夕飯の買い物をして綾子が帰宅すると、部屋の隅でガタガタ震えながらしゃがみこんでいる良の姿があった。 「良ちゃん!」 買って来たものが床に散乱したが、そんなことはお構いなしで必死に良の身体を気遣う綾子。 「綾子!」 良も綾子の姿を見て安心したのかその細い体にしがみついた。 「もう大丈夫よ。大丈夫だから・・・」 しばらくの間、子供をあやすように良の背中を撫でていると、ようやく落ち着いたのか良の呼吸が平常に戻った。それを確認し、綾子は良の身体をゆっくりと横たえた。そして静かに立ち上がり、ことさら元気な声で言った。 「さてと。私は夕ご飯の支度をするからね!良ちゃんはテレビでも見てて。すぐ食べられるようにするからねっ!」 床に散らかった品物を片付け、流し台の前に立った綾子はもうダメだと思った。これ以上ここにいたら良の身体は本当にダメになる。そう思った。田舎に帰ろう!ついに綾子は決心した。 夕飯を食べながら綾子は何気なくその話を切り出した。 「ねぇ良ちゃん。一度、田舎に帰らない?おじさんやおばさん、おじいちゃんにも私達の事を報告したいし。ね?そうしましょう?」 発作で体力を使い、思考能力が低下していた良には綾子の言葉に異論を唱える気力さえないようだった。静かに首を縦に振ると、機械的に食べ物を口に運んだ。その姿に綾子は小さくため息をついた後、改めて気を取り直し、その日学校であったこと等を楽しそうに話して聞かせた。
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