と呟いた。もちろん新一も綾子も良の声は聞こえなかった。 家に着くと、何かあったのか異様に慌しい。どうしたのかと聞くと、おじいちゃんが急に倒れ、救急車で隣町の病院に運ばれたのだという。すぐ3人は追いかけるように再び車に乗り込み指定された病院へ向かった。
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