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作品名:いつか きっと 作者:Shima

第44回   第44話
  その場所にはあれから何度も行っていたので、暗闇の中でさえ楽に行く事ができた。唯一の気がかりは、上村家で夜を徹しての山狩りをするのではないか、という事だった。たとえ上村家の人々に見つからなかったとしても21世紀に戻れるかどうかわからないのだ。しかし良はその瞬間に全てを賭けようと思った。草むらに身を潜め、じっと時が来るのを待つ。耳を澄ますと遠くで何やら騒いでいる声がした。おそらくは上村家の人達だろうが、幸いにもこちらに近づいてくる気配はなさそうだ。周囲には誰もいない。たった1人である。それを肌で感じた途端、どっと疲れが押し寄せ良はそのままの姿勢でウトウトし始めた。

  ゴゴゴゴ!地鳴りのような震動が直接良の身体を刺激し、彼はハッとして目が覚めた。いつの間にかぐっすり寝込んでいたらしい。時計を見ると午前五時を少し回っていた。
(あの音は何だろう。B29の音にしてはちょっと違う感じがする。・・・もしかしたら・・あれが?)
不幸にも彼の予感は的中した。次ははっきり身体で感じる音がして、南の海上が一気に盛り上がった。―――― 次の瞬間!真っ白な閃光と共にドーンという大音響が島全体を襲い、たちまち噴煙が巻き上がった。間もなくあたり一面何も見えなくなった。のちに放射能を大量に含んだ雨が降ってきた。その雨は5日間続き、その後止んだ。ようやく太陽が顔を出し、あたりに春の日差しと元の静寂が戻り、全ては元通りになったはず・・・だった。しかし何かが違った。・・・その何かとは、鼓島が島ごと跡形もなく消滅していたことだった。



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